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2021年4月

2021年4月28日 (水)

大手電力の大儲けと 新電力の苦境~~ 電力価格の高騰と関西電力、原発ゼロ法についてのメモ

[1] この冬の電力価格の暴騰

(1)2020年12月末~2021年1月末に、卸電力取引所(JEPX)のスポット市場(一日前市場)の電力価格が暴騰しました。
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・通常価格… 8~10円/kWh
・高くなる時間帯でも…50円/kWh程
・これまでの最高価格…75円/kWh程
・2021/1/6…100円/kWhを記録
・2021/1/15のピーク…251円/kWh!
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1/15のピーク時には、通常の25~30倍の251円/kWhという過去最高値を記録、暴騰は1か月継続し、1/25にようやく沈静化しました。市場での売れ残りゼロが12/26から3週間続きました。いわゆる“新電力”とよばれる小売会社は、この卸電力取引所から多くの電力を調達しているため、大きな影響を受けたのです。

(2)なお、小売電気事業者は全国で、計713社(2021/3/22現在)。大手電力(元地域独占体制の10電力会社)[=旧一般電気事業者(旧一電・いちでん)]は、全発電設備の80%を独占しています。新電力703社は、販売電力量に占めるシェアが約20%になりましたが、自前の発電設備をもたない会社も多くあります。

[2] 新電力は大赤字、大手電力は大儲け

(1)新電力の「みんな電力」によると、1年の市場取引額を超える1.5兆円が、3週間で大手電力とその配下の送配電事業者に流れました。

(2)新電力では、家庭向けに30円/kWhで供給している場合、仕入価格が最大で販売価格の8倍に暴騰。多くの新電力が多額の赤字を抱え、経営困難に陥っています。

(3)3/24、新電力のエフパワー(東京都港区)が負債464億円で倒産しました。この倒産は、2020/12後半から寒波などによる電力需要の増加と、火力発電燃料LNG(液化天然ガス)の不足などが原因の「電力市場価格高騰」の影響が契機と報道されています。しかし、はたしてそうでしょうか。

[3] 消費者への影響

(1)新電力で「市場連動型プラン」の利用者には、電気料金に影響がでてきています。「市場連動型プラン」は、卸電力取引所(JEPX)の市場価格に連動して電気料金単価が決まるプランです。2020年度はJEPX価格は史上最安値の安さだったので、激安の恩恵がありました。しかしJEPXの市場価格が高騰すると、利用者の電気料金にもそのまま反映するので、この冬の市場価格では、通常通りの電気利用量でも1月分の電気料金が数倍に跳ねあがりました。

(2)電気料金が高騰したおもな新電力は、以下の通りです。これらの電力会社の供給シェアは1.86%、契約件数は約80万件。その契約者の負担は大きい。
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「市場連動型プラン」…自然電力、エルピオ(市場連動プランのみ)、ダイレクトパワー、テラエナジー、ハチドリ電力、ジニーエナジーなど。
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[4] 政府の対応とインバランス料金

(1)政府が卸電力取引所(JEPX)対策に乗り出したのは1月中旬。遅すぎ。

(2)まず、1/17、違約金(新電力が電気を計画通り確保できなかった場合=JEPXで落札できなかった場合に送配電会社に支払う義務のある「インバランス料金」)に200円/kWhの上限を設定。この上限が設定されるまでは、買値が250円/kWhでも、違約金(1月は最終的に500円/kWh)より安かったので、それを回避したい焦りからさらに卸価格の高騰へという悪循環。しかし、価格は高止まりのまま。

(3)次に、JEPXの入札状況を公開した結果、市場に見通しができ、1月末に狂乱状態から落ち着きを取り戻したようです。

(4)なお、関西電力送配電(株)はインバランス料金収入で192.5億円の収入。一方、多くの新電力は、仕入れ価格の暴騰とインバランス料金支払いとの二重苦。

[5] FITでも大儲けの大手電力

(1)2017年の改革により、FIT電気の買取義務者は大手電力配下の送配電事業者となり(関西電力送配電株式会社など)、あわせて小売電気事業者がFIT電気を調達する際の価格が卸電力取引所(JEPX)市場価格に連動することとなりました。
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FIT(フィット)…再エネ普及の
    ための固定価格買取制度
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(2)大手電力配下の送配電事業者は、再エネ電力をFIT固定価格(太陽光は12~42円/kWh、風力は18~55円/kWhなど)で購入しています。そして、高騰した市場価格で小売業者に販売し、その差額によって莫大な収益をあげました。

(3)再生エネ事業者から40円で買った電力を、小売事業者に150円で売れば、110円の儲け。市場価格は10円前後の場合が多く、通常は固定価格のほうが高いので、大手電力に負担が生じないよう、国民に上乗せする電気料金=FIT賦課金を設定して、差額を補っています。つまり、大手電力は決して損をせず、儲けが出た場合は無制限の儲け放題となる制度となっています。

(4)FIT電気の仕入れ価格の高騰は、FIT電気を重視してその割合を高くしてきた再エネ新電力に、大きな打撃となり、再エネ普及を妨げる事態になりかねません。

(5)FIT賦課金が増えて国民負担が大きすぎると言って、FITを攻撃する人もいます。しかし、それは間違いです。
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FIT賦課金
 再エネ普及のため未来への投資
原発の使用済み核燃料
 未来への負担押しつけ!
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[6] 電力高騰の原因

(1)資源エネルギー庁は、火力発電燃料のLNG(液化天然ガス)の輸入が滞ったこと、真冬で需要が増えたこと、を指摘しています。しかし、この点を真っ向から否定する意見もあります(田中一郎「いちろうちゃんのブログ」)。

(2)山家公雄(やまか・きみお)京都大特任教授(エネルギー戦略研究所所長)は、大きな発電設備をもっている関電が、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかったことを示唆しています(毎日新聞2021/2/23)。

① 12/15、高浜原発3号機(12月下旬に再稼働予定)の再稼働延期(細管損傷)を発表→電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)に融通を依頼。

② 12/15、OCCTOが、大手電力各社に対し、関電への電力融通を指示。

③ 12/25、Jパワー(電源開発)の火力発電所70万kWがトラブル停止→OCCTOが関電向け融通指示。

④ 1/16まで、OCCTOが関電向け融通指示94回(関電は、大飯原発4号機を、1/15再稼働、1/17発電開始)。

⑤ 電力・ガス取引監視等委員会によると、12/29以降、大手電力は市場に出すよりも市場から買う量が上回った。つまり、本来電気の売り手である関電が供給余力を失い、買い手に回った。小さな池にクジラが入ってきたら、小魚=新電力はひとたまりもない。

[7] 関電はどうだったのか

(1)関電は社長の下に8本部、4子会社を有するが、そのうち、原子力事業本部(の中の原子力発電部門)と、2019年に新設のエネルギー需給本部(の中の燃料部門)との間で、齟齬(そご)があったのではないか。

(2)この冬の電力価格高騰の状況でも、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかった関電の劣化した姿をみることができます。その上、
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関電は市場価格暴騰の一因をつくった…12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回し、卸電力取引所(JEPX)への供給をゼロにし、スポット市場で大手電力に課された事実上のルールを無視!
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(3)関電グループの再エネは、合計377.4万kWで、100万kWクラスの原発4基分のみです。その内訳をみると、これまでからの水力が90%をしめていて(341.1万kW)、新しい再エネの割合は、10%未満(36.3万kW、9.6%)にとどまります。

(4)電力生産は、リスク分散、遠距離送電ロス、目の届く民主的管理、省エネ推進、エネルギー消費の低減化などの観点が重要です。関電のような巨大な企業が巨大な施設で大規模生産をして遠距離に送電するのは適切ではない。地域分散、地産地消、自産自消がふさわしい。再生可能な自然エネルギーのいっそうの拡大による地域分散型エネルギーシステムが各地で普及すること、小規模な分散エネルギーを統合して系統化するシステムこそ、高度のノウハウが必要です。これからの社会とエネルギー企業の理念を、関電は持ちあわせているでしょうか。

[8] 関電不買

(1)原発依存、倫理欠如の経営 No! 原発の電気は買いません。関電の顧客離れを加速させれば、関電に打撃を与え、経営政策を揺さぶることができます。

(2)2016/4以来の小売電力自由化の中で、関電の顧客離れがすすんでいます。原発再稼働、原発マネー不正還流などのたびに、減少が加速してきました。電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)のデータでは、
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関電地域の契約変更(スイッチング)件数(小口)…2021年2月末で400万件をこえました。
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この400万件には、「関電→新電力」のほかに、「新電力→新電力」「新電力→関電」の契約変更が含まれていますが、顧客の流動化がいちじるしく進んでいることが分かります。このスイッチング件数は、関電純減の数字を先取りしています。

(3)電力・ガス取引監視等委員会(電取委)のデータ(低圧)では、
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関電純減…「関電→新電力」から「新電力→関電(関電の取戻営業、おトク営業の“成果”)」を差し引いた数が関電純減。これが、2021年1月末で294万件に達します。
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電取委のデータは、発表がやや遅くなりますが、OCCTOのデータを後追いしています。

(4)関電の全契約数は、概略で低圧が1400万件。そこから契約件数としてあまり意味のない公衆街路灯200万件(推定)を除けば、低圧の契約数は、1100~1200万件となり、このあたりが、関電の顧客が何%逃げたのか、の計算の分母(=全契約数)になると考えられます。

(5)低圧電力料金自由化(2016/4)以来の関電からの顧客離れは、急激です。
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関電からの顧客離れ
→オクトのデータ、契約変更率なら
 …400÷1100=36%。
→電取委のデータ、関電純減率なら
 …300÷1100=27%。
いずれにしても、関電がおよそ30%の顧客を減らしていることは確実。収益の柱が細っているのです。
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(6)関電からの小口顧客離れは、着実に進行しています。しかし、2020年4月から予定されていた電気料金の全面自由化が見送られた(新電力のシェアが小さかった)ことからも分かるように、関電など大手電力の支配力はなお強大です。

(7)また、関電の顧客が30%減っても、関電の収入が30%減るということにはなりません。電気料金の30%前後は、託送料金として、関電の100%子会社、関西電力送配電(株)の収入となります。

[9] 関電解体

(1)発電、送配電、小売の独占 No! 巨大独占を分割せよ。

(2)関電など大手電力の原発推進路線を改めさせ、電力市場支配力を減衰させるには、発電、送配電、小売の分離、とりわけ再エネ普及のために送配電網の完全分離(→全国単一の送配電網)が必要です。

(3)関電など大手電力は、発電部門では圧倒的な力をもち、送配電部門も支配して親会社の原発の電気を優先し、新電力の再エネの電気を流そうとせず、再エネ普及を妨げています。小売部門では、特別高圧や高圧の顧客に対して、強烈な低価格を提示して取戻営業を強めています。低圧顧客に対してはガスとのセット販売、おトク営業で攻勢に出るなど、関電の存在はまだまだ巨大です。発電、送配電、小売の一体支配によって、発電設備をもたない小売だけの新電力に比べて、不当な独占利得を得ています。

(4)関電など大手電力は、かつての総括原価方式で、富と権力を集中してきました。
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総括原価方式…経費の3%とかを自動的に利益にできる。経費を節約して利益を出すのではなくて、経費を増やして利益を増やす。5000億円の原発を何基つくっても、経営リスクがない。そして経費を節減するどころか、経費を水増して大量の購入物品を調達してきた。
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こうして大手電力は、どの地域でも、その地域の財界のお殿様になって大きな顔をしています。関電の場合、水増し発注は、受注者(元高浜町助役など)の懐を経て、関電経営者とりわけ原発部門幹部の懐をうるおしてきました。

(5)電気料金は、税金みたいに強制的に支払わされます。大手電力は、消費者の電気料金でつくった発電施設、送配電網を独占し、それだけでなく再エネ普及を妨げ、原発温存の基盤となっています。

(6)どんな経営をしても自動的に利益を確保できる中で育ってきた電力会社の経営者には、経営能力はない。どこに行ってもお殿様だから、チヤホヤされる。経費は使い放題、巨額の賄賂をもらっても、預かっただけだと平気で言える厚顔さ。

[10] 原発ゼロ法制定

(1)すべての脱原発派勢力は、総結集して原子力ムラの息の根を止めよう。
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原子力ムラ…自民党の核武装指向派、利権漁りの政治家。経産省。大手電力。原発メーカー。連合中央、電力総連、基幹労連、電機連合など原子力産業推進労組。御用学者、御用マスごみ、御用ジャーナリスト。
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(2)民主党政権下では、原子力ムラの総力を挙げた反撃があって原発ゼロ法は棚上げにされました。福島事故をうけて作成されるはずの新規性基準もできないまま、民主党政権の下、電力不足の虚偽宣伝により大飯原発が再稼働されました。

(3)前の失敗を繰り返すわけにはいきません。現状の与党(自民党、公明党)と、対する「野党共闘」という枠組みだけを考えていては、同じ失敗をみることになります。総選挙や政権選択のための枠組みの発想だけで良いのでしょうか。

(4)与党の中で健在な脱原発派とともに、野党の中の原発推進派(原子力ムラ勢力)を排除した「脱原発共闘」という枠組みが必要ではないか。そのために、選挙では、与野党を問わず、すべての候補者に対して、脱原発に賛成し公約に掲げるよう呼びかけ、これに応じた候補者には、認定のNN(No Nukes)マークを付与し、有権者の選択の目安にしてもらうといった運動を検討してはどうかと思います。

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大手電力と新電力についてのメモ

◆全国の小売電気事業者は、計713社(2021/3/22現在)。大手電力(元地域独占体制の10電力会社)[=旧一般電気事業者(旧一電・いちでん)]は、全発電設備の80%を独占。大手電力以外の新電力は、703社。販売電力量に占める新電力のシェアは約20%になったが、自前の発電設備をもたない会社も多くある。

◆2020年12月末~2021年1月末に、卸電力取引所(JEPX)のスポット市場(一日前市場)の電力価格が暴騰し、その影響を受けて新電力各社は、苦境に陥っている。

◆3/24に倒産した新電力大手F-Power(エフパワー)の経営の中心は、日本興業銀行(現みずほ銀行)の出身で、幹部陣も含めて金融出身者を多数抱えていた。大手電力のように発電所を持たなくても、電力市場を駆使することで新電力は成長できるはずという考えの下、事業を拡大させてきた。しかし、市場で仕入れた250円/kWhの電力を、顧客に30円/kWhで販売していたら、赤字にならないはずがない。
(市場連動型の料金体系をとっていた新電力はこの点では赤字にならないが、顧客の電気料金が8倍になるので、顧客離れは必須。)

◆その上、卸電力取引所(JEPX)では売り札が切れてしまい(売り手がいなくなり)、買いたくても買えない状況に陥った。供給量確保の約束を果たせなくなった新電力は、ペナルティー(インバランス料金)まで徴収されることになり、今や、新電力各社は深刻な二重苦に陥っている。

◆新電力はどのようにして電気を調達しているか

[1] 卸電力取引所からの調達が40%弱

発電所を持つ企業(おもに大手電力)が売り手となって市場に電気を売り出し、新電力や大手電力などが買い手となって取引が成立。1日を30分単位に区切った枠で価格が決まり、例えば16:00~16:30を1kWhあたり10円といった形で取引が行われる。卸電力取引所で売りに出た電力の87%は、大手電力からのもの。

2020年6月時点(2020/4~6)では、わが国の販売電力量(1825億kWh)に占める卸電力取引所のシェアは、約38%(約定量683億kWh、約定価格4.8円/kWh)であり、新電力のシェアも17%(特高、高圧)、19%(低圧)となっている。

卸電力取引所(JEPX)では、大手電力に課された事実上のルール(形式的には自主的な取り組み)として、大手電力各社の販売電力量の約20%~30%程度が限界費用ベースで玉出しされている(グロス・ビディングという→注参照)。しかし、これはあくまで自主的な電源供出。このような取り組みにより卸電力取引所での取引量は徐々に増加しているが、今後は大手電力の玉出し義務化などの措置により、市場規模を拡大し、経済性の向上を図ることが必要とされる。

【注】グロス・ビディングとは、従来、余剰電力を中心に行われていた取引所取引(ネット・ビディング)に加え、大手電力の自社供給分を含めて取引所を介して売買する取り組み。大手電力の社内取引の一部が市場経由で行われるため、社内取引価格が明確となり、社内取引が透明化されることが期待される。しかし、実質的な競争促進効果をもたらすためには、相当程度の量が必要ではないか。また、電力会社が全部買い取ったのでは効果も限定的。価格の透明化だけではなく、競争促進的にするには、発電・小売間の情報遮断を行う必要があるのではないか。しかし、グロス・ビディングを導入する場合、発電・小売が一体化された会社では情報遮断を行うことが難しいという指摘もある。(電力・ガス取引監視等委員会)
 なお、関西電力は、12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回し、卸電力取引所(JEPX)への供給をゼロにした。スポット市場で大手電力に課された事実上のルールであるグロス・ビディングを無視したといわざるを得ない!


[2] 常時バックアップによる調達が15%ほど

常時バックアップは、大手電力から供給される。新電力の需要の一定量を、大手電力から調達できる仕組み。新電力の常時バックアップ購入可能枠は特高・高圧で30%、低圧で10%(いずれも新規需要kWに対する比率)までとなっているが、今後は廃止の方向になっている。

[3] 自社が保有する発電所

発電所を保有する新電力は、よほどの大手のみ。多くの新電力は、自前の発電所を持っていない。東京ガスは東京湾周辺にLNG火力発電所を多数保有しており、供給する電力の80%程度をまかなっている。ガス会社はガスを燃料とする発電所、ENEOSのような石油会社は石油を燃料とする火力発電所を保有している。

[4] 相対取引

発電所を持つ会社との直接契約。各社の取引条件や交渉により、価格等が異なる。日本の発電所の80%を大手電力が保有しているため、新電力が相対契約を増やすには大手電力との契約交渉が欠かせない。大手電力からの相対取引として、年間で347億kWh程度(常時バックアップの15倍規模)が取引されていると推測されている。しかし、多くの新電力は、「条件の悪化や取引停止になることが怖くて、意見を言うことはできない」という弱い立場にあるのが実情。

[5] バランシンググループ

複数の新電力会社がまとまって、グループで電気の調達を行う。バランシンググループ自体は、卸電力取引所や、発電所を持つ企業との相対契約などで電気を調達。

[6] インバランス

最終的な調整電力の調達方法。見込み違いを補正するという性格があり、コストが高い。新電力は自社顧客の「需要」と、「供給」(調達する量)を合わせる義務を負っている。その義務を果たせなかったときには、送配電事業者(関西電力送配電株式会社など)が代わって最終的に需要と供給を一致させる(送配電事業者はそのための専用電源を常時、確保している)が、それをインバランスという。インバランスが発生すると、後で料金を精算する必要がある。その際の価格は卸電力取引所の取引価格に連動して変動する。見込み違いというペナルティ的な要素があるので、市場価格よりも割高。逆に需要よりも多く調達した場合は、割安な価格で買い取りが行われる。需要を正しく予測できない新電力はインバランスを多く発生することになり、経営を圧迫することになる。




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2021年4月 1日 (木)

電力価格の高騰と関電、原発ゼロ法についてのメモ

[1]【この冬の電力価格の高騰】

(1) 2020年12月末~2021年1月末に、卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)のスポット市場(一日前市場)の電力価格が高騰した。
(JEPXの電力取引価格は、JEPX プライスチェッカーで確認できる→https://enechange.jp/jepx_checker/)

(2) 通常は8~10円/kWhほどで、昨年度までの価格は最大で75円/kWh程度であった。

(3) しかし、2020年12月末から1月末にかけて、暴騰した。1/6に100円/kWh→ピーク時1/15は通常の25~30倍の251円/kWhまで急騰 → 高騰は1か月継続し1/25に沈静化。12/26~売れ残りゼロが3週間つづいた。狂乱状態のJEPXに対応して、1/7電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)が初めて「最大出力発電」を指示。

(4) OCCTOや送配電事業者から、つねに電力供給の同時同量を果たすよう“指導”を受けている新電力は、少しでも不足を出さないように、高値で札を入れざるを得ず、市場価格はひたすらに高騰した。

(5) 全国の小売電気事業者は、2021/3/22現在で、計713社。
・大手電力(10電力会社)[=旧一般電気事業者(旧一電)]は、全発電設備の80%をしめる。
・新電力(PPS)は、販売電力量に占めるシェアが約20%。自前の発電設備を持たない会社も多い。

[2]【新電力は大赤字、大手電力は大儲け】(「日経エネルギーNext」などより)

(1) 新電力の「みんな電力」によると、1年の市場取引額を超える1.5兆円が、3週間で大手発電事業者・送配電事業者に流れた。

(2) 新電力では、家庭向けに30円/kWhで供給している場合、仕入価格が最大で販売価格の8倍に暴騰。多くの新電力は数千万円の赤字を抱え、経営困難へ。

(3) 3/24、新電力のエフパワーが倒産。新電力では過去最大の倒産、会社更生法の適用を申請。負債464億円。(株)F-Power(資本金5000万円、港区芝浦3-1-21、代表沖隆氏ほか1名、従業員140名)。「ピタでん」というブランド名で沖縄および離島を除く全国に電気を販売。幹部陣も含めて金融出身者を多数抱え、大手電力のように発電所を持たなくても、電力市場を駆使することで新電力は成長できるはずという考えの下、事業を拡大。2018/4には電力販売量で新電力1位、2020/11には17位。今冬の市場高騰により電力調達コスト負担が増加するなど資金繰りが悪化。

(4) この倒産は、2020/12後半から寒波などによる電力需要の増加と、火力発電燃料LNG(液化天然ガス)の不足などが原因の「電力市場価格高騰」の影響が契機とされる。しかし、はたしてそうか。

(5) 大手新電力は電気事業の見直しを開始。楽天モバイルは2021/1/26、電力・ガス小売りサービスの「楽天でんき」の新規契約を当面停止すると発表。新電力ランキングの上位にはNTTグループのエネット(東京都港区)や東京ガス、ENEOS、大阪ガス、KDDI(auでんき)など大手企業が名を連ねる。その一角を占める楽天が新規受付を休止した影響は大きい。電気事業への豊富な経験とノウハウがある大手新電力ですら悲鳴を上げており、2016年4月の電力自由化を契機に新規参入した新電力のダメージはさらに深刻。

[3]【消費者への影響】

(1) 新電力で「市場連動型プラン」の利用者には、電気料金に影響がでてきている。「市場連動型プラン」は、JEPXの市場価格に連動して電気料金単価が決まるプラン。2020年度はJEPX価格は史上最安値の安さだったので、激安の恩恵をうけた。しかしJEPXの市場価格が高騰すると、利用者の電気料金にもそのまま反映する。この冬の市場価格では通常通りに電気を利用していても、1月分の電気料金が数倍にあがった。

(2) 市場連動プランを導入している新電力のWebサイトを確認すると、過去の市場価格の高騰事例などを参考にしながら明確にJEPXが高騰する恐れがあることを消費者に伝えている新電力は、自然電力(福岡市)など数える程しか存在しない、という。(日経ビジネス、2021/1/19)

(3) 従量料金が市場と連動する「市場連動型プラン」を提供している電力会社…自然電力、エルピオ(市場連動プランのみ)、ダイレクトパワー、テラエナジー、ハチドリ電力、ジニーエナジーなど。

(4) 電源調達費など電気料金の一部が市場と連動するプランを提供する電力会社…ハルエネでんき、エフエネ、ジニーエナジー、みんな電力、めぐるでんき、おトクでんき、アスエネ、リミックスポイントなど。

(5) 利用者の多い主な電力会社で、市場連動ではない料金プランの電力会社…auでんき、ソフトバンクでんき、ENEOSでんき、東邦ガスグループの電気、東京ガスの電気、Looopでんき、楽天でんき、東急でんき&ガスのでんき、HTBエナジー(HISでんき)、eoでんき、大阪ガスの電気、ならでんなど
(→「エネチェンジ」、https://enechange.jp/articles/market-linkage-plan-summary)

(6) ただし、「市場連動型プラン」を提供する電力会社以外でも「燃料費の高騰など社会的経済的に当社に大きな影響を及ぼす事象が発生した場合、一定期間の告知をもって約款の変更をする」などの条項が約款で定められている場合がある。また、電源の調達にJEPXを利用している場合、仕入れにかかるコストが上がっているので、今後、電気料金プランの見直しなどが行われる可能性がある。

(7) 消費者への対応は、それぞれ異なる。ハルエネでんき(東京都)の場合は、2021/2/8に次のような対応を発表。「お客様のご負担を軽減・緩和するために、1月度ご請求書のうち調達調整費について、36回の分割払いを適用」とのこと。
【消費者の声】https://finance.yahoo.co.jp/card-loan/experts/questions/q13239728918
「ハルエネでんき、を利用しています。……」という消費者の悲痛な声。

[4]【政府の対応】

(1) 政府が対応に乗り出したのは1月中旬。遅すぎ。

(2) まず、1/17、違約金(新電力が電気を計画通り確保できない場合、新電力が支払う義務のある「インバランス料金」)の基準に200円/kWhの上限を設定。この上限が設定されるまでは、買値がどれほど高くても、違約金より安かったので、違約金回避の焦り → さらに卸価格の高騰、という悪循環を招いた。しかし、価格は200円に高止まり、価格は下がらなかった。

(3) 次に、卸電力の入札状況を公開。市場に見通しができ、1月末にようやく価格が低下→市場は落ち着きを取り戻した。

[5]【FITでも大儲けの大手電力】

(1) 大手電力系統の送配電事業者(関西電力送配電会社など)は、再エネ電力を10~40円/kWhというFIT固定価格で購入しつつ(風力では18~55円/kWh)、高騰した市場価格で小売業者に販売→その差額が送配電事業者に流れ、莫大な収益をあげた。(FIT制度=固定価格買取制度)(しんぶん赤旗2021/3/23)

(2) 東京電力ホールディングスや関西電力など大手電力が再生エネ事業者から固定価格で買い取った電気は、小売事業者に市場価格で売る。市場価格は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格に連動している。1月には指標価格が150円/kWh程度まで上昇し、昨年12月初旬の20倍超になった。

(3) 再生エネ事業者から40円で買ったも電力を、小売事業者に150円で売れば、110円の儲け。市場価格は10円前後の場合が多く、通常は固定価格のほうが高い。大手電力に負担が生じないよう、国民に上乗せする電気料金=FIT賦課金を設定して、差額を補っている。つまり、大手電力には、損をしないしくみをつくりつつ、儲けがあがる場合は無制限に許容している。

(4) FIT賦課金が増えて国民負担が大きすぎると言って、FITを攻撃する人もいる。
しかし、FIT賦課金は、再エネ普及のための未来への投資。
使用済み核燃料は、未来への負担押しつけ。

[6]【電力高騰の原因】

(1) 資源エネルギー庁。火力燃料のLNGの輸入が滞ったこと、真冬で需要が増えたこと、を指摘。

(2) 田中一郎「いちろうちゃんのブログ(http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/)」…どこの電力会社も燃料調達は中長期契約で行っており、今冬の燃料調達はまったくもって「パフォーマンス」にしか過ぎないと言わざるを得ません。今頃日本に入ってくる燃料は、過去の契約に基づいて購入したもの。また、今冬の寒波は2017年度よりも穏やかだった。寒波は確かに深刻な電力需給逼迫に陥りやすく、その結果、JEPX高騰を引き起こす要因になりやすい。しかし、寒波が来るから電力需給逼迫を懸念して燃料を日々調達しているのが大手電力燃料部門であり発電部門。今冬も、24時間体制で発電所の緊急稼動を随時行っている。

(3) 山家公雄(やまか・きみお)京都大特任教授(エネルギー戦略研究所所長)
…大きな発電設備をもっている関電が、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかったことを指摘(以下、毎日新聞2021/2/23)。

12/15、高浜3(12月下旬に再稼働予定)の再稼働延期(細管損傷)を発表→OCCTOに融通を依頼
12/15、OCCTOが、大手電力各社に対し、関電への電力融通を指示(この冬初めて)
12/25、Jパワー(電源開発)の火力発電所70万kWがトラブル停止→OCCTOが関電向け融通指示
1/16まで、OCCTOが関電向け融通指示94回(関電は、大飯4を、1/15再稼働、1/17発電開始)
電力・ガス取引監視等委員会…12/29以降、大手電力は市場に出すよりも市場から買う量が上回った。つまり、本来電気の売り手である関電が供給余力を失い、買い手に回った。小さな池にクジラが入ってきて小魚=新電力はひとたまりもない。

・新電力は、売り物の電気の調達を、市場に大きく依存している。
・大手電力の原発再稼働延期、火力の停止が引金→大手電力の備えの甘さ。
・大きな発電設備をもっている関電が、供給を調整できず、大手電力がどれだけの電力を市場に出せるかという情報は、新電力には見えにくい。
・電力部分自由化から20年が経過したが、いまだに電力市場では各プレーヤーが目隠し状態で戦い、時にパニックに陥っている。信頼できる情報はどこにあるか、誰の声に耳を傾ければ良いのか、何から何を学べば良いのか、正しい情報や知識を得るには程遠いのが現状。

[7]【推測--原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかった関電】

(1) 関電は社長の下に8本部、4子会社を有する。そのうち、原子力事業本部(の中の原子力発電部門)と、新設のエネルギー需給本部(の中の燃料部門)との間で、そごがあったのではないか。

(2)「関西電力グループ中期経営計画(2019-2021)」。2019/7/1付で組織改正を実施。
「エネルギー需給本部」の新設。電力需給、卸電力取引、燃料取引に係る情報を一元的に把握して、需給や市況の変動に迅速に対応していくための体制を整備し、需給運用の最適化を図る、という。
その他の項目の第一としては、送配電カンパニーの「支社」の設置。送配電カンパニーの本店に「地域コミュニケーション部」を新設し、送配電カンパニーを関西電力グループの地域との窓口とすることで、地域の皆さまと一層緊密なコミュニケーションを推進、とある。
その他の項目の第二としては、「再生可能エネルギー事業本部」の設置。2030年代に再生可能エネルギーの設備容量を600万kWにする、という。

(3) この冬の電力価格高騰にも、原発に頼りきり、備えをおこたり、供給を調整できなかった関電の劣化した姿がみえる。その上、12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回して、JEPXへの供給をゼロにし(スポット市場で大手電力に課された事実上のルールを無視)、市場価格高騰の一因をつくった。

[8]【関電グループの再エネの現状】(2020/9/30)

(1) 関電グループの再エネは、合計377.4万kW。その内訳をみると、これまでからの水力が大部分をしめていて(341.1万kW、90.4%)、新しい再エネの割合は10%未満(36.3万kW、9.6%)にとどまる。また、新しい再エネは、稼働原発4基の10%未満しかない。

(2) 新しい再エネ…合計36.3万kW
①太陽光8.2万kW、②風力2.4万kW、③バイオマス25.7万kW、④地熱0.01万kW
(これまでからの水力の合計は341.1万kW。そのうち1961年にできた黒部川第四発電所は33.5万kW)
(関電の水力発電施設には、出力調整のできない原発を補完する巨大な揚水式発電所が3つある。現状では原発を補完するが、将来は、出力変動を避けられない再エネを補完する役割が期待される。)

(3) 再稼働している原発…合計410.0万kW
①高浜34で174.0万kW、②大飯34で236.0万kW

(4) 電力生産は、リスク分散、遠距離送電ロス、目の届く民主的管理、省エネ推進、エネルギー消費の低減化などの観点から、巨大な施設による大規模生産、遠距離送電ではなくて、地域分散、地産地消、自産自消がふさわしい。再生可能な自然エネルギーのいっそうの拡大による地域分散型エネルギーシステムが各地で普及することが必要。現状の関電のような巨大独占会社が、巨大な再エネ施設をつくるような方向は、好ましくない。

[9]【関電不買】

(1) 関電不買…原発依存、倫理欠如の経営 No! 関電の電気は買わないぞ。

・関電の顧客離れを加速させれば、関電に打撃を与え、経営政策を揺さぶることができる。

(2) 2016/4以来の小売電力自由化の中で、関電の顧客離れがすすんでいる。原発再稼働、原発マネー不正還流などのたびに、減少が加速してきた。電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)のデータでは、関電地域の契約変更(スイッチング)件数(小口)は、2021年2月末で400万件をこえた。この400万件には、「関電→新電力」のほかに、「新電力→新電力」「新電力→関電」の契約変更が含まれているが、顧客の流動化がいちじるしく進んでいることが分かる。このデータのスイッチング件数は、関電純減の数字を先取りしている。

(3) 電力・ガス取引監視等委員会(電取委)のデータ(低圧)では、「関電→新電力」から「新電力→関電」(関電の取戻営業、おトク営業の“成果”)を差し引いた関電純減が分かるが、これが290万件に達している(2020年12月末現在)。電取委のデータは、発表が遅いが、きちんとオクトのデータを後追いしているので、オクトのデータは、関電純減の方向性を正確に示していると言える。

(4) 関電の全契約数は、概略で低圧が1400万件、そのうち、電灯が1300万件となる。そこから契約件数としてあまり意味のない公衆街路灯200万件(推定)を除けば、低圧電灯の契約数は、1100万件となり、このあたりが、関電の顧客が何%逃げたのか、の計算の分母(=全契約数)になると思われる。
→電取委のデータ、関電純減なら…300÷1100=27%。
→オクトのデータ、契約変更なら…400÷1100=36%。
いずれにしても、現状で、およそ30%の顧客が減っていることは確実。

(5) 関電からの小口顧客離れは,着実に進行している。さらに促進させよう。しかし,2020年4月から予定されていた電気料金の全面自由化が見送られた(新電力のシェアが小さかった)ことからも分かるように,電力産業において,関電など大手電力の支配力は依然として強大。

(6) また、関電の顧客が30%減ったからといって、関電の収入が30%減ったということにはならない。電気料金の30%前後は、託送料金として、関電の100%子会社、関西電力送配電(株)の収入となる。関電の契約を離れて新電力に契約を変更しても、毎月の電気料金の中の託送料金は、関電の懐にはいっている。

[10]【関電解体】

(1) 関電解体…発電、送配電、小売の独占 No! 巨大独占を分割せよ。

・関電など大手電力の原発推進路線を改めさせ、電力市場支配力を減衰させるには,発電、送配電、小売の分離、とりわけ再エネ普及のために送配電網の完全分離(→全国で一つの送配電網へ)が求められる。現状の送配電会社は、親会社の原発の電気を優先し、新電力の再エネの電気を流そうとしない。再エネ普及を妨げている元凶である。さらに、12月後半~1月前半、自社発電分を全量、自社小売に回して、JEPXへの供給をゼロにし(スポット市場で大手電力に課された事実上のルール[グロス・ビディング]を無視)、市場価格を高騰させた点は、巨大な発電施設をもつ関電が小売価格を支配できる体制であることを示している。

・「私の政権が続いていればやりたかったことのひとつが、電力会社の発送電分離だ。」。「2020年4月から法的分離により発送電分離が行われているが、実態は、原発を保有する9電力会社がそれぞれの子会社に送配電網の所有権を移しただけ。実質的な支配権は手放していない。」(『原発事故10年目の真実』菅直人)

(2) 関電など大手電力は、発電部門では圧倒的な力をもち,送配電部門も事実上,支配している。小売部門では,特別高圧や高圧の顧客に対して強烈な低価格を提示しているのではないかといわれる取戻営業,低圧顧客に対してはガスとのセット販売、おトク営業(餃子の王将2000円券)で攻勢に出るなど,関電の存在はまだまだ大きい。発電、送配電、小売の一体支配によって、発電設備をもたない小売だけの新電力に比べて、不当な独占利得を得ている。

(3) 関電など大手電力は、かつての総括原価方式で、富と権力を集中してきた。

総括原価方式…経費の3%とかを自動的に利益にできる。経費を節約して利益を出すのではなくて、経費を増やして利益を増やす。5000億円の原発を何基つくっても、何ら経営不安が生まれない。さらに経費を節減するのではなく経費を水増して調達することで、大手電力会社は、どの地域でも、その地域の財界のお殿様になって大きな顔をしている。関電の場合、水増し発注は、受注者(元高浜町助役など)の懐を経て、関電経営者の懐も不当に潤してきた。
・電気料金は、税金みたいに強制的に支払わされる。大手電力は、消費者の電気料金でつくった発電施設、送配電網を独占してよいのか。
・どんな経営をしても自動的に利益を確保できるので、電力会社の経営者には、経営能力は必要ない。それ以外の能力が求められる。社外に対する政治力、社内力学などか。どこに行ってもお殿様だから、チヤホヤされる。経費は使い放題、賄賂をもらっても、預かっただけだと平気で言える厚顔さ。

(4) 分離した発電会社には、発電だけに特化した経済合理性を求めよう。原発に要した費用には、使用済み核燃料の処分費用、発電にともなう危険負担(避難のための計画やその費用)まで含めて負担させるべきだ。

[11]【原発ゼロ法制定】

(1) 原発ゼロ法制定…全政党の脱原発派は総結集! 原子力ムラの息の根を止めよう。

原子力ムラ…経産省、大手電力会社、原発メーカー、自民党の核武装指向派。連合中央、電力総連、基幹労連、電機連合といった原子力産業推進労組。御用学者、御用マスゴミ、御用ジャーナリスト。
・とりわけ経産省と大手電力との結びつきは深い。規制する側とされる側でありながら、監督される側が、する側をコントールしてきた実態もある。黒川清・国会事故調元委員長の著書、規制する側(監督官庁)が規制される側(東電)の論理に取り込まれて無能化する『規制の虜』。

(2) 民主党政権下では、当初のもくろみ通りには、原発ゼロに向けた前進ができなかった。原子力ムラの総力を挙げた反撃があって、原発ゼロ法は棚上げにされた。福島事故をうけて作成されるはずの新規性基準もできていないまま、「電力不足」の虚偽宣伝により野田首相の下で大飯原発が再稼働された。その後の自民・公明党政権(安倍首相、菅首相)でも、再稼働路線が進められている。

(3) かつての失敗を繰り返すわけにはいかない。
・現状の与党(自民党、公明党)と、対する「野党共闘」という枠組みだけを考えていては、同じ失敗をみることになるのではないか。総選挙や政権選択のための枠組みの発想だけで良いのか。
・そういう枠組みではなくて、与党の中にも健在な脱原発派とともに、野党の中の原発推進派(原子力ムラ勢力)を排除した「脱原発共闘」という枠組みが必要ではないか。

(4) ただ、総選挙を目前にしている今、「野党共闘」と「脱原発共闘」とが、どういう関係になるのか、そこは分からない。とりあえず「野党共闘」で行くのか、「脱原発共闘」の枠組みとすれば、どういう運動をつくるのか、原発ゼロ法を実現させる道のりは、見えにくい。

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