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2020年12月

2020年12月27日 (日)

2020/12/04 大阪地裁判決についてのmemo

【まとめ】
2020/12/04 大阪地裁判決における
「不確かさ」と「ばらつき」に関する memo
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◆「不確かさ」とは
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大飯原発近くのFo-B~Fo-A~熊川[エフオービー、エフオーエイ、くまがわ]断層について、地下の構造はすべて確実に分かっているわけではないので、断層モデルを設定するが、その各項目に「不確かさ」として余裕をもたせること。
(例えば、断層傾斜角は基本ケースの90°を75°に設定するなど)
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◆「ばらつき」とは
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断層モデルから地震規模を求める経験式(経験式とは過去の地震を元に作成、「入倉・三宅式」など)によって基準地震動を求めるが、経験式は平均値であって、当然「ばらつき」を有している。将来起こる地震は、平均値で起こるとは限らないので、平均値では基準地震動が過小になり地震で機器が壊れる可能性。
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◆「ばらつき」を考慮した場合の大飯原発の基準地震動
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平均値から設定された現行の基準地震動856ガルに対して、地震規模を求める経験式の「ばらつき」を考慮すると、1標準偏差で、現行の856ガル→1150ガルになる。原告の主張は、少なくともここまでは考慮すべき。2標準偏差で、856ガル→1540ガルになる。
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◆「不確かさ」と「ばらつき」の関係
◆否定された国の主張
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当初より「不確かさ」は考慮しているので、「ばらつき」は考慮する必要がない。もし「ばらつき」を考慮するならば、「不確かさ」は検討しなくてよい(重ねて考慮しない)ので、基本ケース(「不確かさ」も「ばらつき」も考慮しない場合)の606ガルが、812ガルになる。現行の基準地震動856ガルの範囲内に収まっていて、問題ない。
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◆「不確かさ」と「ばらつき」の関係
◆認められた原告の主張
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「不確かさ」と「ばらつき」の両方を考慮すべき。
規制委の地震動審査ガイドにも、はっきりそう書いてある。

以 上
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【以下、参考】
おおい原発止めよう裁判の会 / グリーン・アクションは、「ばらつき」に関する判決内容の要点を下記の8項目にまとめています。
詳しくは→ こちら

1.ばらつき条項の第2文は、国が主張する「留意点にすぎない」ものではない。
第2文は、平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮するという積極的な意味。

2.ばらつき条項は、震源特性パラメータの設定に関する基準の一つ。

3.川瀬報告書(国の証拠)は、ばらつきを上乗せする必要がないことを裏付けるものではない。

4.活断層の長さ等を保守的に設定した上で、更に地震規模(地震モーメント)を保守的に設定するということに何ら矛盾はない。

5.安全余裕論を批判
「余裕を持った設計」がされていても、基準地震動の策定は適切でなければならない。

6.経験式が有するばらつきについて検討した形跡がない。

7.複数の断層の連動や断層面積を大きく設定することは、地震規模のばらつきの考慮とは異質なもの。相互に補完するものではない。審査ガイドでも区別して定められている。

8.被告が最後に出してきた、「ばらつきを考慮」して「不確かさを考慮しない」場合の810ガルは、「前提を誤るもの」。

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2020年12月26日 (土)

「容量市場」とは何か--雑誌『世界』より


雑誌『世界』10月号(岩波書店)。
「容量市場」とは何か――原発・石炭・独占を維持する官製市場
飯田哲也さん

 容量市場とは、一言で要約すれば、

(1)太陽光発電などの自然変動に対する調整力や、
(2)万が一の停電などを避けるために、
将来必要となる電源設備の容量(発電することが可能な容量=kW)を確保するための市場のこと。

 この二つの目的について、(2)の説明(電力安定供給)はこれまでよく聞いてきたが、(1)の方はあまり聞いたことがない。この『世界』の記事では、(1)の方の解説が丁寧にされているので、興味深く読んだ。


◆太陽光発電と風力発電は、燃料が不要のため、卸電力市場にほぼタダの電力として流れ込んでくる。このため卸電力市場の価格が低下して、価格変動が大きくなる。また、日照や風などで出力も変動する。こうしたことで、自然変動電源(VRE:Variable Renewable Energy)とよばれるが、VREが増えれば増えるほど、その調整力を維持することが難しくなる。この解決策の一つが「容量市場」というわけだ。


◆ヨーロッパでは、VREが急拡大し、気候危機に対応するためにVREをさらに拡大する必要性に迫られた結果、調整力としての容量メカニズム(容量市場、戦略的予備力など各種の方策)が検討されたのである。それなのに、日本では「安定電源」の確保ばかりが強調され(原発や石炭が優遇され)、VREの拡大も炭素制限も理念にないまま、数年先の容量確保だけで制度設計が行われた。


◆2020年5月インドで24時間365日稼働が条件の「太陽光+バッテリー」の入札があり、5.4円/kWhで落札された。落札したのは、東電グループと中部電力の発電子会社JERA(ジェラ)が資本参加する企業。この価格はインドの通常の電力調達価格を下回っていて、「太陽光+バッテリー」がベースロード電源としてすでに競争力を有していることを意味している。バッテリーと組み合わされて、それ自体が柔軟性を持った調整力である。さらに、太陽光は過去10年で発電コストが90%減、蓄電池も75%減となっていて、今後もコスト低減が予測される。


◆「日本型容量市場」の最大の問題は、なぜ容量メカニズムが必要なのかという議論がなく、十年一日の「安定供給」の発想だけで、今世界で起きつつあるエネルギー大転換の現実からも、気候危機に対する国際社会や将来世代への責任からも背を向けていることにある。ここが結論。

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(以下、付録)


◆[2020/12 /15 美浜町議会資料(1) ]原子力発電所特別委員会報告。福井県美浜町議会で、老朽原発再稼働に賛成の議員らの発言

「今の太陽光発電や風力発電では、ベースロード電源にはならない。これからの時代に、電気をどのように供給するかということになると、やはり原子力である。」


「今の脱炭素社会の方向性を見ると、自動車が電気自動車に切り替わっていき、さらなる電気の需要が高まり、電気のない社会は考えられない。今後電気をどのように確保していくかは、今の時点で原子力発電所を全く抜きには考えられない。」


「再生可能エネルギーの発電は自然が相手なので、安定した電気の供給が難しくなる、その点を考えると、原子力発電の再稼働は必要であるので、この請願には賛成する。」


「現在、目本のエネルギーは多くの化石燃料を海外に依存しており、非常に低い自給率のエネルギー事情を考えると、原子力は純国産と言われるので、今この原発をやめるという判断は、非常に現実的でないと考える。」


「再生可能エネルギーの発電は自然が相手なので、安定した電気の供給が難しくなる、その点を考えると、原子力発電の再稼働は必要である」
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