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2009年2月23日 (月)

裁判員制度のこと

 出版労連の臨時大会(2009.2.13)に,大会資料として「裁判員制度に関わる労働条件整備に関して(交渉メモ)」という大会資料が配付されました。出版労連の統一要求基準とともに,労使協定の締結に向けての考え方を示したものです。

[1] 裁判員制度そのものについて

 僕自身について言うならば,“現行の”裁判員に課される出頭義務,守秘義務は,憲法に書いてある国民の義務(納税,勤労,子に教育をうけさせること)とは無縁で,苦役を強制するものだと感じられる。苦役かどうか,それは,当人のそれぞれの感じ方の問題であって,当人がそう感じているのに,他人が,それは苦役ではない(その感じ方はおかしい)と言うことはできない。“感じる”ということは,外形的な事実ではなくて,内面の問題であって,内面の問題を強制することはできないと思う。

 政党のビラ配布で起訴された事件とか,オリコン訴訟,大江岩波裁判,教科書訴訟など,言論・出版・表現の自由に関する事件なら,“市民がもつ日常感覚や常識”をいかして,僕もぜひ参加したいと思う(苦役とは感じない)。多くの行政訴訟にも,参加してみたい。M9クラスの超巨大地震がいつおこっても不思議ではない御前崎にある浜岡原発について,「具体的危険があると認められない」と判断するような裁判が,“市民がもつ日常感覚や常識”と合致しているとはとうてい思えない。しかし,そういう事件は,そもそも裁判員制度の対象になっていない。

 裁判員制度が対象とするのは,殺人,傷害致死,強盗致死傷,放火,身代金目的誘拐などの犯罪だ。そんな事件には,僕はまったく興味がない。そんな事件の中味をこと細かに見させられて,有罪か無罪かなんてことを考えさせられるのは,まさしく苦役だ。そんな司法には,“参加”したくない。

 むりやりカタロニア語の勉強をさせられて,試験に合格しないと,罰金だといわれるに等しい。カタロニア語なんかに,何の意味があるのか。いっさい御免こうむりたい。重大な刑事事件なんかは,裁判官の本来業務じゃないか。身分や相当額の報酬が憲法の条文で保障された裁判官が判断すればよろしい。

 また,国民が裁判員制度を問題にする裁判をおこして,意味のある裁判が行われるだろうか。最高裁判所が推進した制度で,国会が法を決めて実施されているわけで,最高裁判所が裁判員制度を違憲とする判決を出すはずがない。結局,国会で法を廃止する以外に,異議を申し立てることができない(裁判所の違憲立法審査権に期待することが不可能である)という,ある意味で,他に例のない強制力もつ制度になっているのではないだろうか。

 現状の裁判員制度は,司法権と行政権が結びついて,国民の司法参加を“殺人,放火,誘拐”に限定してしまって,その結果,苦役を強いていると思う。「司法参加の自由(参加しない自由,事件選択の自由)」を前提にしていないから,強制と苦役を,美名(市民がもつ日常感覚や常識を生かす,国民の司法参加)でおおい隠す制度になっていると思う。

[2] 労働組合運動と裁判員制度

 労働組合が,裁判員制度の基本的な問題に立ち入らずに,この制度が存在していることを前提にして,各企業で経営者に要求を出すのは,考え直した方がよいのでは。まず,基本的な問題点を確認すべきではないだろうか。

 裁判員制度によって労働者が不利益をこうむることもあるのは確かだが,それは,自営業者でも農民でも同じだ。労働組合に加入している労働者は,自分の経営者に要求を出すというのならば,その前に,多くの非組織労働者,自営業者,農民などと共同して,問題点を追及するような運動を(そういう運動が,現在の経済社会情勢の中でどれくらいの重要度があるかを含めて)考えたほうがよいのでは。

 以上の二点は,組織された労働者(とくに産別組合や,労働組合のナショナル・センター,ローカル・センター)の社会的責任ではないだろうか。

 組織労働者が不利益をこうむる場合があるからといって,各企業別組合が,今すぐに,裁判員に関する要求を経営者に出して解決を図らなければならないのだろうか。09春闘要求で,すぐに考えて,交渉しなければならないような問題点がどこにあるのか,はたして存在するのか,ちょっと想像できない。「職場での要求にもとづいて」とよく言われるが,裁判員に関する要求が,職場で大きな課題になっているのだろうか。

 企業内での組織率が高くて交渉力が大きい労働組合が,とるべき要求がなくなって,新しい“課題”にとりくんでいくのは,ある面で当然の成り行きだろうが,その成り行きがどんどん進んでいくとどうなるか。その先にある問題を考える必要があると思います。何でも職場で経営者に要求していくのではなくて,要求を出すべき相手を考え,労働組合の外側の様子もよく見て考えるという,社会的な視点がほしい。そして,多くの国民(労働組合なんだから,とりわけ多くの非組織労働者)の利益になるような方向を探っていくようにしたほうがよいと思うのだが。

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