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2009年11月21日 (土)

地理の編集者のために ■ [5]

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高校地理,中学地理,小学5年など
「地理」の学習参考書の編集者のために

[5] 日本地理
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(01)新しい地理情報のキャッチ

 ①新聞,雑誌などで新しい地理情報を仕入れることは,
  編集上,ひじょうに大切。

 ・くわしい解説,めずらしい地図や図解が載っていたら,切り抜いておく。
 ・切り抜きは,封筒に入れて,保存しておく。
 ・その際,いつも必ずA4の紙にコピーして,コピーの方を保存しておけば,
  サイズが統一され,整理しやすいし,探しやすくなる。

 ・日本地理に限らず,世界地理でもまったく同様。

 ②新しい情報は,新聞記事だけで先走らないこと。裏付けをとること。
 ・新しいことは,ついつい早く入れたくなってしまう。←自戒
 ・参考書に取り入れるときは,必ず確定してから,訂正すること。

 ・ノルウェーでは1972年と1994年の2度,EUへの加盟に関する国民投票があり,
  二度とも否決されている。政府の方針だけでは,決定には至らない。
 ・国際機関の加盟国は,手続きが正式に終わって,確定してから。
  新聞は見通しだけ書いて,正式決定は書かないことが多い。
 ・政令指定都市などの指定の場合,その市に直接,問い合わせたい。

 ③新しい教科書は,部分改訂の場合でも,必ずすべて目を通して,
 ・用語などの記述の変更,新しい用語,新しい解説傾向などをチェックする。

 ④新しい地理情報は,自分専用の「書き込み参考書」に書き込んでいく。

 ・「書き込み参考書」…くわしい参考書『理解しやすい地理B』などの1冊を
  自分の書き込み専用の参考書として常に机上において,
  解説文の該当個所に,新しい情報を書き込んでいったり,
  ページの間にコピーを貼り込んでいく。
  のりは半永久的だが,セロテープは数年ではがれてしまう。

 ・「書き込み参考書」にしておけば,自然と内容の分類ができるので,
  後日,求める情報を探し出しやすい。
  ノートにすると,どこに書いたのか分からなくなってしまうので。

(02)要注意の地名

 ①~(しま,じま,とう),~(やま,さん,ざん)は,必ず区別する。
 ・『理科年表』で調べる。
 ・~(かわ,がわ)の場合は,音韻だけでどちらでもよい場合も多いが,
  豊川(とよがわ)用水などのような場合もある。

 ②~(むら,そん),~(まち,ちょう)もきちんと区別する。
 ・村と町は,ごくまれに両方可というところもある
  (学習参考書に出てくるような地名では,該当はない)。
 ・『日本市区町村総攬』(加除式)で調べる。Wikipediaもくわしい。

 ③紛らわしい地名
 ・有田(ありた)焼と有田(ありだ)川。
 ・佐田(さだ)岬と佐多(さた)岬。
 ・男鹿(おが)半島と牡鹿(おしか)半島。

 ④とくに読みに注意
 ・栃木(とちぎ)県と茨城(いばらき)県と茨木(いばらき)市。
 ・伊勢崎(いせさき),松阪(まつさか),豊川(とよがわ)用水など。

(03)市町村合併

 ①石油備蓄基地がある「鹿児島県喜入」など,市町村合併に注意する。
  元は鹿児島県揖宿郡喜入町であったが,
  現在は合併で鹿児島県鹿児島市喜入中名町。
  「鹿児島県喜入」→「鹿児島市」。
 ②福岡県,自動車工業。宮田町→若宮市。
 ③瀬戸内工業地域。小野田→山陽小野田,徳山→周南。
 ④中京工業地帯。愛知県尾西市→一宮。
 ⑤東海工業地域。清水→静岡,蒲原→静岡。
 ⑥伝統工業のこけし。宮城県鳴子町→大崎市。
  「鳴子温泉のこけし」などと表記する手もある。
 ⑦伝統工業の人形。埼玉県岩槻市→さいたま市岩槻区。
 ⑧伝統工業の九谷焼。石川県寺井町→能美市
 ⑨湯布院町は由布市になったが,湯布院町の地名は大字に残っている。
  温泉名は以前より「由布院」で,町名が「湯布院」であった。
 ⑩米原町(まい「は」らちょう)は,米原市(まい「ば」らし)になった。
  ただし,駅名は昔から,米原(まい「ば」ら)。

(04)フォッサマグナ

 解説を正確にするため,次の三点に注意。

 ・糸魚川‐静岡構造線は,西縁であること。
  (東側は火山活動で不明確)
 ・所により幅100km以上にもなる広いくぼ地であること。
  (地形上のくぼ地があった)
 ・現在は新しい土砂でうまっていること。
  (くぼ地といっても,現在はへこんでいない)

(05)地形図

 ①地形図を使用する場合,昔は国土地理院にいちいち許諾を求めていたが,
 ・現在,学習参考書では,許諾は不要とされている。

 ②地形図も改訂されるので,新しいものを買いたい。

 ③地形図は,専門の地図店だと,日本のすべての地域の地形図を,
 即座に出してくれる。

 ④大きな書店には地形図もおいてあるが,
 ・図幅は自分でさがす必要があるし
  (図幅名が分かっていないと探せないし),
 ・全部の図幅がちゃんと揃っているかどうかも,分からない。

 ⑤デジタルデータがWeb上で得られるようになっているみたいだから,要研究。
 ・数値地図も要研究。

(06)地形図の縮尺に関連して

 ①地図上では5cmの「長さ」,実際の「距離」は5km,という表記をする。
 ・習慣的に地図→「長さ」,実際→「距離」と使い分ける。

 ②公式は,「実際の距離×縮尺=地図上の長さ」という感じ。

(07)鹿島臨海工業地域

 ①鹿嶋市にある。ただし,神栖市にもまたがっている。
 ②海には,鹿島灘。

(08)東京

 ①昔の東京市は,今の23区にあたると考えられる。
 ・現在の23区は,それぞれが特別区。
 ・区は,市に準じ一つ一つが独立の地方公共団体。

 ②単に東京という場合は,
 ・東京駅であったり,
 ・23区全体をさしていることが多い。

 ③統計などでは,
  東京都の23区を「東京」という一つの都市として扱う場合もある。

 ④東京都の23区を総称して東京といい,
  東京都の都庁所在地として認識される場合もあるが,
 ・条例上の正式の都庁所在地は,新宿区(東京都新宿区西新宿二丁目)。

 ⑤日本の首都は,「東京」とする。
  この東京がどこを指すのか,少しあいまい。

(09)輪中

 ①濃尾平野西部の低湿地に広い。県としては,愛知県より,
  岐阜県の方に多くある。
  したがって,解説としては,愛知県よりも,岐阜県でしたほうがよい。

 ②江戸時代から,美濃よりも御三家尾張の方の堤防を高くつくったので,
  洪水は岐阜県側で発生。

(10)ミニマム・アクセス米の誤解

 ①ミニマム・アクセス米については,
  よく全量輸入が義務づけられているという説明がある。
  この点で,Wikipedia では,次のように解説している。

[以下,引用]
ウルグアイ・ラウンド農業協定そのものは,ミニマム・アクセス枠全量の輸入を義務付けているわけではない。(中略)日本政府は一貫して,対外的な義務であるとの言質を与えないように官僚的な配慮を行いつつ,全量輸入が義務であるかのような印象を与える説明を続けている。これを受けて日本国民の間には,これが義務であるとする誤解が広まっており,マスコミの報道においても,時に「日本はコメを一定量,輸入する義務がある」などの表現が見られる。
[ここまで,引用]

 ②これは,妥当な解説。
  自民党政府として全量輸入の政策をとってきただけで,
  政策は政府が変われば変わる可能性がある。
  また,国会論議でも,
  同様にミニマム・アクセス米の合意によって輸入をしている韓国が,
  全量を輸入義務としていないことが,明らかにされている。

 ③というわけで,読者に誤解を与えないように,正確に書いたほうが良い。

(11)テクノポリス

 ①1983年の高度技術工業集積地域開発促進法(テクノポリス法)
  (1983年)によって制度化。
  全国26の地域が指定。
 ②テクノポリス法は新事業創出促進法(1998年)の制定とともに廃止され,
 ③テクノポリス計画については経過措置によって
  引き継ぎ一定期間有効となった…有効期間不明。
 ④新事業創出促進法は,中小企業新事業活動促進法に統合された(2005年)。
 ⑤中小企業新事業活動促進法には,
  「高度技術工業集積地域」「テクノポリス」などの語句はない。
  「財団法人○○地域テクノポリス推進機構」が活動している地域がある
   →郡山,浜松など。

(12)総合保養地域整備法(リゾート法)

 ①1987年に制定。批判が多い。成果としては,とくに見るべきものがなく,
 ②宮崎県の開発の目玉であった
  シーガイア(法による指定第1号)の破綻はその典型例。
 ③また,開発予定企業の撤退等による跡地の処分問題など,
  各地にその爪あとを残した。
 ④法律は存続しているが,
  各県の「リゾート構想」が廃止される例が増えている。

(13)漁港と市名

 ①鳥取県の「境」(さかい)は,漁港の名称。
  「境漁港」(さかいぎょこう)とも表記。
  「境港」(さかいみなと)市にあるので,
  「境港」(さかいこう)では紛らわしい。

 ②神奈川県の三崎(みさき)は,漁港。三浦市にある。

(14)標準時子午線

 ①兵庫県明石市には,日本の標準時子午線である東経135度線がとおっている。

 ②東経135度線は,兵庫県明石市以外にも,いくつかの市をとおっている。
  東経135度線は,明石市だけしか通っていないように読める解説は,不適切。

(15)家電リサイクル法

 ①従来のテレビ,冷蔵庫,洗濯機,エアコンの4品目のほかに,
 ②2009年から,薄型テレビ(液晶テレビ,プラズマテレビ)と
  衣類乾燥機が追加された。

(16)ラムサール条約

 ①2005年に20か所追加。合計33となる。

 ②2008年に4か所追加。合計37となる。
  「化女沼」(けじょぬま)…宮城県。
  「大山上池・下池」(おおやまかみいけしもいけ)…山形県。
  「瓢湖」(ひょうこ)…新潟県。
  「久米島(くめじま)の渓流・湿地」…沖縄県

 ③地図…環境省のWebに,くわしい地図がある。  

(17)世界遺産条約

 最近,指定されたもの。

 ①「紀伊山地の霊場と参詣道」…2004年。12番目。
 ・奈良,和歌山,三重県の3県にまたがる。
 ・霊場,参詣道の内容が分かりにくい。

  全部を説明することはないのですが,内容をつかんだ上で解説したい。
   ・霊場とは…次の三つ。
    1)吉野・大峯(修験道)
    2)熊野三山(神仏習合の熊野信仰)
    3)高野山(真言密教)

   ・参詣道とは…上記の三霊場をむすぶ三つの参詣道。
    1)大峯奥駈道(おくがけみち)
    2)熊野参詣道
     (中辺路=なかへち,小辺路=こへぢ,大辺路=おおへち,
      伊勢路=いせじ)
    3)高野山町石道(こうやさんちょういしみち)
   ・くわしい地図は,こちらへ。

 ②「知床」…2005年指定の自然遺産。13番目。北海道。
  陸地の知床半島だけでなく,沿岸海域をふくむ豊かな生態系が評価された。

 ③「石見銀山遺跡とその文化的景観」…2007年。14番目。島根県。
  銀山跡だけでなく,森林の保全など,環境面が評価された。

 ④ 暫定リスト
  …今後の指定は,このリストの中から。(2009年6月現在,12ある)
  「平泉-浄土思想を基調とする文化的景観」(岩手県)
     2008年に,世界遺産委員会で登録延期の決議。
  「国立西洋美術館本館」(東京都)
     6か国にわたる「ル・コルビュジエの建築と都市計画」の一部。
     2009年に,世界遺産委員会で情報照会の決議→2010年に再審査。

  「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県)
  「彦根城」(滋賀県)
  「富士山」(山梨、静岡県)
  「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)
  「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」(奈良県)
  「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎県)
  「小笠原諸島」…これは自然遺産。(東京都)
  「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」
   (北海道、青森、岩手、秋田各県)
  「九州・山口の近代化産業遺産群」
   (福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、山口県)
  「宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)

  今後,暫定リストに入る予定。環境省が決定する。
  「琉球諸島」…これは自然遺産。
  「金と銀の島,佐渡-鉱山とその文化-」
    (「石見銀山遺跡とその文化的景観」との統合?)
  「百舌鳥・古市古墳群-仁徳陵古墳をはじめとする巨大古墳群-」
    (もず,ふるいち)
  「達谷窟 ・白鳥舘遺跡・長者ヶ原廃寺跡・骨寺村荘園遺跡・接待館遺跡」
    (たっこくのいわや,しらとりたて,ちょうじゃがはら,
     ほんでらむら)
(「平泉-浄土思想を基調とする文化的景観」登録後の追加登録?)

以下,
[6] 世界地理
へ続く。

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