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2021年3月

2021年3月26日 (金)

電力価格が高騰

2020年12月末~2021年1月末
卸電力取引所(JEPX)スポット市場の電力価格が高騰

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◆ここにも原発最優先で劣化した関電の影が……
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【電力価格の高騰】

(1)通常は8~10円/kWhほどで、昨年度までの価格は最大で75円/kWh程度。

(2)しかし、2020年12月末から1月末にかけて、暴騰した。1/6に100円/kWh→ピーク時1/15は通常の25~30倍の251円/kWhまで急騰→高騰は1か月継続し1/25に沈静化。12/26~売れ残りゼロが3週間つづいた。

(3)広域機関や送配電事業者から、電力供給の同時同量を果たすよう“指導”を受けている新電力は、少しでも不足を出さないように、高値で札を入れざるを得ず、市場価格はひたすらに高騰した。
(新電力は700社。販売電力量に占めるシェアは約20%。自前の発電設備を持たない会社も多い)

【新電力は大赤字、大手電力は大儲け】

(1)新電力の、みんな電力によると、1年の市場取引額を超える1.5兆円が、3週間で大手発電事業者・送配電事業者に流れた。

(2)新電力では、家庭向けに30円/kWhで供給している場合、仕入価格が最大で販売価格の8倍に暴騰。多くの新電力は数千万円の赤字を抱え、経営困難へ。3/24、新電力のエフパワーが倒産。

【政府の対応】

政府が対応に乗り出したのは1月中旬。遅すぎ。

(1)まず、1/17、違約金(新電力が電気を計画通り確保できない場合、新電力が支払う義務のある「インバランス料金」という違約金)の基準に200円/kWhの上限を設定。この上限が設定されるまでは、買値がどれほど高くても、違約金より安かったので、違約金回避の焦り→さらに卸価格の高騰、という悪循環を招いた。しかし、価格は200円に高止まり、価格は下がらなかった。

(2)次に、卸電力の入札状況を公開。市場に見通しができ、1月末にようやく価格が低下→市場は落ち着きへ。

【FITでも大儲けの大手電力】

(1)大手電力系統の送配電事業者(関西電力送配電会社など)は、再エネ電力を10~40円/kWhというFIT固定価格で購入しつつ(風力では18~55円/kWh)、高騰した市場価格で小売業者に販売→その差額が送配電事業者に流れ、莫大な収益をあげた。

(2)東京電力ホールディングスや関西電力など大手電力が再生エネ事業者から固定価格で買い取った電気は、小売事業者に市場価格で売る。市場価格は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格に連動している。1月には指標価格が150円/kWh程度まで上昇し、昨年12月初旬の20倍超になった。

(3)再生エネ事業者から40円で買ったも電力を、小売事業者に150円で売れば、110円の儲け。市場価格は10円前後の場合が多く、通常は固定価格のほうが高い。大手電力に負担が生じないよう、国民に上乗せする電気料金=FIT付加金を設定して、差額を補っている。つまり、大手電力には、損をしないしくみをつくりつつ、儲けがあがる場合は無制限に許容。

(4)FIT賦課金が増えて国民負担が大きすぎると言って攻撃する人もいる。
しかし、FIT賦課金は、再エネ普及のための未来への投資。
使用済み核燃料は、未来への負担押しつけ。

【電力高騰の原因】

(1)資源エネルギー庁。火力燃料のLNGの輸入が滞ったこと、真冬で需要が増えたこと、を指摘。

(2)田中一郎「いちろうちゃんのブログ」…どこの電力会社も燃料調達は中長期契約で行っており、今冬の燃料調達はまったくもって「パフォーマンス」にしか過ぎないと言わざるを得ません。今頃日本に入ってくる燃料は、過去の契約に基づいて購入したもの。また、今冬の寒波は2017年度よりも穏やかだった。寒波は確かに深刻な電力需給逼迫に陥りやすく、その結果、JEPX高騰を引き起こす要因になりやすい。しかし、寒波が来るから電力需給逼迫を懸念して燃料を日々調達しているのが大手電力燃料部門であり発電部門。今冬も、24時間体制で発電所の緊急稼動を随時行っている。

(3)山家公雄(やまか きみお)京都大特任教授(エネルギー戦略研究所所長)
…大きな発電設備をもっている関電が、
原発に頼り切り、備えをおこたり、供給を調整できなかったことを指摘
(毎日新聞、2021/2/23)
OCCTO…電力広域的運営推進機関)

① 12/15、高浜3(12月下旬に再稼働予定)の再稼働延期を発表→OCCTOに融通を依頼
② 12/15、OCCTOが、大手電力各社に対し、関電への電力融通を指示(この冬初めて)
③ 12/25、Jパワーの火力発電所70万kWがトラブル停止→OCCTOが関電向け融通指示
④ 1/16まで、OCCTOが関電向け融通指示94回(関電は、大飯4を、1/15再稼働、1/17発電開始)
⑤ 電力・ガス取引監視等委員会…12/29以降、大手電力は、市場に出すよりも市場から買う量が上回った。
つまり、本来電気の売り手である関電が供給余力を失い、買い手に回った。小さな池にクジラが入ってきて小魚=新電力はひとたまりもない。

新電力は、売り物の電気の調達を、市場に大きく依存している。
大手電力の原発再稼働延期、火力の停止が引金→大手電力の備えの甘さ。
大きな発電設備をもっている関電が、供給を調整できず、
大手電力がどれだけの電力を市場に出せるかという情報は、新電力には見えにくい。
電力部分自由化から20年が経過したが、いまだに電力市場では各プレーヤーが目隠し状態で戦い、時にパニックに陥っている。信頼できる情報はどこにあるか、誰の声に耳を傾ければ良いのか、何から何を学べば良いのか、正しい情報や知識を得るには程遠いのが現状。

 

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