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2019年4月

2019年4月30日 (火)

遅れているのは「特重施設」

遅れているのは「テロ対策施設」ではなくて「特重施設」だ!

 原子力規制委員会が,2019年4/24「テロ対策施設が期限内にできなければ,その原発を止める」と言いました。報道では「テロ対策の施設」とありましたが,それを言うなら「テロ対策施設」ではなくて「特重施設」でしょう。しかも,いかにも「私たち,やってます」という規制委の宣伝臭さがいっぱいで,鼻につきます。本当に原発を止めたならば,その後で,拍手しますが。

関電の原発の期限

[1] 「重大事故等対処設備」とそのバックアップとしての「特定重大事故等対処施設(特重施設)」

▼新規制基準では,原発は,下図①の例のような重大事故等に対応するため,②のように「重大事故等対処設備」として送水車等の可搬型設備等を配備しなければならないとしている。さらに,そのバックアップとして,③の「特定重大事故等対処施設(特重施設)」も設置しなければならない。

特重施設のイメージ(1)

特重施設のイメージ(2)

(図の出所は「鳥取県の原子力防災」より→こちら

▼「特重施設」が対応する事態は,①のような意図的な大型航空機衝突,テロリズムのほかにも,設計基準を超える地震, 設計基準を超える津波も想定されている。

▼「特重施設」の設置が遅れるということは,テロ対策が遅れることだけにとどまらない。マスコミは,テロ対策が遅れることだけを報道しているが,遅れるのは,テロ対策だけではない。設計基準をこえる地震対策や津波対策にも対応できないということになる。

▼マスコミが「テロ対策施設」といっているのは,本当は「特重施設」のこと!!
テロ対策が遅れるだけでなく,設計基準をこえる地震対策や津波への対応もおくれることが隠されてしまっている。関電などの加圧水型原発では,不当に猶予されてきたフィルタ付きベントもさらに遅れてしまう。「特重施設」を「テロ対策施設」と言い換えてしまうマスゴミは,犯罪的だ!

[2]  「特定重大事故等対処施設(特重施設)」とは

▼既存の中央制御室を代替する緊急時制御室や原子炉・原子炉格納容器への注水機能,電源設備通信連絡などのサポート機能を有する施設。「特重施設」は,安全対策のバックアップとして,原子炉格納容器破損防止対策をはかるもの。

▼この「特重施設」については,設置までに工事計画認可から5年の猶予期間が設けられていたが,今回,電力会社が猶予期間に間に合わないと言い出したもの。

[3] 「特重施設」の主要設備

(1) 減圧操作設備…既設の逃がし安全弁を動作させ,原子炉圧力容器内の圧力を減圧する。

(2) 注水設備…専用の水源及びポンプ等を設置し,原子炉圧力容器内及び原子炉格納容器内を冷却するために注水/スプレイする。

(3) 原子炉格納容器過圧破損防止設備(フィルタ付ベント設備)…重大事故等に対処するための設備である第1フィルタ付ベント設備に加え,専用のフィルタ付ベント設備を設置し,放射性物質を低減させながら原子炉格納容器内ガスを排気/減圧する。

(4) 電源設備(発電機)…発電所内の電源がすべて失われた場合にも,減圧操作設備,注水設備,原子炉格納容器過圧破損防止設備(フィルタ付ベント設備)等に必要な電源を供給するための,専用の発電機を設置する。

(5) 緊急時制御室…中央制御室が使用不可能で重大事故等対処設備が機能しない場合に,特重施設の減圧操作設備,注水設備,原子炉格納容器過圧破損防止設備(フィルタ付ベント設備)等の操作ができ,原子炉及び原子炉格納容器内の状態を把握するための各種パラメータの監視ができる制御室を設置する。また,中央制御室及び緊急時対策所等と連絡できる通信連絡設備を設置。

[4] 新規制基準での格納容器フィルタ付きベントの自己矛盾

(以下,この [4] は,守田敏也さんのBlog「明日に向けて」より引用しています)
こちら

▼規制委員会は本来,「テロ対策」ではなくて「重大事故対策」であるフィルターベント設置に,加圧水型原発に限って5年以上の猶予を与えました。 東電などの沸騰水型原発に比べて格納容器が大きくすぐには崩壊には至らないからだなどと説明されていますが,これもまったくの嘘。福島とタイプが違い,西日本に多い加圧水型なら批判は少なかろうと先に動かしたかったから猶予を与えたのです。

▼規制委員会は「新基準によって事故で放出される放射能量は福島の時の100分の1以下になる」と公言し「事故に際しては5キロ以遠は自宅待機した方が安全」などとも言って,原子力防災を抑圧すらしていますが,その新規制基準など適用されてないのです。

▼そもそもベントがあることがおかしい! プラントとして破産しているのだからもう止めるべきだ! ベントは「放射能を閉じ込めるための装置である格納容器を守るために放射能を外に出す」ためのものであって「格納容器の自殺装置」だからです。安全装置とは言えないのです。こんなものが必要な段階でプラントとしてアウトなのです。

[5] 自己矛盾はベントにとどまらない!!

▼「特重施設」には,水素爆発による原子炉格納容器の破損防止機能というものもある。福島第一原発では水素爆発がおこって放射能が拡散したので,それを防ぐためと称する対策。

▼そして,沸騰水型では,格納容器内を窒素ガスにより不活性化することで対応。関電などの加圧水型では,静的水素再結合器およびイグナイタを設置するという。静的水素再結合器とは,電気を使わずに水素を酸素と結合させて水素を取り除く装置。イグナイタとは,点火装置。火をつけて燃やしてしまうというわけだ。大丈夫か,それで。

[6] 電気は足りてる!!

▼たかがお湯を沸かすだけために,こんなグロテスクな設備と,市民を故郷から追い出してしまう避難計画が必須の原発が必要なのか,立ち止まって考えろ! 

▼お湯を沸かす機能だけに特化して設備をみても,原発は火力発電の効率に比べてはるかに劣っている。その上,世界は明らかに再生可能な自然エネルギーの時代。イグナイタで火遊びをしているときじゃないぞ。

[7] 特重施設の代替案

▼新聞でも報道されていたように,関電は,「特重施設」ができなくて,運転を停止させられないように,代替案を提案すると言っている。代替案も,こんな感じのものができている。
 ↓
特定重大事故等対処施設の基本要件と代替対策について
2015年10月30日
日本保全学会 原子力安全規制関連検討会…こちら

▼政府・経団連の意図の下,本当は原発推進の立場にある規制委が,どんな理屈をつけて,代替案を認めるか,みものだな。

▼今度のことで,世の中には「規制委,よくやった」という声もある。それを言うなら,本当に原発の稼働を止めてしまってから言ってくれ。マスゴミとお人好し世論は,軽く見られているよね。

[8] 日本保全学会とは

▼日本保全学会の組織・委員→こちら

▼Wikipediaによると,理事長の宮健三という人は,日本の工学者,工学博士。東京大学名誉教授。日本保全学会理事長。専門分野は原子力工学,保全工学,核融合工学,電磁構造工学。現在は原子力推進の立場から学会を中心に活動をおこなっている。

▼同じくWikipediaによると,理事の奈良林直という人は,2008年7月11日、北海道電力が主催する講演会でプルサーマルの必要性と安全性について講演を行う。2011年4月3日、テレビ朝日の番組サンデースクランブルに出演し、プルトニウムの人体に対する影響について、239プルトニウムを飲み込んだ場合の致死量は32gと主張している。「原子力村」の一員であるとしてSAPIOから批判された。「御用学者」のレッテルを貼られたと語っている。

▼奈良林直という人は,ここにも出ている。
 ↓
八幡浜市「使用済み核燃料貯蔵施設」PA講演会で、賛成派研究者は何を語ったか…こちら

[9] 特重施設の経過

▼特重施設の経過はこうだ。

・2011年3月◆東日本大震災で東京電力福島第一原発事故。
・2013年7月◆新規制基準(安全対策の新基準)を施行。特重施設についてその完成期限は2018年7月と定められた。
・2015年10月◆保全学会が「特重施設の基本要件と代替対策について」「原子力発電所の運転期間と保全活動について」を発表。
・2015年11月◆経過措置として原発ごとに原発本体の工事計画認可を得た日から5年以内の猶予期間を与えられた。規制委の安全審査の長期化を口実に猶予を獲得したか。
・2019年4月◆規制委が特重施設の設置期限をこえたら原発停止と発表。

▼「特定重大事故等対処施設」なんて名前にするから,分かりにくい。略して「特重施設」となると,何の重箱か,みたいで,なお分からない。「シビアアクシデント対処施設」とかすれば良いのにね (^o^)

[10] フィルタベント

Photo_1

▼上は保全学会のWebにあるフィルタベントの図,つまり原子炉の自殺行為の図。こんなことまでして動かすな!
なお,R/Bは原子炉建屋,FVはフィルタベントのこと。
→ 図は,こちら の下の方「7.フィルタベントシステムの構成」

▼原発は「止める,冷やす,閉じ込める」という考え方で安全を確保すると宣伝されてきた。ベントは,閉じ込めないことだから,自殺行為と言わなければならない。

[11] 関電のホームページより

▼関電は,格納容器の破損に至った場合を想定し,発電所外部への放射性物質の放出を抑制するための訓練を実施しています。虹がきれいです。
こちら

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