カテゴリー「岩石と鉱物」の記事

2018年8月20日 (月)

『日本鉱物文化語彙攷』

 石をめぐる日本の文化の豊かさがわかる。「さざれ石のいはほとなりて」「木石,心なしとは申せども」などの考察。日本語の鉱物名の重層性を解き明かし,鉱物を巡る話題も豊富。

 本格的な研究書で,400ページを超えるなかなかの大著。縁あっていただいた本なのに,読める範囲でしか読んでいないのは,素人故と勘弁してもらうほかありません。
→http://www.izumipb.co.jp/izumi/modules/bmc/detail.php?book_id=129721&prev=new
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amazonの内容紹介
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 我々は鉱物を無機物とする現代社会に生きながら、各地に残る石の俗信に懐かしさを抱き、生長する石の永遠性を言祝ぐ古歌を国歌とし、盆石や石庭などを日本文化の精神性を表わすものとして世界に紹介さえしている。
 本書は、砂石や岩石、玉石と多様なかかわりを持ち、重層する鉱物観を持つに至った日本文化をたどった類のない書である。古歌から明恵上人、木内石亭、本草学由来の種名、西洋鉱物学、近代以降の学術名まで時代を問わず石をめぐり、日本文化の特質を考える。
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前篇 日本人の鉱物観
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 amazonの内容紹介にある「生長する石の永遠性を言祝ぐ古歌」とは,言わずと知れた君が代。小さな「さざれ石」が,長い年月をかけて大きな「いわお」に成長するという意味で,古代にはそういう感覚「石が成長するという」信仰があったという……知りませんでした,そういう意味かということも初めて知りました !!!(>_<)!!!
 ところによっては,そういう成長石がまつってあるところもあるという。鰯の頭的な宗教,信仰ですね。今の感覚では,石が成長するはずがなく,石は風化して分解し小さくなるのがあたりまえ。科学が明らかにした自然観と私たちが日常的に抱いている世界観が異なることは,確かにありますが,君が代の石成長説に至っては日常的な観念をもこえているように思いました。
 江戸時代には蘭学において西洋の鉱物観を受容することになる。宇田川榕菴の『舎密開宗』 (化学の解説書)など,はるか昔に覚えた記憶が蘇ってきた蘭学者がでてきたり,初めて聞くことも多くおもしろい。漢文(いちおうレ点などがついているが)や,ルビのない難しい漢字も多くて,そのあたりは適当にパスさせてもらいました(>_<)。すみませんm(_ _)m
……僕のATOKでは,日本史用語の単語登録を強化してありますので,「うだがわようあん→宇田川榕菴」は変換できましたが,『せみかいそう→舎密開宗』は,単語登録がなくて無理でした!!!(>_<)!!!。
似たような名前で,試しに「うだがわげんずい→宇田川玄随」,『はるまわげ→ハルマ和解』は,一発変換できましたが\(^o^)/
→https://www.vector.co.jp/soft/data/writing/se363518.html
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後篇 日本の鉱物名
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 本書では,歴史資料の中から鉱物名をとりだし,相当に手間のかかる作業を経て綿密に比較しています。そして,本書によれば,現代の日本の鉱物名は,
(1)古くからの和名,
(2)中国から伝わった本草学による漢名,
(3)江戸時代の蘭学による命名(『舎密開宗』などによる成分による命名),
(4)明治期に命名された漢語の学術名,
(5)西洋の学術名をカタカナで表した名称,
という幾重にもなる構造にあるとのことです。実際,僕自身,少しの鉱物コレクションをもっているだけですが,名称の多様性に困惑してきましたが,それも当たり前だと分かりました。
 僕が知っている和名の鉱物は,霰石(あられいし,アラゴナイト),蛍石(ほたるいし,フローライト),孔雀石(くじゃくいし,マラカイト),石榴石(ざくろいし,ガーネット),黒曜石(こくようせき,オブシディアン)あたりですが,他の多くの鉱物がカナカナ名になっている関係で,これらの和名よりカタカナの方が馴染みがある感じがします。
 ヒヤシンスという花は,「風信子」とも書き,「風信子石」といえば,放射年代測定に利用される鉱物のジルコンとのこと。ほかに翡翠,金剛石(ダイヤモンド),水晶と石英など,興味深い考察があります。
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その他
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 元素と漢字の組み合わせについては,本書では扱っていませんが,以下のようなものがあって,これによって鉱物名を表すこともあります。
・【礬】アルミニウム(Al)。
・【満】マンガン(Mn)。
・【曹】ナトリウム(Na)。
・【灰】カルシウム(Ca)。石灰。
・【苦】マグネシウム(Mg)。酸化マグネシウム=苦土。
・【珪】ケイ素(Si)。
・【燐】リン(P)。
・【硫】イオウ(S)。
・【鉄】鉄(Fe)。
・【加里】カリウム(K)。
 上記によると,石榴石は,次のように分類されます。はて,漢字で覚えた方が便利なのか(成分は自動的に判明しても漢字が煩雑),カタカナで覚えた方が良いのか(舌を噛みそう(^ ^;;)。
・苦礬柘榴石(pyrope,パイロープ)。苦バン石ともいう。Mg3Al2Si3O12。赤~桃色。
・鉄礬柘榴石(almandine,アルマンディン)Fe3Al2(SiO4)3。赤色,褐色。
・満礬柘榴石(spessartine,スペサルチン)Mn3Al2(SiO4)3。だいだい色,灰褐色,黄色。
・灰礬柘榴石(grossular,グロッシュラー)Ca3Al2(SiO4)3。だいだい色,灰褐色,黄色。
・灰鉄柘榴石(andradite,アンドラダイト)Ca3Fe3+2(SiO4)3。褐,緑,黒色など。
 鉱物名の重層性そのものです。
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2017年1月 4日 (水)

タンカルとシリカの覚え書き

炭酸カルシウム(CaCO3,タンカル)

 

 

 

 

(1)方解石(カルサイト)…鉱物(炭酸塩鉱物)。組成は炭酸カルシウム(CaCO3)。比重2.7。モース硬度3。石灰岩の主成分鉱物で,鉱石として扱われる場合は石灰石,石材として扱われる場合は大理石とよばれる。

 

 

 

 

(2)霰石(あられいし,アラゴナイト)…化学組成は方解石と同じだが,異なる結晶構造をもつ。

 

 

 

 

(3)石灰石…鉱石。岩石である石灰岩,結晶質石灰岩(大理石)を,資源として扱うときの鉱石名または商品名。

 

 

 

 

(4)石灰岩…堆積岩。炭酸カルシウム(CaCO3,方解石または霰石)を50%以上含む堆積岩。炭酸カルシウムの比率が高い場合は白色を呈するが,不純物により着色し,灰色や茶色,黒色の石灰岩もある。

 

 

 

 

(5)大理石(マーブル)…結晶質石灰岩。方解石の細かな結晶が,再結晶して大きくなる。純粋なものは透明か白だが,不純物を含み色のついているものもあり,美しいものは大理石として珍重される。とくに無色透明でな自形結晶のものは氷州石(アイスランドスパー)とよばれる。透明度の高い方解石はアイスランドで多く産出される。

 

 

 

 

 

二酸化ケイ素(SiO2,シリカ)

 

 

 

 

(1)チャート…堆積岩の一種。主成分は二酸化ケイ素(SiO2,石英)で,この成分をもつ放散虫,海綿動物などの動物の殻や骨片(微化石)が海底に堆積してできた岩石(成因が長く不明であったため,和名がついていない)。断面をルーペでみると放散虫の殻が点状にみえるものもある。ひじょうに硬い岩石で,層状をなすことが多い。石英はモース硬度7。チャートには赤色,緑色,淡緑灰色,淡青灰色,灰色,黒色など様々な色のものがある。

 

 

 

 

(2)石英(クオーツ)と水晶…二酸化ケイ素 (SiO2) が結晶してできた鉱物。六角柱状のきれいな自形結晶をなすことが多い。中でも特に無色透明なものを水晶という。石英を成分とする砂は珪砂(けいしゃ,けいさ)とよばれ,石英を主体とした珪化物からなる鉱石は珪石という。

 

 

 

 

(3)玉髄(カルセドニー)…ひじょうに細かい石英の結晶が緻密に固まっているもの。江戸時代には火打石としても用いられた。堆積岩や,玄武岩などの火成岩内部に形成された空洞をジオード(晶洞)というが,そこにシリカを多くふくんだ熱水が入って,形成される。

 

 

 

・紅玉髄(カーネリアン)…全体が鮮やかな赤色のもの。オレンジ~赤茶色のものは,サードという。

 

 

・緑玉髄(クリソプレーズ)…ニッケルをふくんで緑色のもの。

 

 

・碧玉(ジャスパー)…不純物をかなりの量含んでいて不透明なもの。赤,茶,緑などの濃い色。

 

 

・血石(ブラッドストーン,血碧玉)…碧玉のうち斑点状に赤色が混じっているもの。

 

 

・瑪瑙(アゲート)…石英や蛋白石(オパール)との縞状模様のもの。縞状の玉髄の一種で,蛋白石,石英,玉髄が,ジオード中に層状に沈殿してできた,鉱物の変種。

 

 

・縞瑪瑙(オニキス)…瑪瑙のうち平行の縞模様が入ったもの。赤茶系の縞模様が入ったものは,サードオニキス(紅縞瑪瑙)ともいう。

 

 

・サンダーエッグ(雷の卵)…瑪瑙や蛋白石,碧玉が満たされた,流紋岩などのノジュール(団塊)。アメリカのオレゴン州の先住民の伝説に由来している。アメリカのオレゴン州で産出したものが有名。

 

 

 

 

(4)蛋白石(オパール)…SiO2・nH2Oで,成分中に10%ぐらいまでの水分を含む。

 

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