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2019年2月 9日 (土)

原発の危険性,とりわけ老朽原発の危険性

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 老朽原発の危険性…鋼鉄がもろくなる
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◆原発は事故率が高い装置ですが,老朽化すると,重大事故の確率が急増します。高温,高圧のうえ,長い年月の間,中性子線にさらされた原子炉容器では,鋼鉄がもろくなったり,ひび割れができやすくなっています。圧力容器は交換ができないので,老朽化は深刻です。老朽原発のいくつかの危険性の中で,この「もろくなる」点は深刻です。
◆中性子が当たることによって鋼鉄は,もろくなります。鋼鉄がもろくなるということは,粘り気がなくなり,パリンと割れやすくなることです。300℃ほどのお湯を沸かしていた原子炉に,大きな地震が来て,緊急炉心冷却装置が働くと,高圧で水が注入されます。炉の鋼鉄も温度が下がります。その結果,鋼鉄が割れてしまえば,原子炉が壊れる大事故になります。
◆鋼鉄などの金属がどの程度,もろくなっているかを見る指標が,脆性遷移(ぜいせいせんい)温度です。脆性遷移温度とは,金属がしなやかな性質を失い,もろくなる性質が現れてくる温度です。金属は中性子の照射を受けると脆性遷移温度が上昇するため,原子炉の老朽化の目安とされています。原子炉の中に試験片の鋼材を入れておいて,10年ごとに取り出して,どの程度,もろくなっているか,計測するわけです。
◆脆性遷移温度が高くなると,原子炉の危険度は高まります。脆性遷移温度が高い原発,すなわちとくに危険な原発ワーストテンは,どうなっているでしょう。
(1)位は,高浜1号機…脆性遷移温度99℃。99℃より低温になると,割れやすくなる。
(2)~(5)位は,すでに廃炉(玄海1,美浜2,美浜1,大飯2)
(6)位は,高浜4号機…脆性遷移温度59℃
(7)位は,美浜3号機…脆性遷移温度57℃
(8)~(9)位は,すでに廃炉(敦賀1,福島1)
(10)位は,高浜2号機…脆性遷移温度40℃
つまり,廃炉になった6基の原発を除けば,ワーストテンに残るのは,高浜1号機,2号機,4号機,美浜3号機と,関電の若狭の原発ばかり4基です。高浜1号機は,本年で45年超え,高浜2号機は44年超え,美浜3号機は43年超えの老朽原発ばかりです。6位の高浜4号機は,2017年から再稼働されていて,プルサーマル運転もしています。
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 老朽高浜1号機の危険性…規制委の姿勢
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◆それでは,新規制基準に,脆性遷移温度の規程はあるのでしょうか。当然,あります。そして,その温度は93℃です。華氏200度を換算したので中途半端な数字になっています。このあたりは『原発は事故がなくても危険』(京都・市民放射能測定所 発行)というパンフレットの中の市川章人先生の講演録にくわしく書いてあります。
◆93℃が規程ならば,それでは,高浜1号機の99℃はアウトです。しかし,この基準は守らなくても良いのです。なぜか,この規程の適用はこれからつくる原発だけなのです。あいた口が塞がらないとは,このことです。こんなことで,老朽高浜1号機は,安全と言えるのでしょうか。
◆93℃の規程を適用しないのは,まず,安全無視も甚だしくとうてい承服できない話ですが,それでは,規制委は99℃という脆性遷移温度の安全性は,ちゃんと確かめたのでしょうか。老朽化高浜原発の再稼働に対して,規制委は,元データをちゃんと検証してから運転延長を許可したのでしょうか。
◆老朽原発廃炉名古屋訴訟で明らかになったことですが,関電は規制委に脆性遷移温度に関する元データを提出しておらず,規制委は検証もしていません。関電が「原子炉はまだ大丈夫」としているのに対して,規制委も関電の言うがままです。もちろん,関電は,裁判所にも元データは出そうとしません。
◆さらに,高浜1号機の場合,99℃という脆性遷移温度が,今後,どのように高まっていくのか,予測する必要があります。それを計算するための予測式もあります。しかし,その予測式も問題です。関電は,とにかく,当座のコストだけは安価な原発で儲けたいの一心ですから,その希望に合致する予測式を採用するに決まっているからです。現状の予測式の問題点も指摘されています。
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  老朽原発の危険性…検査にも限界
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◆老朽原発については,検査の限界も指摘されています。原発は巨大かつ複雑です。経年劣化した,金属,機器,配管,ケーブルの検査は,容易ではありません。100万kW級原発の物量は,たいへんなものです。
・ケーブルの長さ…1700km
・溶接個所…65000
・配管…170km,10000トン
・モーター…1300台
・弁…30000台
・ポンプ…360台
◆原発は,こういう巨大なシステムなので,規制委も検査は接近できる範囲のみに容認しています。たとえば,高浜原発のような加圧水型原発の場合,格納容器は「接近できる全検査可能範囲」としています。接近できないところは検査しなくて良いのです。また,接近できるところを検査しても,圧力容器などのひび割れ対策などは困難を極めます。リモートセンシングという超音波検査をしますが,技術者の技量や主観に左右されるのが普通です。
◆このあたりは,『原発はどのように壊れるか 金属の基本から考える』(小岩昌宏・井野博満 著)にくわしく書いてあります。
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 関電,うそつくな
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◆関電は,なぜ40年超え原発を動かすか,その理由を次のように言っています。日本は資源が乏しいからで,原子力は三つのE,
①エネルギー的に優れている,
②経済性がある,
③環境に良い,
という理由だそうです。
◆毎週金曜の17~19時の間,関電京都支店前で脱原発をアピールしています。そのキンカンコールに,「関電,うそつくな」というのもありますが,この三つのEは,白を黒という虚偽も甚だしく,反論する気力も失せてしまいそうです。
◆しかし,僕らは原発をやめたい。なぜ,原発廃炉かというと,日本は自然エネルギーに恵まれているのに,原子力は三つのK,環境に悪い,経済性がない,国土崩壊の可能性がある,からです。すなわち,
①原発は環境に悪い。危険な核のゴミの捨て場がありません。
②原発は経済性がない。安全対策や事故の備えのために,原発の発電単価は上がる一方です。当然備えるべき賠償金も,ちゃんと保全していません。
③原発は国土を崩壊させます。福島事故のように,住民の生活を根こそぎ奪う事故が心配です。フクシマのような事態を,日本のどこでも二度と起こしてはならないのです。
◆福島第一原発の事故の後,その多大な犠牲のうえに,原発の寿命として40年ルールを決めました。これが原則で,延ばすのは例外中の例外と,国会で言っていました。ところが現状はどうでしょうか。電力会社が40年を超えて運転したいと言えば,ろくな審査もせずに,申請は全部通すのが当たり前になっています。これが,現状です。規制委は推進委になっているわけです。原発の危険性,とりわけ老朽原発の危険性は,声を大にして言い続けていく必要があります。

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