カテゴリー「地震と原発」の記事
2021年7月12日 (月)
2021年7月10日 (土)
2020年度冬の電力高騰の原因は、関電の原発依存にある
【まとめ】
最も信頼性の低い電源が原発!
2021年5月26日 (水)
2020年度冬の卸電力価格暴騰について--パブコメの元
経済産業省 資源エネルギー庁
「2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る検証中間取りまとめ(案)」について
(「使い捨て時代を考える会」から、2021/05/24、一部省略してパブコメとして提出しました)
[1] 結論として--再エネ普及と脱原発のために必須の大手電力の分割
検証中間取りまとめ(案)では「旧一電の内外無差別な卸売の実効性を高め、社内・グループ内取引の透明性を確保するためのあらゆる課題について、総合的に検討。」(p.58など)とあるが、方向性が不明確。
・大手電力は、かつての総括原価方式で消費者の電気料金でつくった発電施設、送配電網を独占し、それだけでなく、再エネ普及を妨げ、危険で高コストの原発を温存する基盤となっている。
・大手電力は、発電部門では圧倒的な力をもち、送配電部門も支配して親会社の原発の電気を優先し、新電力の再エネの電気を流そうとせず、再エネ普及を妨げている。
・小売部門では、特別高圧や高圧の顧客に対して、強烈な低価格を提示して取戻営業を強めている。低圧顧客に対してはガスとのセット販売、おトク営業で攻勢に出るなど、大手電力の存在はまだまだ巨大。発電、送配電、小売の一体支配によって、発電設備をもたない小売だけの新電力に比べて、不当な独占利得を得ている。
・現在、最重要の政策は、再エネの普及をはかり、かつての総括原価方式で富と権力を集中してきた大手電力の原発推進路線を改めさせ、強大な電力市場支配力を減衰させることにある。そのためには、大手電力の発電、送配電、小売の完全分離(資本関係も解消する所有権分離)、そして、再エネ普及のために全国単一の送配電網が必要である。
[2] 検証中間取りまとめについての全般的意見
・大手電力を中心とする現行制度を是として、新電力とりわけ再エネを中心とした新電力への配慮が欠けている。巨大資本と零細ミニ企業との間では、公平な競争環境が存在していない。
・卸市場の価格高騰は、消費者価格の暴騰も招いたが、そうした消費者への保護の観点がない。
・再エネの普及と主力電源化、脱原発は、今後のエネルギー政策の基本に据えるべき最優先課題であるが、こうした方向をふまえた取りまとめになっていない。
[3] 容量市場について
・検証中間取りまとめ(案)では「容量市場により安定供給に必要な供給力を確保しつつ、カーボンニュートラルとの両立に向け、非効率石炭フェードアウトを着実に進めるとともに、新規投資の予見性を高める措置を検討」とあるが、納得できない。
・消費者からみて、問題が大きい。容量市場で確保される電源の固定費は、消費者はほぼ支払済みのはずで、容量拠出金を通じて二重払いになる。また、だれが保有するどの電源が入札し、落札したのかの詳細は公表されていない。電気に含まれる容量市場分のコストが表示されるかどうかも分からない。
・さらに、現行の容量市場は、環境汚染産業の原発、CO2をまきちらす火力発電を延命させて、硬直したベースロード電源を保護するだけ。老朽電源の過剰な延命をもたらし、大手電力を過度に優遇する。現行制度は直ちに廃止し、供給力確保は別の方策もあるので、再検討をすること。
[4] 2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰
・検証中間取りまとめ(案)では昨年度冬の卸電力取引所の価格高騰について、「相場を変動させることを目的とした売り惜しみ等の問題となる行為は確認されなかった」(p.57)として、大手電力の行動に問題がなかったとしているが、説得力がない。
・発電の80%を独占している大手電力には、発電と小売にかかる諸情報の公開が求められる。
・スポット市場の売り入札を急減させ、一方で自社需要のために買い入札を増やしたのは、なぜか。その理由が明確でない。
・関西電力、中国電力、北陸電力が、グロスビディング(卸電力取引所を介して電力を販売すること)を取り止めたのは、なぜか、その理由が明確でない。自社用の電力を確保するためとすれば、なぜ、そういった事態に陥ったのか、明確でない。
・グロスビディングを取り止めても、価格に影響はなかったとしているが、それなら、グロスビディングとはもともと、どんな効果がある制度なのか。見せかけの取引量を増やすだけになっている。
・卸電力取引所の機能を高めるには、大手電力が、発電量の50%とか一定割合の電力を常に市場にだすように義務づける。それを定期的に上方修正していくことが必要。
・インバランス料金(新電力が電気を計画通り確保できなかった場合に送配電会社に支払う義務のある違約金)が卸電力取引所の価格上昇に伴って果てしなく高騰する算定方法を採っていたことが原因として、各方面から指摘されている。また、規制当局による不足インバランスへの指導が厳しすぎたともいわれているが、そのあたりの言及がない。暴騰を押さえるために、一定の上限は設置されたが、それで十分とはいえない。
[5] 消費者のために
・新電力で「市場連動型プラン」を利用していた消費者は、突然、多額の料金負担を余儀なくされた。それらの電力会社の供給シェアは1.86%、契約件数は約80万件といわれるが、その各契約者の負担はきわめて大きい。制度の不備をすべて消費者に負担させるようなことは、適切でない。
・消費者にとって、どんな電源の電気を買うかは、重要なテーマ。電力の小売販売において、電源構成表示を義務化すべき。また、基本的な環境情報としてCO2排出量や放射性廃棄物の排出量についても明記させるべき。
[6] 新電力の状況
・多くの新電力は、卸電力取引所の突然の狂乱状態で仕入れ価格が暴騰、多額の負担を背負い、倒産するところまで出ている。
・その上、インバランス料金の支払い(必要な供給量を確保できなかった違約金。卸電力取引所で確保しようにも売り玉がなくて買えなかったりした結果)でも、多額の負債を負っているとみられる。大手電力の強大な支配力が生きている現状で、自由競争下の自己責任とするのは、適切でない。
・大手電力と相対契約をしている新電力各社は、「条件の悪化や取引停止になることが怖くて、大きな声で意見を言うことはできない状況にある。大手電力の電源がなければ事業が成立しない新電力にとって、社名を明かして制度の是正を求めることすらままならない」という(日経エネルギーNext 2021/04/26)。
[7] 大手電力の状況
・一方で、発電部門と小売部門が一体の大手電力は、価格高騰の影響は小さく、送配電部門からの情報もいち早く入手することができる立場にあった。しかも、送配電部門は、インバランス料金で大儲けした。
・送配電部門はFIT(再エネ普及のための固定価格買取制度)でも、大儲けしている。こうした不当な儲けは、消費者、新電力に還元されるべきではないか。
・大手電力や大手ガスの間のカルテルは、論外。徹底的に排除すべき。
[8] 再エネ普及と脱原発
・この10年間に世界の自然エネルギーは急成長を遂げ、2020年末までには風力発電や太陽光発電の設備容量はそれぞれ700GWを超えて、それぞれ原子力発電の設備容量(約400GW)の2倍近くに達した。その結果、風力と太陽光を合わせた設備容量は1,500GW(1.5TW、15億kW)近くに達している。一方、原子力発電の設備容量は、廃止が新設を上回り、すでに減少に転じている(環境エネルギー政策研究所)。
・わが国でも、再エネの普及と主力電源化、脱原発は、今後のエネルギー政策の基本に据えるべき最優先課題。ベースロード電源重視を改め、発電側だけでなく系統側、需要側も含む多様な柔軟性を拡大させることが急務となっている。
・とくに、再エネ発電事業者に系統の合理的な利用を保障すべき。ノンファーム型接続(実送電量に応じて空き容量を変動させる送電ルール)は、再エネ拡大のカギを握っているが、十分に普及しているとはいえない。
・原発の費用については、燃料コストだけでなく、営業コスト、廃棄物処理コスト、事故に備えた避難訓練コスト、過酷事故の際の避難コスト、国土喪失コストまで含めた電気料金として、明確にすべき。
以 上
2021年5月 1日 (土)
再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議(第7回、第8回の要点)
再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議
→ こちら。
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このタスクフォースの4名の構成員
(タスクフォースとは、緊急性の高い課題に関して一時的に構成される組織)
・大林ミカ…公益財団法人自然エネルギー財団事業局長。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、原子力資料情報室などを経て、駐日英国大使館で気候変動政策アドバイザーを務めたことも。
・川本 明…経済企画庁、資源エネルギー庁、内閣府、企業再生支援機構などをへて、2012年に経産省を退官。その後、慶應義塾大教授など。
・高橋 洋…公益財団法人自然エネルギー財団特任研究員。2018年より都留文科大学地域社会学科教授。経産省、内閣府、農林省などの委員を歴任。
・原 英史…2009年に経産省を退官、株式会社政策工房を設立、その代表取締役社長。大阪府や大阪市の特別顧問、規制改革推進会議の委員などを務める。
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第7回:2021(令和3)年3月29日
・出席者
(内閣府)河野大臣、藤井副大臣、山田参事官(司会・進行)
(構成員)大林ミカ、川本明、高橋洋、原英史
(ヒアリング対象者)
議題1:風力発電に関する環境影響評価について…略
議題2:電力(容量市場、系統、価格高騰問題、需要家の選択肢の拡大)について…資源エネルギー庁電力・ガス事業部、電力・ガス取引監視等委員会
・会議資料
→こちら。
・「容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見」(構成員提出資料)
→こちら。
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第8回:2021(令和3)年4月27日
・会議資料
→こちら。
・「電力システム改革に対する提言」(構成員提出資料)
→こちら。
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◆第7回、議題2の「電力(容量市場、系統、価格高騰問題、需要家の選択肢の拡大)について」で、おもな資料、注目すべき論点などの要点を、以下の[1]~[3]に抜き書きしています。
◆第8回の重要な資料の要点を、以下の[4]に抜き書きしています。
[1] 容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見(構成員 提出資料)
[2] 電力・ガス取引監視等委員会からの説明資料
[3] 在日米国商工会議所意見書
[4] 電力システム改革に対する提言(構成員 提出資料)
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[1] 容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見
(第7回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
…タスクフォース構成員(大林ミカ、川本明、高橋洋、原英史)
総論:公正な競争環境の未整備が共通の背景要因
・日本の電力市場は、公正な競争環境が十分に整備されていない。発電市場でも小売市場でも、大手電力会社が8割以上の市場シェアを握り、これらは一体経営の場合が多く、かつ独占が続く送電事業は十分に中立化されていない。それが、特に再生可能エネルギー関連が多い新規参入者の事業活動を大きく制約し、消費者にも不利益をもたらしている。
・新規参入者に圧倒的に不利な競争環境の改善が急務と考えるが、規制当局は競争環境を妥当と考えているようであり、支配的事業者や既存電源への配慮が感じられる。
・発送電分離が十分に徹底されず、先着優先などのルールが残っているため、再エネ発電事業者は送電網を適切に利用できない。発電市場が寡占的で、グロスビディングは表面的な効果しかなく、先物市場も未成熟な中で、新電力にとって予測困難なスポット価格の高騰が続いた。このような状況下で、必要性に疑義のある容量市場を導入すれば、大手電力会社の柔軟性に乏しい集中型電源への補助となり、カーボンニュートラルの実現を妨げるだろう。
・規制当局は、現時点で不当な行為は見つかっていないとしているが、不当な行為がないのに異常事態が生じたとすれば、市場制度の不備が最大の要因ということになる。
各論1:容量市場の問題
・容量市場の必要性からゼロベースで再検討を。柔軟性の低いベースロード電源への補助や火力発電の延命への寄与になってはならない。
各論2:系統制約の問題
・再エネ発電事業者に系統の合理的な利用を保障すべき。ノンファーム型接続(電源を新たに系統へ接続する際に空き容量が足りない状況であっても出力制御などを条件に接続を認める制度。実送電量に応じて空き容量を変動させるので、再エネ拡大のカギを握る送電ルール)が1/13に全国展開されたが、接続検討の受け付けの97%が東京電力パワーグリッド管内に偏っている。
各論3:スポット価格高騰の問題
・規制当局や大手電力は、全国的な需給に関わる外部要因を挙げる状況が続いている。
・発電事業における非対称規制の必要性)
・現状の大手電力会社は支配的事業者であり、総論の通り、競争促進策は不十分であることに鑑みれば、LNG調達のあり方やその情報公開に対して、非対称規制を課すべきである。
・大手電力会社の買い越し)
・大手電力会社はスポット市場の売り入札を急減させ、一方で自社需要のために買い入札を増やした結果、12月末から1カ月近くの間、基本的に買い越し(売り入札総量<買い約定総量)の状態に陥った。新電力は常時買い越しが基本であるため、スポット市場では売り切れに至り、価格高騰が続いたのである。
・グロスビディングの効果への疑問)
・大手電力会社に課された数少ない競争促進策と位置付けられてきたグロスビディングの効果への疑問が、明らかになった。自主的取り組みであったため、関西電力、中国電力、北陸電力は、自社の売り玉を確保するため、グロスビディングを取り止めた。また、大量の高値(999円/kWh)買い入札から分かる通り、グロスビディングは、需給曲線を右側にシフトさせるだけで、実質的な意味で市場の流動性を増やしてきたのか、疑問と言わざるを得ない。市場取引の規模を実質よりも大きく見せる効果しかないとすれば、むしろ市場を混乱させる危険性もあり得る。
・本来自主的であったとしても、グロスビディングは、発電事業者と小売事業者がそれぞれ独立した立場から合理的な入札行動を取る場合に、需給を反映した価格形成や実質的な流動性の拡大などの効果があると考えられる。取り止めても約定価格への影響がないようなグロスビディングだとすれば、発電・小売間の情報遮断を前提とした透明性の高いルール整備した上で、一定量の義務的な玉出しに変更すべきである。
・インバランス料金の問題)
・スポット価格高騰の要因として、規制当局による不足インバランスへの指導が厳しく、かつインバランス料金がスポット価格の上昇とともに果てしなく高騰する算定方法を採っていたことも、指摘できる。
・インバランス料金の制度改定は、2022年4月を目処に進められているが、前倒しを検討すべきである。
・また、インバランス料金も高騰したことによって、送配電事業者は大きな差益を得た可能性が高い。実際のインバランス収支を早急に公表の上、後述の通りその新電力への還元を行うべきである。
・送配電事業者と小売事業者の情報管理の問題)
・大手電力会社の売り入札不足の背景には、送配電事業者の需給調整の影響がある。送配電事業者は、調整力が不足したため、調整力を持つ発電事業者(多くが同じエリアの大手電力会社)に対し、調整電源の発動を求めたり、市場に供出せず燃料を温存していた部分を調整力として予約したりした結果、燃料不足を加速させた面もあった。
・大手電力会社は送配電事業者からの情報でひっ迫状況を知る一方、他の発電・小売事業者には情報がなく、市場に影響を与える情報の格差が生まれることになる。また、送配電事業者とグループの発電・小売会社との間で行われる「協調」も、情報格差の源となる。
・義務的・構造的措置を含めた制度改革の必要性)
・より強力な競争促進策によって公正な競争環境を整備する制度改革が必要。
・まずは、先物・先渡し市場やデマンドレスポンス(電力の供給側である電力会社が需要家側に電力の節約をしてもらうよう促すこと、ネガワット)の拡充、市場情報の適切な公開などの対策を、徹底的に講じるべきである。同時にその大前提として、旧卸電気事業者等の電源の義務的な切り出し、大手電力会社の一定量の義務的な市場玉出し、発販分離、送配電事業の所有権分離といった義務的・構造的な措置は不可欠であり、速やかに検討すべきである。
・新電力等の緊急支援)
・価格高騰の最大の要因が市場制度の不備であれば、新電力の損失の大半を自由競争下の自己責任とするのは、公正でない。インバランス料金など不適切な差益を還元することが求められる
[2] 電力・ガス取引監視等委員会からの説明資料
(第7回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
「今冬のスポット価格高騰に関する電力・ガス取引監視等委員会における分析について」
(電力・ガス取引監視等委員会事務局提出資料)
(1)スポット市場価格の高騰について
(これまでと同じ公式見解のくり返し)
(2)発販分離に係る指摘と内外無差別な卸売に向けた取組について
・発販一体会社を含む旧一電の卸売に関して本質的に問題となり得る点は、旧一電の発電部門が自社・グループの小売部門に対して、不当に優遇された条件で電源を供給する(換言すれば、不当な内部補助を行う)ことにより、小売市場の競争が歪曲されることである。
・上記の観点からは、旧一電の発電部門がグループ内の小売りとグループ外の新電力とを取引条件において差別しないことを確保することが重要。
・このため、昨年7月、旧一電各社に対して、社内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に卸売を行うことのコミットメントを要請。これに対し、各社より、コミットメントを行う旨の回答を受領しているところ。特に、発販一体の各社からは、2021年度からの運用開始に向け、社内取引価格の設定や業務プロセスの整備を進めると回答を受けている。
・上記のコミットメントを踏まえ、今後、旧一電各社の内外無差別な卸売に関する実施状況を確認し、公表していく。
・これに加えて、今般の価格高騰に際し、グロス・ビディングについて、その透明性が確保されていないとのご意見があった。このことも踏まえて、旧一電の内外無差別な卸売をより実効的にするため、今後のスポット市場への売り入札については、原則として発電部門が行うこととすることについても検討を開始。
・発電・小売が一体の旧一電(8社)は、具体的な方策について、2021年度目途の運用開始に向けて、社内取引価格の設定や業務プロセスの整備に着手する、と回答した。また、「卸取引は小売部門から独立した組織で実施する」と回答した会社もあった。
・発電・小売が分社化されている旧一電グループ(東京、中部の2グループ)は、要請についてはコミットメントを表明した上で「コミットメントを確実に実施するための具体的方策はすでに存在する」、「事業会社間の電力取引は電力受給契約に基づいており、発電・小売間の取引価格が存在する」と回答した。
↑関電などでは発電・小売間の取引価格がないのか!
・旧一電の内外無差別な卸売の確保をより実効的にするためには、今後のスポット市場への売り札については、原則として発電部門が行うこととして、透明化に向けた体制整備を図るべきではないか。こうした体制整備は、旧一電における発電利潤の最大化の確保や、相対卸や先物・先渡市場等の活用も含めた合理的なリスク管理にも資すると考えられるのではないか※。
※過去の審議会(第46回制度設計専門会合)においても、発電利潤を最大化する観点から、社外への卸供給や、スポット市場等への入札(グロス・ビディング含む)について、発電部門が自社小売部門から独立した意思決定の上で実施することが望ましいとの考え方が示されている。
(3)電源表示関係で委員からの指摘
・電力の小売販売において、現状は電源構成表示は望ましい行為とされているが、表示を義務化すべき。
・表示にあたっては、基本的な環境情報としてCO2排出量や放射性廃棄物の量についても明記させるべき。
[3] 在日米国商工会議所意見書
日本の卸電力市場規制に関する提言
(第7回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
(1)圧倒的な市場支配力を持つ事業者の監視を強化する
・市場支配的な大手電力会社の発販分離を加速させる。
・大手電力会社の発電部門を含むすべての市場参加者に対して、相対取引の価格設定について透明性のある適時の情報開示を行うことを義務付ける。
・大手電力会社の発電部門がスポット市場を介して電力を販売することを義務付ける割合を20%から40%以上に引き上げ、定期的に上方修正する。
・公正で一貫性・透明性のある電力供給を確保するために、大手電力会社の発電部門が市場に売り入札を行う際のトリガー、タイミング、その他の条件を明確に義務化する。
(2)新電力の公正な扱いと存続性を確保するための具体的な行動を検討する
・今回の市場価格の高騰期間において大手電力会社が取った行動を調査し、その行動が競争を規制する法令を遵守したものであり、かつ効率的な市場を確保する上で齟齬がなかったかを慎重に見極める。電力市場の競争規制におけるグローバル・ベストプラクティスとの合致を図るためには、特に売り惜しみや価格吊り上げにつながる行動について分析し、反競争的な意図や影響あるいは商品市場の価格操作がなかったかを精査する必要があるだろう。そのような形跡が見つかった場合には、法令に基づく制裁措置を科すことに加え、他の市場参加者に、取引上の不正な偶発的利得を回収・再分配するために民事上の損害賠償を請求する権利を認めるべきである。
・今回の異常事態において一般送配電事業者が買取価格を上回る売電価格でFIT電気を販売したことによって生じた想定外の利得について調査する。FIT制度によって毎月の電気料金の一部として再生可能エネルギー発電促進賦課金を負担している消費者に、そのような利得を還元することを検討する。FIT電気の販売が一般送配電事業者の利益源になるべきではない。
・ヘッジ期間全体を通した卸売市場への新電力の参加を増やす。また、今回の価格高騰で不透明な発電状況や規制・監督によって影響を受けた小売事業者に補償するための是正措置を検討する。これによって発電事業者がJEPXにおいて合理的なコストベースで入札することを図る。
[4]「電力システム改革に対する提言」
(第8回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議)
…タスクフォース構成員(大林ミカ、川本明、高橋洋、原英史)
Ⅰ.再生可能エネルギー主力電源化を実現するための3原則の確立を
1:再エネ最優先の原則
・再エネは、経済性、環境負荷、エネルギー自給などの観点から総合的に最も価値が高い。エネルギー自給率や原発の過酷事故の経験という日本の状況を踏まえれば、まずは最も実現性の高い再エネの導入を、他のエネルギーに先んじて集中的に進めるべき。再エネと省エネがエネルギー転換の2本柱
2:柔軟性を重視したエネルギーシステム改革の原則
・変動性再エネへの対応が不可欠であり、このために近年重要性を増しているのが、電力システムの柔軟性。火力発電の出力調整運転、揚水発電、送電網の広域運用、デマンドレスポンス、電気自動車を含む充電池など、発電側だけでなく系統側、需要側も含む多様な柔軟性を拡大させることが急務。ベースロード重視では柔軟性に逆行する。
3:公正な競争環境を前提とする原則
・新規参入者や新規電源は、競争上極めて不利な立場に置かれており、再エネ主力電源化の最大の障壁となっている。系統制約はその典型例であり、また今般の延岡市の新電力への営業妨害や電力販売のカルテルの疑いも、同根。新規参入者が既存事業者と切磋琢磨できる公正な競争環境が必要。
Ⅱ.公正な競争環境の整備を徹底すべき
1)市場玉出し、グロスビディング
・大手電力の発電電力量の3割程度の義務的なスポット市場への玉出しを行う。その際、大手電力の発電部門・小売部門間(グループ会社を含む)における、市場取引に関する情報遮断措置を講じる。
2)内外無差別のコミットメントと発販分離
・大手電力の内外無差別原則のコミットメントの具体化(社内部門間の情報遮断・取引条件の明示・会計分離等)を、速やかに行う。合わせて、組織や資本関係を含めた発販の法的分離のあり方を検討
3)系統制約の解消
・送配電網の開放。ノンファーム型の系統接続を、基幹系統だけでなくローカル系統、更に配電系統へ拡大。
4)構造的措置
・送配電事業の所有権分離(発電部門や小売部門の会社との資本関係も解消)の必要性や発動条件を検討。送配電事業者の統合の方策も検討
・OCCTOの専門性・中立性。送配電事業者のみの集合体に改組
・電取委のマンパワー・専門性・中立性や権限の強化
Ⅲ.容量市場問題
・公正な競争環境が整備されていない日本において、これを導入すれば、老朽電源の過剰な延命をもたらし、競争を阻害する上、再エネ時代の安定供給にも寄与せず、国民負担のみが高まる結果となる可能性が高い。このため、現在の容量市場は凍結する。
Ⅳ.スポット価格高騰問題
・規制当局は責任を痛感すべき。
・健全な市場競争が確保されていない中での価格高騰による、新電力等の巨額の負担に対して、遡及的措置を含む還元策を講じるべき。
・特にインバランス料金については、2020年12月から本年1月にかけて、送配電事業者に1,400億円前後もの収益が生じたが、新電力等に対する還元の原資にすべきである。
Ⅴ.非化石証書にかかる問題
(・再エネ価値取引市場、非化石価値取引市場など。略。)
2021年4月28日 (水)
大手電力の大儲けと 新電力の苦境~~ 電力価格の高騰と関西電力、原発ゼロ法についてのメモ
[1] この冬の電力価格の暴騰
(1)2020年12月末~2021年1月末に、卸電力取引所(JEPX)のスポット市場(一日前市場)の電力価格が暴騰しました。
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・通常価格… 8~10円/kWh
・高くなる時間帯でも…50円/kWh程
・これまでの最高価格…75円/kWh程
・2021/1/6…100円/kWhを記録
・2021/1/15のピーク…251円/kWh!
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1/15のピーク時には、通常の25~30倍の251円/kWhという過去最高値を記録、暴騰は1か月継続し、1/25にようやく沈静化しました。市場での売れ残りゼロが12/26から3週間続きました。いわゆる“新電力”とよばれる小売会社は、この卸電力取引所から多くの電力を調達しているため、大きな影響を受けたのです。
(2)なお、小売電気事業者は全国で、計713社(2021/3/22現在)。大手電力(元地域独占体制の10電力会社)[=旧一般電気事業者(旧一電・いちでん)]は、全発電設備の80%を独占しています。新電力703社は、販売電力量に占めるシェアが約20%になりましたが、自前の発電設備をもたない会社も多くあります。
[2] 新電力は大赤字、大手電力は大儲け
(1)新電力の「みんな電力」によると、1年の市場取引額を超える1.5兆円が、3週間で大手電力とその配下の送配電事業者に流れました。
(2)新電力では、家庭向けに30円/kWhで供給している場合、仕入価格が最大で販売価格の8倍に暴騰。多くの新電力が多額の赤字を抱え、経営困難に陥っています。
(3)3/24、新電力のエフパワー(東京都港区)が負債464億円で倒産しました。この倒産は、2020/12後半から寒波などによる電力需要の増加と、火力発電燃料LNG(液化天然ガス)の不足などが原因の「電力市場価格高騰」の影響が契機と報道されています。しかし、はたしてそうでしょうか。
[3] 消費者への影響
(1)新電力で「市場連動型プラン」の利用者には、電気料金に影響がでてきています。「市場連動型プラン」は、卸電力取引所(JEPX)の市場価格に連動して電気料金単価が決まるプランです。2020年度はJEPX価格は史上最安値の安さだったので、激安の恩恵がありました。しかしJEPXの市場価格が高騰すると、利用者の電気料金にもそのまま反映するので、この冬の市場価格では、通常通りの電気利用量でも1月分の電気料金が数倍に跳ねあがりました。
(2)電気料金が高騰したおもな新電力は、以下の通りです。これらの電力会社の供給シェアは1.86%、契約件数は約80万件。その契約者の負担は大きい。
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「市場連動型プラン」…自然電力、エルピオ(市場連動プランのみ)、ダイレクトパワー、テラエナジー、ハチドリ電力、ジニーエナジーなど。
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[4] 政府の対応とインバランス料金
(1)政府が卸電力取引所(JEPX)対策に乗り出したのは1月中旬。遅すぎ。
(2)まず、1/17、違約金(新電力が電気を計画通り確保できなかった場合=JEPXで落札できなかった場合に送配電会社に支払う義務のある「インバランス料金」)に200円/kWhの上限を設定。この上限が設定されるまでは、買値が250円/kWhでも、違約金(1月は最終的に500円/kWh)より安かったので、それを回避したい焦りからさらに卸価格の高騰へという悪循環。しかし、価格は高止まりのまま。
(3)次に、JEPXの入札状況を公開した結果、市場に見通しができ、1月末に狂乱状態から落ち着きを取り戻したようです。
(4)なお、関西電力送配電(株)はインバランス料金収入で192.5億円の収入。一方、多くの新電力は、仕入れ価格の暴騰とインバランス料金支払いとの二重苦。
[5] FITでも大儲けの大手電力
(1)2017年の改革により、FIT電気の買取義務者は大手電力配下の送配電事業者となり(関西電力送配電株式会社など)、あわせて小売電気事業者がFIT電気を調達する際の価格が卸電力取引所(JEPX)市場価格に連動することとなりました。
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FIT(フィット)…再エネ普及の
ための固定価格買取制度
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(2)大手電力配下の送配電事業者は、再エネ電力をFIT固定価格(太陽光は12~42円/kWh、風力は18~55円/kWhなど)で購入しています。そして、高騰した市場価格で小売業者に販売し、その差額によって莫大な収益をあげました。
(3)再生エネ事業者から40円で買った電力を、小売事業者に150円で売れば、110円の儲け。市場価格は10円前後の場合が多く、通常は固定価格のほうが高いので、大手電力に負担が生じないよう、国民に上乗せする電気料金=FIT賦課金を設定して、差額を補っています。つまり、大手電力は決して損をせず、儲けが出た場合は無制限の儲け放題となる制度となっています。
(4)FIT電気の仕入れ価格の高騰は、FIT電気を重視してその割合を高くしてきた再エネ新電力に、大きな打撃となり、再エネ普及を妨げる事態になりかねません。
(5)FIT賦課金が増えて国民負担が大きすぎると言って、FITを攻撃する人もいます。しかし、それは間違いです。
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FIT賦課金は
再エネ普及のため未来への投資
原発の使用済み核燃料は
未来への負担押しつけ!
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[6] 電力高騰の原因
(1)資源エネルギー庁は、火力発電燃料のLNG(液化天然ガス)の輸入が滞ったこと、真冬で需要が増えたこと、を指摘しています。しかし、この点を真っ向から否定する意見もあります(田中一郎「いちろうちゃんのブログ」)。
(2)山家公雄(やまか・きみお)京都大特任教授(エネルギー戦略研究所所長)は、大きな発電設備をもっている関電が、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかったことを示唆しています(毎日新聞2021/2/23)。
① 12/15、高浜原発3号機(12月下旬に再稼働予定)の再稼働延期(細管損傷)を発表→電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)に融通を依頼。
② 12/15、OCCTOが、大手電力各社に対し、関電への電力融通を指示。
③ 12/25、Jパワー(電源開発)の火力発電所70万kWがトラブル停止→OCCTOが関電向け融通指示。
④ 1/16まで、OCCTOが関電向け融通指示94回(関電は、大飯原発4号機を、1/15再稼働、1/17発電開始)。
⑤ 電力・ガス取引監視等委員会によると、12/29以降、大手電力は市場に出すよりも市場から買う量が上回った。つまり、本来電気の売り手である関電が供給余力を失い、買い手に回った。小さな池にクジラが入ってきたら、小魚=新電力はひとたまりもない。
[7] 関電はどうだったのか
(1)関電は社長の下に8本部、4子会社を有するが、そのうち、原子力事業本部(の中の原子力発電部門)と、2019年に新設のエネルギー需給本部(の中の燃料部門)との間で、齟齬(そご)があったのではないか。
(2)この冬の電力価格高騰の状況でも、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかった関電の劣化した姿をみることができます。その上、
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関電は市場価格暴騰の一因をつくった…12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回し、卸電力取引所(JEPX)への供給をゼロにし、スポット市場で大手電力に課された事実上のルールを無視!
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(3)関電グループの再エネは、合計377.4万kWで、100万kWクラスの原発4基分のみです。その内訳をみると、これまでからの水力が90%をしめていて(341.1万kW)、新しい再エネの割合は、10%未満(36.3万kW、9.6%)にとどまります。
(4)電力生産は、リスク分散、遠距離送電ロス、目の届く民主的管理、省エネ推進、エネルギー消費の低減化などの観点が重要です。関電のような巨大な企業が巨大な施設で大規模生産をして遠距離に送電するのは適切ではない。地域分散、地産地消、自産自消がふさわしい。再生可能な自然エネルギーのいっそうの拡大による地域分散型エネルギーシステムが各地で普及すること、小規模な分散エネルギーを統合して系統化するシステムこそ、高度のノウハウが必要です。これからの社会とエネルギー企業の理念を、関電は持ちあわせているでしょうか。
[8] 関電不買
(1)原発依存、倫理欠如の経営 No! 原発の電気は買いません。関電の顧客離れを加速させれば、関電に打撃を与え、経営政策を揺さぶることができます。
(2)2016/4以来の小売電力自由化の中で、関電の顧客離れがすすんでいます。原発再稼働、原発マネー不正還流などのたびに、減少が加速してきました。電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)のデータでは、
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関電地域の契約変更(スイッチング)件数(小口)…2021年2月末で400万件をこえました。
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この400万件には、「関電→新電力」のほかに、「新電力→新電力」「新電力→関電」の契約変更が含まれていますが、顧客の流動化がいちじるしく進んでいることが分かります。このスイッチング件数は、関電純減の数字を先取りしています。
(3)電力・ガス取引監視等委員会(電取委)のデータ(低圧)では、
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関電純減…「関電→新電力」から「新電力→関電(関電の取戻営業、おトク営業の“成果”)」を差し引いた数が関電純減。これが、2021年1月末で294万件に達します。
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電取委のデータは、発表がやや遅くなりますが、OCCTOのデータを後追いしています。
(4)関電の全契約数は、概略で低圧が1400万件。そこから契約件数としてあまり意味のない公衆街路灯200万件(推定)を除けば、低圧の契約数は、1100~1200万件となり、このあたりが、関電の顧客が何%逃げたのか、の計算の分母(=全契約数)になると考えられます。
(5)低圧電力料金自由化(2016/4)以来の関電からの顧客離れは、急激です。
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関電からの顧客離れ
→オクトのデータ、契約変更率なら
…400÷1100=36%。
→電取委のデータ、関電純減率なら
…300÷1100=27%。
いずれにしても、関電がおよそ30%の顧客を減らしていることは確実。収益の柱が細っているのです。
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(6)関電からの小口顧客離れは、着実に進行しています。しかし、2020年4月から予定されていた電気料金の全面自由化が見送られた(新電力のシェアが小さかった)ことからも分かるように、関電など大手電力の支配力はなお強大です。
(7)また、関電の顧客が30%減っても、関電の収入が30%減るということにはなりません。電気料金の30%前後は、託送料金として、関電の100%子会社、関西電力送配電(株)の収入となります。
[9] 関電解体
(1)発電、送配電、小売の独占 No! 巨大独占を分割せよ。
(2)関電など大手電力の原発推進路線を改めさせ、電力市場支配力を減衰させるには、発電、送配電、小売の分離、とりわけ再エネ普及のために送配電網の完全分離(→全国単一の送配電網)が必要です。
(3)関電など大手電力は、発電部門では圧倒的な力をもち、送配電部門も支配して親会社の原発の電気を優先し、新電力の再エネの電気を流そうとせず、再エネ普及を妨げています。小売部門では、特別高圧や高圧の顧客に対して、強烈な低価格を提示して取戻営業を強めています。低圧顧客に対してはガスとのセット販売、おトク営業で攻勢に出るなど、関電の存在はまだまだ巨大です。発電、送配電、小売の一体支配によって、発電設備をもたない小売だけの新電力に比べて、不当な独占利得を得ています。
(4)関電など大手電力は、かつての総括原価方式で、富と権力を集中してきました。
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総括原価方式…経費の3%とかを自動的に利益にできる。経費を節約して利益を出すのではなくて、経費を増やして利益を増やす。5000億円の原発を何基つくっても、経営リスクがない。そして経費を節減するどころか、経費を水増して大量の購入物品を調達してきた。
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こうして大手電力は、どの地域でも、その地域の財界のお殿様になって大きな顔をしています。関電の場合、水増し発注は、受注者(元高浜町助役など)の懐を経て、関電経営者とりわけ原発部門幹部の懐をうるおしてきました。
(5)電気料金は、税金みたいに強制的に支払わされます。大手電力は、消費者の電気料金でつくった発電施設、送配電網を独占し、それだけでなく再エネ普及を妨げ、原発温存の基盤となっています。
(6)どんな経営をしても自動的に利益を確保できる中で育ってきた電力会社の経営者には、経営能力はない。どこに行ってもお殿様だから、チヤホヤされる。経費は使い放題、巨額の賄賂をもらっても、預かっただけだと平気で言える厚顔さ。
[10] 原発ゼロ法制定
(1)すべての脱原発派勢力は、総結集して原子力ムラの息の根を止めよう。
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原子力ムラ…自民党の核武装指向派、利権漁りの政治家。経産省。大手電力。原発メーカー。連合中央、電力総連、基幹労連、電機連合など原子力産業推進労組。御用学者、御用マスごみ、御用ジャーナリスト。
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(2)民主党政権下では、原子力ムラの総力を挙げた反撃があって原発ゼロ法は棚上げにされました。福島事故をうけて作成されるはずの新規性基準もできないまま、民主党政権の下、電力不足の虚偽宣伝により大飯原発が再稼働されました。
(3)前の失敗を繰り返すわけにはいきません。現状の与党(自民党、公明党)と、対する「野党共闘」という枠組みだけを考えていては、同じ失敗をみることになります。総選挙や政権選択のための枠組みの発想だけで良いのでしょうか。
(4)与党の中で健在な脱原発派とともに、野党の中の原発推進派(原子力ムラ勢力)を排除した「脱原発共闘」という枠組みが必要ではないか。そのために、選挙では、与野党を問わず、すべての候補者に対して、脱原発に賛成し公約に掲げるよう呼びかけ、これに応じた候補者には、認定のNN(No Nukes)マークを付与し、有権者の選択の目安にしてもらうといった運動を検討してはどうかと思います。
大手電力と新電力についてのメモ
なお、関西電力は、12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回し、卸電力取引所(JEPX)への供給をゼロにした。スポット市場で大手電力に課された事実上のルールであるグロス・ビディングを無視したといわざるを得ない!
2021年4月 1日 (木)
電力価格の高騰と関電、原発ゼロ法についてのメモ
[1]【この冬の電力価格の高騰】
(1) 2020年12月末~2021年1月末に、卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)のスポット市場(一日前市場)の電力価格が高騰した。
(JEPXの電力取引価格は、JEPX プライスチェッカーで確認できる→https://enechange.jp/jepx_checker/)
(2) 通常は8~10円/kWhほどで、昨年度までの価格は最大で75円/kWh程度であった。
(3) しかし、2020年12月末から1月末にかけて、暴騰した。1/6に100円/kWh→ピーク時1/15は通常の25~30倍の251円/kWhまで急騰 → 高騰は1か月継続し1/25に沈静化。12/26~売れ残りゼロが3週間つづいた。狂乱状態のJEPXに対応して、1/7電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)が初めて「最大出力発電」を指示。
(4) OCCTOや送配電事業者から、つねに電力供給の同時同量を果たすよう“指導”を受けている新電力は、少しでも不足を出さないように、高値で札を入れざるを得ず、市場価格はひたすらに高騰した。
(5) 全国の小売電気事業者は、2021/3/22現在で、計713社。
・大手電力(10電力会社)[=旧一般電気事業者(旧一電)]は、全発電設備の80%をしめる。
・新電力(PPS)は、販売電力量に占めるシェアが約20%。自前の発電設備を持たない会社も多い。
[2]【新電力は大赤字、大手電力は大儲け】(「日経エネルギーNext」などより)
(1) 新電力の「みんな電力」によると、1年の市場取引額を超える1.5兆円が、3週間で大手発電事業者・送配電事業者に流れた。
(2) 新電力では、家庭向けに30円/kWhで供給している場合、仕入価格が最大で販売価格の8倍に暴騰。多くの新電力は数千万円の赤字を抱え、経営困難へ。
(3) 3/24、新電力のエフパワーが倒産。新電力では過去最大の倒産、会社更生法の適用を申請。負債464億円。(株)F-Power(資本金5000万円、港区芝浦3-1-21、代表沖隆氏ほか1名、従業員140名)。「ピタでん」というブランド名で沖縄および離島を除く全国に電気を販売。幹部陣も含めて金融出身者を多数抱え、大手電力のように発電所を持たなくても、電力市場を駆使することで新電力は成長できるはずという考えの下、事業を拡大。2018/4には電力販売量で新電力1位、2020/11には17位。今冬の市場高騰により電力調達コスト負担が増加するなど資金繰りが悪化。
(4) この倒産は、2020/12後半から寒波などによる電力需要の増加と、火力発電燃料LNG(液化天然ガス)の不足などが原因の「電力市場価格高騰」の影響が契機とされる。しかし、はたしてそうか。
(5) 大手新電力は電気事業の見直しを開始。楽天モバイルは2021/1/26、電力・ガス小売りサービスの「楽天でんき」の新規契約を当面停止すると発表。新電力ランキングの上位にはNTTグループのエネット(東京都港区)や東京ガス、ENEOS、大阪ガス、KDDI(auでんき)など大手企業が名を連ねる。その一角を占める楽天が新規受付を休止した影響は大きい。電気事業への豊富な経験とノウハウがある大手新電力ですら悲鳴を上げており、2016年4月の電力自由化を契機に新規参入した新電力のダメージはさらに深刻。
[3]【消費者への影響】
(1) 新電力で「市場連動型プラン」の利用者には、電気料金に影響がでてきている。「市場連動型プラン」は、JEPXの市場価格に連動して電気料金単価が決まるプラン。2020年度はJEPX価格は史上最安値の安さだったので、激安の恩恵をうけた。しかしJEPXの市場価格が高騰すると、利用者の電気料金にもそのまま反映する。この冬の市場価格では通常通りに電気を利用していても、1月分の電気料金が数倍にあがった。
(2) 市場連動プランを導入している新電力のWebサイトを確認すると、過去の市場価格の高騰事例などを参考にしながら明確にJEPXが高騰する恐れがあることを消費者に伝えている新電力は、自然電力(福岡市)など数える程しか存在しない、という。(日経ビジネス、2021/1/19)
(3) 従量料金が市場と連動する「市場連動型プラン」を提供している電力会社…自然電力、エルピオ(市場連動プランのみ)、ダイレクトパワー、テラエナジー、ハチドリ電力、ジニーエナジーなど。
(4) 電源調達費など電気料金の一部が市場と連動するプランを提供する電力会社…ハルエネでんき、エフエネ、ジニーエナジー、みんな電力、めぐるでんき、おトクでんき、アスエネ、リミックスポイントなど。
(5) 利用者の多い主な電力会社で、市場連動ではない料金プランの電力会社…auでんき、ソフトバンクでんき、ENEOSでんき、東邦ガスグループの電気、東京ガスの電気、Looopでんき、楽天でんき、東急でんき&ガスのでんき、HTBエナジー(HISでんき)、eoでんき、大阪ガスの電気、ならでんなど
(→「エネチェンジ」、https://enechange.jp/articles/market-linkage-plan-summary)
(6) ただし、「市場連動型プラン」を提供する電力会社以外でも「燃料費の高騰など社会的経済的に当社に大きな影響を及ぼす事象が発生した場合、一定期間の告知をもって約款の変更をする」などの条項が約款で定められている場合がある。また、電源の調達にJEPXを利用している場合、仕入れにかかるコストが上がっているので、今後、電気料金プランの見直しなどが行われる可能性がある。
(7) 消費者への対応は、それぞれ異なる。ハルエネでんき(東京都)の場合は、2021/2/8に次のような対応を発表。「お客様のご負担を軽減・緩和するために、1月度ご請求書のうち調達調整費について、36回の分割払いを適用」とのこと。
【消費者の声】https://finance.yahoo.co.jp/card-loan/experts/questions/q13239728918
「ハルエネでんき、を利用しています。……」という消費者の悲痛な声。
[4]【政府の対応】
(1) 政府が対応に乗り出したのは1月中旬。遅すぎ。
(2) まず、1/17、違約金(新電力が電気を計画通り確保できない場合、新電力が支払う義務のある「インバランス料金」)の基準に200円/kWhの上限を設定。この上限が設定されるまでは、買値がどれほど高くても、違約金より安かったので、違約金回避の焦り → さらに卸価格の高騰、という悪循環を招いた。しかし、価格は200円に高止まり、価格は下がらなかった。
(3) 次に、卸電力の入札状況を公開。市場に見通しができ、1月末にようやく価格が低下→市場は落ち着きを取り戻した。
[5]【FITでも大儲けの大手電力】
(1) 大手電力系統の送配電事業者(関西電力送配電会社など)は、再エネ電力を10~40円/kWhというFIT固定価格で購入しつつ(風力では18~55円/kWh)、高騰した市場価格で小売業者に販売→その差額が送配電事業者に流れ、莫大な収益をあげた。(FIT制度=固定価格買取制度)(しんぶん赤旗2021/3/23)
(2) 東京電力ホールディングスや関西電力など大手電力が再生エネ事業者から固定価格で買い取った電気は、小売事業者に市場価格で売る。市場価格は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格に連動している。1月には指標価格が150円/kWh程度まで上昇し、昨年12月初旬の20倍超になった。
(3) 再生エネ事業者から40円で買ったも電力を、小売事業者に150円で売れば、110円の儲け。市場価格は10円前後の場合が多く、通常は固定価格のほうが高い。大手電力に負担が生じないよう、国民に上乗せする電気料金=FIT賦課金を設定して、差額を補っている。つまり、大手電力には、損をしないしくみをつくりつつ、儲けがあがる場合は無制限に許容している。
(4) FIT賦課金が増えて国民負担が大きすぎると言って、FITを攻撃する人もいる。
しかし、FIT賦課金は、再エネ普及のための未来への投資。
使用済み核燃料は、未来への負担押しつけ。
[6]【電力高騰の原因】
(1) 資源エネルギー庁。火力燃料のLNGの輸入が滞ったこと、真冬で需要が増えたこと、を指摘。
(2) 田中一郎「いちろうちゃんのブログ(http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/)」…どこの電力会社も燃料調達は中長期契約で行っており、今冬の燃料調達はまったくもって「パフォーマンス」にしか過ぎないと言わざるを得ません。今頃日本に入ってくる燃料は、過去の契約に基づいて購入したもの。また、今冬の寒波は2017年度よりも穏やかだった。寒波は確かに深刻な電力需給逼迫に陥りやすく、その結果、JEPX高騰を引き起こす要因になりやすい。しかし、寒波が来るから電力需給逼迫を懸念して燃料を日々調達しているのが大手電力燃料部門であり発電部門。今冬も、24時間体制で発電所の緊急稼動を随時行っている。
(3) 山家公雄(やまか・きみお)京都大特任教授(エネルギー戦略研究所所長)
…大きな発電設備をもっている関電が、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかったことを指摘(以下、毎日新聞2021/2/23)。
① 12/15、高浜3(12月下旬に再稼働予定)の再稼働延期(細管損傷)を発表→OCCTOに融通を依頼
② 12/15、OCCTOが、大手電力各社に対し、関電への電力融通を指示(この冬初めて)
③ 12/25、Jパワー(電源開発)の火力発電所70万kWがトラブル停止→OCCTOが関電向け融通指示
④ 1/16まで、OCCTOが関電向け融通指示94回(関電は、大飯4を、1/15再稼働、1/17発電開始)
⑤ 電力・ガス取引監視等委員会…12/29以降、大手電力は市場に出すよりも市場から買う量が上回った。つまり、本来電気の売り手である関電が供給余力を失い、買い手に回った。小さな池にクジラが入ってきて小魚=新電力はひとたまりもない。
・新電力は、売り物の電気の調達を、市場に大きく依存している。
・大手電力の原発再稼働延期、火力の停止が引金→大手電力の備えの甘さ。
・大きな発電設備をもっている関電が、供給を調整できず、大手電力がどれだけの電力を市場に出せるかという情報は、新電力には見えにくい。
・電力部分自由化から20年が経過したが、いまだに電力市場では各プレーヤーが目隠し状態で戦い、時にパニックに陥っている。信頼できる情報はどこにあるか、誰の声に耳を傾ければ良いのか、何から何を学べば良いのか、正しい情報や知識を得るには程遠いのが現状。
[7]【推測--原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかった関電】
(1) 関電は社長の下に8本部、4子会社を有する。そのうち、原子力事業本部(の中の原子力発電部門)と、新設のエネルギー需給本部(の中の燃料部門)との間で、そごがあったのではないか。
(2)「関西電力グループ中期経営計画(2019-2021)」。2019/7/1付で組織改正を実施。
①「エネルギー需給本部」の新設。電力需給、卸電力取引、燃料取引に係る情報を一元的に把握して、需給や市況の変動に迅速に対応していくための体制を整備し、需給運用の最適化を図る、という。
② その他の項目の第一としては、送配電カンパニーの「支社」の設置。送配電カンパニーの本店に「地域コミュニケーション部」を新設し、送配電カンパニーを関西電力グループの地域との窓口とすることで、地域の皆さまと一層緊密なコミュニケーションを推進、とある。
③ その他の項目の第二としては、「再生可能エネルギー事業本部」の設置。2030年代に再生可能エネルギーの設備容量を600万kWにする、という。
(3) この冬の電力価格高騰にも、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかった関電の劣化した姿がみえる。その上、12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回して、JEPXへの供給をゼロにし(スポット市場で大手電力に課された事実上のルールを無視)、市場価格高騰の一因をつくった。
[8]【関電グループの再エネの現状】(2020/9/30)
(1) 関電グループの再エネは、合計377.4万kW。その内訳をみると、これまでからの水力が大部分をしめていて(341.1万kW、90.4%)、新しい再エネの割合は10%未満(36.3万kW、9.6%)にとどまる。また、新しい再エネは、稼働原発4基の10%未満しかない。
(2) 新しい再エネ…合計36.3万kW
①太陽光8.2万kW、②風力2.4万kW、③バイオマス25.7万kW、④地熱0.01万kW
(これまでからの水力の合計は341.1万kW。そのうち1961年にできた黒部川第四発電所は33.5万kW)
(関電の水力発電施設には、出力調整のできない原発を補完する巨大な揚水式発電所が3つある。現状では原発を補完するが、将来は、出力変動を避けられない再エネを補完する役割が期待される。)
(3) 再稼働している原発…合計410.0万kW
①高浜34で174.0万kW、②大飯34で236.0万kW
(4) 電力生産は、リスク分散、遠距離送電ロス、目の届く民主的管理、省エネ推進、エネルギー消費の低減化などの観点から、巨大な施設による大規模生産、遠距離送電ではなくて、地域分散、地産地消、自産自消がふさわしい。再生可能な自然エネルギーのいっそうの拡大による地域分散型エネルギーシステムが各地で普及することが必要。現状の関電のような巨大独占会社が、巨大な再エネ施設をつくるような方向は、好ましくない。
[9]【関電不買】
(1) 関電不買…原発依存、倫理欠如の経営 No! 関電の電気は買わないぞ。
・関電の顧客離れを加速させれば、関電に打撃を与え、経営政策を揺さぶることができる。
(2) 2016/4以来の小売電力自由化の中で、関電の顧客離れがすすんでいる。原発再稼働、原発マネー不正還流などのたびに、減少が加速してきた。電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)のデータでは、関電地域の契約変更(スイッチング)件数(小口)は、2021年2月末で400万件をこえた。この400万件には、「関電→新電力」のほかに、「新電力→新電力」「新電力→関電」の契約変更が含まれているが、顧客の流動化がいちじるしく進んでいることが分かる。このデータのスイッチング件数は、関電純減の数字を先取りしている。
(3) 電力・ガス取引監視等委員会(電取委)のデータ(低圧)では、「関電→新電力」から「新電力→関電」(関電の取戻営業、おトク営業の“成果”)を差し引いた関電純減が分かるが、これが290万件に達している(2020年12月末現在)。電取委のデータは、発表が遅いが、きちんとオクトのデータを後追いしているので、オクトのデータは、関電純減の方向性を正確に示していると言える。
(4) 関電の全契約数は、概略で低圧が1400万件、そのうち、電灯が1300万件となる。そこから契約件数としてあまり意味のない公衆街路灯200万件(推定)を除けば、低圧電灯の契約数は、1100万件となり、このあたりが、関電の顧客が何%逃げたのか、の計算の分母(=全契約数)になると思われる。
→電取委のデータ、関電純減なら…300÷1100=27%。
→オクトのデータ、契約変更なら…400÷1100=36%。
いずれにしても、現状で、およそ30%の顧客が減っていることは確実。
(5) 関電からの小口顧客離れは,着実に進行している。さらに促進させよう。しかし,2020年4月から予定されていた電気料金の全面自由化が見送られた(新電力のシェアが小さかった)ことからも分かるように,電力産業において,関電など大手電力の支配力は依然として強大。
(6) また、関電の顧客が30%減ったからといって、関電の収入が30%減ったということにはならない。電気料金の30%前後は、託送料金として、関電の100%子会社、関西電力送配電(株)の収入となる。関電の契約を離れて新電力に契約を変更しても、毎月の電気料金の中の託送料金は、関電の懐にはいっている。
[10]【関電解体】
(1) 関電解体…発電、送配電、小売の独占 No! 巨大独占を分割せよ。
・関電など大手電力の原発推進路線を改めさせ、電力市場支配力を減衰させるには,発電、送配電、小売の分離、とりわけ再エネ普及のために送配電網の完全分離(→全国で一つの送配電網へ)が求められる。現状の送配電会社は、親会社の原発の電気を優先し、新電力の再エネの電気を流そうとしない。再エネ普及を妨げている元凶である。さらに、12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回して、JEPXへの供給をゼロにし(スポット市場で大手電力に課された事実上のルール[グロス・ビディング]を無視)、市場価格を高騰させた点は、巨大な発電施設をもつ関電が小売価格を支配できる体制であることを示している。
・「私の政権が続いていればやりたかったことのひとつが、電力会社の発送電分離だ。」。「2020年4月から法的分離により発送電分離が行われているが、実態は、原発を保有する9電力会社がそれぞれの子会社に送配電網の所有権を移しただけ。実質的な支配権は手放していない。」(『原発事故10年目の真実』菅直人)
(2) 関電など大手電力は、発電部門では圧倒的な力をもち,送配電部門も事実上,支配している。小売部門では,特別高圧や高圧の顧客に対して強烈な低価格を提示しているのではないかといわれる取戻営業,低圧顧客に対してはガスとのセット販売、おトク営業(餃子の王将2000円券)で攻勢に出るなど,関電の存在はまだまだ大きい。発電、送配電、小売の一体支配によって、発電設備をもたない小売だけの新電力に比べて、不当な独占利得を得ている。
(3) 関電など大手電力は、かつての総括原価方式で、富と権力を集中してきた。
・総括原価方式…経費の3%とかを自動的に利益にできる。経費を節約して利益を出すのではなくて、経費を増やして利益を増やす。5000億円の原発を何基つくっても、何ら経営不安が生まれない。さらに経費を節減するのではなく経費を水増して調達することで、大手電力会社は、どの地域でも、その地域の財界のお殿様になって大きな顔をしている。関電の場合、水増し発注は、受注者(元高浜町助役など)の懐を経て、関電経営者の懐も不当に潤してきた。
・電気料金は、税金みたいに強制的に支払わされる。大手電力は、消費者の電気料金でつくった発電施設、送配電網を独占してよいのか。
・どんな経営をしても自動的に利益を確保できるので、電力会社の経営者には、経営能力は必要ない。それ以外の能力が求められる。社外に対する政治力、社内力学などか。どこに行ってもお殿様だから、チヤホヤされる。経費は使い放題、賄賂をもらっても、預かっただけだと平気で言える厚顔さ。
(4) 分離した発電会社には、発電だけに特化した経済合理性を求めよう。原発に要した費用には、使用済み核燃料の処分費用、発電にともなう危険負担(避難のための計画やその費用)まで含めて負担させるべきだ。
[11]【原発ゼロ法制定】
(1) 原発ゼロ法制定…全政党の脱原発派は総結集! 原子力ムラの息の根を止めよう。
・原子力ムラ…経産省、大手電力会社、原発メーカー、自民党の核武装指向派。連合中央、電力総連、基幹労連、電機連合といった原子力産業推進労組。御用学者、御用マスゴミ、御用ジャーナリスト。
・とりわけ経産省と大手電力との結びつきは深い。規制する側とされる側でありながら、監督される側が、する側をコントールしてきた実態もある。黒川清・国会事故調元委員長の著書、規制する側(監督官庁)が規制される側(東電)の論理に取り込まれて無能化する『規制の虜』。
(2) 民主党政権下では、当初のもくろみ通りには、原発ゼロに向けた前進ができなかった。原子力ムラの総力を挙げた反撃があって、原発ゼロ法は棚上げにされた。福島事故をうけて作成されるはずの新規性基準もできていないまま、「電力不足」の虚偽宣伝により野田首相の下で大飯原発が再稼働された。その後の自民・公明党政権(安倍首相、菅首相)でも、再稼働路線が進められている。
(3) かつての失敗を繰り返すわけにはいかない。
・現状の与党(自民党、公明党)と、対する「野党共闘」という枠組みだけを考えていては、同じ失敗をみることになるのではないか。総選挙や政権選択のための枠組みの発想だけで良いのか。
・そういう枠組みではなくて、与党の中にも健在な脱原発派とともに、野党の中の原発推進派(原子力ムラ勢力)を排除した「脱原発共闘」という枠組みが必要ではないか。
(4) ただ、総選挙を目前にしている今、「野党共闘」と「脱原発共闘」とが、どういう関係になるのか、そこは分からない。とりあえず「野党共闘」で行くのか、「脱原発共闘」の枠組みとすれば、どういう運動をつくるのか、原発ゼロ法を実現させる道のりは、見えにくい。
2021年3月26日 (金)
電力価格が高騰
2020年12月末~2021年1月末
卸電力取引所(JEPX)スポット市場の電力価格が高騰
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◆ここにも原発最優先で劣化した関電の影が……
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【電力価格の高騰】
(1)通常は8~10円/kWhほどで、昨年度までの価格は最大で75円/kWh程度。
(2)しかし、2020年12月末から1月末にかけて、暴騰した。1/6に100円/kWh→ピーク時1/15は通常の25~30倍の251円/kWhまで急騰→高騰は1か月継続し1/25に沈静化。12/26~売れ残りゼロが3週間つづいた。
(3)広域機関や送配電事業者から、電力供給の同時同量を果たすよう“指導”を受けている新電力は、少しでも不足を出さないように、高値で札を入れざるを得ず、市場価格はひたすらに高騰した。
(新電力は700社。販売電力量に占めるシェアは約20%。自前の発電設備を持たない会社も多い)
【新電力は大赤字、大手電力は大儲け】
(1)新電力の、みんな電力によると、1年の市場取引額を超える1.5兆円が、3週間で大手発電事業者・送配電事業者に流れた。
(2)新電力では、家庭向けに30円/kWhで供給している場合、仕入価格が最大で販売価格の8倍に暴騰。多くの新電力は数千万円の赤字を抱え、経営困難へ。3/24、新電力のエフパワーが倒産。
【政府の対応】
政府が対応に乗り出したのは1月中旬。遅すぎ。
(1)まず、1/17、違約金(新電力が電気を計画通り確保できない場合、新電力が支払う義務のある「インバランス料金」という違約金)の基準に200円/kWhの上限を設定。この上限が設定されるまでは、買値がどれほど高くても、違約金より安かったので、違約金回避の焦り→さらに卸価格の高騰、という悪循環を招いた。しかし、価格は200円に高止まり、価格は下がらなかった。
(2)次に、卸電力の入札状況を公開。市場に見通しができ、1月末にようやく価格が低下→市場は落ち着きへ。
【FITでも大儲けの大手電力】
(1)大手電力系統の送配電事業者(関西電力送配電会社など)は、再エネ電力を10~40円/kWhというFIT固定価格で購入しつつ(風力では18~55円/kWh)、高騰した市場価格で小売業者に販売→その差額が送配電事業者に流れ、莫大な収益をあげた。
(2)東京電力ホールディングスや関西電力など大手電力が再生エネ事業者から固定価格で買い取った電気は、小売事業者に市場価格で売る。市場価格は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格に連動している。1月には指標価格が150円/kWh程度まで上昇し、昨年12月初旬の20倍超になった。
(3)再生エネ事業者から40円で買ったも電力を、小売事業者に150円で売れば、110円の儲け。市場価格は10円前後の場合が多く、通常は固定価格のほうが高い。大手電力に負担が生じないよう、国民に上乗せする電気料金=FIT付加金を設定して、差額を補っている。つまり、大手電力には、損をしないしくみをつくりつつ、儲けがあがる場合は無制限に許容。
(4)FIT賦課金が増えて国民負担が大きすぎると言って攻撃する人もいる。
しかし、FIT賦課金は、再エネ普及のための未来への投資。
使用済み核燃料は、未来への負担押しつけ。
【電力高騰の原因】
(1)資源エネルギー庁。火力燃料のLNGの輸入が滞ったこと、真冬で需要が増えたこと、を指摘。
(2)田中一郎「いちろうちゃんのブログ」…どこの電力会社も燃料調達は中長期契約で行っており、今冬の燃料調達はまったくもって「パフォーマンス」にしか過ぎないと言わざるを得ません。今頃日本に入ってくる燃料は、過去の契約に基づいて購入したもの。また、今冬の寒波は2017年度よりも穏やかだった。寒波は確かに深刻な電力需給逼迫に陥りやすく、その結果、JEPX高騰を引き起こす要因になりやすい。しかし、寒波が来るから電力需給逼迫を懸念して燃料を日々調達しているのが大手電力燃料部門であり発電部門。今冬も、24時間体制で発電所の緊急稼動を随時行っている。
(3)山家公雄(やまか きみお)京都大特任教授(エネルギー戦略研究所所長)
…大きな発電設備をもっている関電が、
原発に頼り切り、備えをおこたり、供給を調整できなかったことを指摘
(毎日新聞、2021/2/23)
(OCCTO…電力広域的運営推進機関)
① 12/15、高浜3(12月下旬に再稼働予定)の再稼働延期を発表→OCCTOに融通を依頼
② 12/15、OCCTOが、大手電力各社に対し、関電への電力融通を指示(この冬初めて)
③ 12/25、Jパワーの火力発電所70万kWがトラブル停止→OCCTOが関電向け融通指示
④ 1/16まで、OCCTOが関電向け融通指示94回(関電は、大飯4を、1/15再稼働、1/17発電開始)
⑤ 電力・ガス取引監視等委員会…12/29以降、大手電力は、市場に出すよりも市場から買う量が上回った。
つまり、本来電気の売り手である関電が供給余力を失い、買い手に回った。小さな池にクジラが入ってきて小魚=新電力はひとたまりもない。
新電力は、売り物の電気の調達を、市場に大きく依存している。
大手電力の原発再稼働延期、火力の停止が引金→大手電力の備えの甘さ。
大きな発電設備をもっている関電が、供給を調整できず、
大手電力がどれだけの電力を市場に出せるかという情報は、新電力には見えにくい。
電力部分自由化から20年が経過したが、いまだに電力市場では各プレーヤーが目隠し状態で戦い、時にパニックに陥っている。信頼できる情報はどこにあるか、誰の声に耳を傾ければ良いのか、何から何を学べば良いのか、正しい情報や知識を得るには程遠いのが現状。
2020年12月27日 (日)
2020/12/04 大阪地裁判決についてのmemo
以 上
2020年12月26日 (土)
「容量市場」とは何か--雑誌『世界』より
容量市場とは、一言で要約すれば、
この二つの目的について、(2)の説明(電力安定供給)はこれまでよく聞いてきたが、(1)の方はあまり聞いたことがない。この『世界』の記事では、(1)の方の解説が丁寧にされているので、興味深く読んだ。
◆太陽光発電と風力発電は、燃料が不要のため、卸電力市場にほぼタダの電力として流れ込んでくる。このため卸電力市場の価格が低下して、価格変動が大きくなる。また、日照や風などで出力も変動する。こうしたことで、自然変動電源(VRE:Variable Renewable Energy)とよばれるが、VREが増えれば増えるほど、その調整力を維持することが難しくなる。この解決策の一つが「容量市場」というわけだ。
◆ヨーロッパでは、VREが急拡大し、気候危機に対応するためにVREをさらに拡大する必要性に迫られた結果、調整力としての容量メカニズム(容量市場、戦略的予備力など各種の方策)が検討されたのである。それなのに、日本では「安定電源」の確保ばかりが強調され(原発や石炭が優遇され)、VREの拡大も炭素制限も理念にないまま、数年先の容量確保だけで制度設計が行われた。
◆2020年5月インドで24時間365日稼働が条件の「太陽光+バッテリー」の入札があり、5.4円/kWhで落札された。落札したのは、東電グループと中部電力の発電子会社JERA(ジェラ)が資本参加する企業。この価格はインドの通常の電力調達価格を下回っていて、「太陽光+バッテリー」がベースロード電源としてすでに競争力を有していることを意味している。バッテリーと組み合わされて、それ自体が柔軟性を持った調整力である。さらに、太陽光は過去10年で発電コストが90%減、蓄電池も75%減となっていて、今後もコスト低減が予測される。
◆「日本型容量市場」の最大の問題は、なぜ容量メカニズムが必要なのかという議論がなく、十年一日の「安定供給」の発想だけで、今世界で起きつつあるエネルギー大転換の現実からも、気候危機に対する国際社会や将来世代への責任からも背を向けていることにある。ここが結論。
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(以下、付録)
◆[2020/12 /15 美浜町議会資料(1) ]原子力発電所特別委員会報告。福井県美浜町議会で、老朽原発再稼働に賛成の議員らの発言
「今の太陽光発電や風力発電では、ベースロード電源にはならない。これからの時代に、電気をどのように供給するかということになると、やはり原子力である。」
「今の脱炭素社会の方向性を見ると、自動車が電気自動車に切り替わっていき、さらなる電気の需要が高まり、電気のない社会は考えられない。今後電気をどのように確保していくかは、今の時点で原子力発電所を全く抜きには考えられない。」
「再生可能エネルギーの発電は自然が相手なので、安定した電気の供給が難しくなる、その点を考えると、原子力発電の再稼働は必要であるので、この請願には賛成する。」
「現在、目本のエネルギーは多くの化石燃料を海外に依存しており、非常に低い自給率のエネルギー事情を考えると、原子力は純国産と言われるので、今この原発をやめるという判断は、非常に現実的でないと考える。」
「再生可能エネルギーの発電は自然が相手なので、安定した電気の供給が難しくなる、その点を考えると、原子力発電の再稼働は必要である」
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より以前の記事一覧
- 関電離れが最大レベルに! 2020.08.09
- 高浜原発の蒸気発生器細管について 2020.04.19
- 関電追加告発の延期 2020.04.18
- 発電電力量の構成は再エネが16.9% 2020.04.17
- 「国内強制移動に関する指導原則」についてのメモ~~政府の文書改ざんはこんなところにも! 2019.12.15
- 嘘と裏金で世界を欺いた東京オリンピック 2019.08.15
- ベースロード電源市場とは 2019.08.11
- 非化石価値取引市場とは 2019.08.11
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- 脱原発の闘い~現在の焦点 2018.11.21
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- 2018/3/15 原発賠償京都訴訟の判決と,大飯原発差止訴訟 2018.03.16
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- ポリマスター社製PM1703MO-1 2016.03.07
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- 愛媛県の原子力防災訓練 2012.10.24

