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2009年12月29日 (火)

『〈民主〉と〈愛国〉』

2002-11
新曜社 小熊 英二 著

(以下,ユニオンSNS「なかまネット」の「レビュー」への書きこみに加筆訂正)

副題は,戦後日本のナショナリズムと公共性。同じ著者の『1968』(上,下)に続いて図書館で借りる。この本も1000ページ近くて,6300円+税だから,ちょっと手が出ない。
何せ,大部なので,

第1章 モラルの焦土--戦争と社会状況
第2章 総力戦と民主主義--丸山眞男・大塚久雄
第3章 忠誠と反逆--敗戦直後の天皇制
第5章 左翼の「民族」,保守の「個人」--共産党・保守系知識人
第8章 国民的歴史学運動--石母田正・井上清・網野喜彦ほか
第13章 大衆社会とナショナリズム--1960年代と全共闘
第16章 死者の越境--鶴見俊輔・小田実

といったあたりを読んで,結論へすすんだ。民主主義,戦後民主主義,市民,ナショナリズム,愛国,民族,などの言葉が,時代や人によって様々に使用されて,実態が変化していくさまを丁寧に検証している。時代を表す言葉が見つからないとき,代わりに使われていた言葉がもつ意味をさぐっている。お互いに使っている用語の意味,認識が違うままに行われる議論が多くて,一人相撲の終わっている例が多いので,議論の基礎となる認識を確かにしたいというのが,この本の目的となっている。

そのために,おもに戦後の知識人をめぐって検証がすすんでいる。竹内好,吉本隆明,江藤淳らもそれぞれの章でとりあげられている。戦争と敗戦の状況から始めることによって,戦後日本の思想史の流れが分かるし,言葉が見つけられていないという状況にも,結構,豊富な言葉の鉱脈があるわけで,戦後と現代を考える糧になるはず,というのが,著者の意図だろう。僕自身は,一部分ながら自分が生きてきた時代の社会思想を確認できたように思った。

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