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2009年1月15日 (木)

SNS 「なかまネット」 より転載--2009/年初

2009/年初,失業,ワークシェアリング,生活危機突破

■■■■■2009.1.4.■■■■■

可視化された失業

 この年末年始は,異常なニュースが日常のお正月風景を吹き飛ばしてしまったように感じました。新聞のない二日も,ネットでニュースを追いました。日比谷公園の年越し派遣村です。これは,歴史的な事件として後世に記録されると思います。そして,ユニオンなどの出版労連組合員もボランティアとして足を運んでいる事実は,自分は実際には行っていなくても,多くの組合員を励まし,労働組合員としての誇りを呼び覚ますものです。このなかまネットでも参加された方の報告がのっていて,ひじょうにうれしく思いました。

 12月末の関西の春闘討論集会で,平川書記長が「自分たちの雇用の維持のために,派遣切りを要求する労働組合がある」と憤慨してみえました。出版労連ではありませんが。しかし,私たちを含む労働運動では,こういう深刻なマイナス面もあります。

 派遣切りを要求,正社員のリストラ解雇には無抵抗,ワークシェアリングには無理解,結局残った正社員の利益確保に向かうような労働組合では,社会的な存在価値はありません。

 今,労働組合や組合員に求められているのは,

(1) まず,派遣法などの労働法制の改正,すでにある労働法規の遵守などがあります。政府や企業に対する要求と運動,違法な働かせ方の追及は,第一です。三六協定の遵守,無制限の時間外労働をもたらす特別条項の廃止などを求めるべきです。長時間過密な時間外労働の縮小は,重要な課題だと思います。

(2) そして,有給休暇の取得など労働者一人一人の権利行使も求められるでしょう。政府や企業に対する要求は当然ですが,労働者自身も,人間らしい生活と労働を実現していくために,積極的な権利行使などで,職場で闘っていくような運動,闘えるような労働組合や支え合いをつくっていく必要があると思います。

(3) 労働相談の体制を広くつくっていくことが,ひき続き重要になっていくでしょう。解雇,倒産,そこに至るまでの諸問題の解決がとくに求められると思われます。

(4) そして,これからの課題としてワークシェアリング,全国最低賃金制(時給1000円へ)などの検討や提起にあると思います。

 連合傘下の「全国コミュニティ・ユニオン連合会」(全国ユニオン=組合員数約3300人,鴨桃代会長)が12月に09年の春闘方針をまとめています。相次ぐ「派遣切り」など非正社員の人員削減に対抗するため,正社員と非正社員の共生をめざす「緊急ワークシェアリング」をかかげ,「正社員の賃上げ原資を非正社員の雇用確保に充当する」ことを求めていくという内容です。
 具体的には,賃上げ原資3%相当額の確保を企業側に求めた上で,その原資を非正社員の雇用確保に充てるとのことです。業務の減少に対して,政府の雇用調整助成金などを活用して休業補償をきちんとした上で正社員を一時的に休ませ,その間は,契約解除や解雇と同時に住居を失いかねない非正社員が働くという形のワークシェアリングです。

 出版労連の場合,ワークシェアリングは組織的な検討が行われていません。また,最低賃金については,どうしても東京出版産別最賃と企業内最賃になってしまっています。地域別,産別,企業別と範囲が限られていて,目を広げる方向が見つけにくくなっています。

 産別や地域別なら大阪府,京都府,千葉県などはどうなんだ,企業内最賃の実現と実効性はどうなんだ,全国最賃を闘うにはどうしたらよいのか,こうした議論をどのように広げていったらいいのか,そこからの出発ですから,やや道遠しの感もいなめません。

 しかし,これからの一年はワークシェアリング,全国最低賃金制などの検討が実際に求められるようになると思います。「可視化」ということばがあります。抽象的な言葉が何を意味するのか,頭では分かっていても,目でみえるようにすることが,社会運動ではひじょうに大事だという意味す。年越し派遣村は,貧困,格差,失業といった事態をみごとに可視化したわけです。もはや,それを見ない,見えないことにして済ませることが許されなくなっています。許されないのは,政府,厚生労働省だけではありません。私たち労働組合も,既にまざまざと見させられてしまったのですから,逃れることができなくなったと思います。

 09年の始まりが,労働組合を含めた社会運動の新たな前進の始まりになる予感がします。

■■■■■2009.1.6.■■■■■

ちょっと夢みたいなこと

 高度経済成長の時期のように,社会全体に仕事が増えていくときは,雇用は拡大するので,労働者や労働組合の関心の中心は,賃金など労働条件でした。

 ところが,低成長の時期や不況の時期のように,社会全体に仕事が減っていくときは,雇用は縮小するので,労働条件とともに雇用の維持が重要な課題となります。そして,失業が拡大しないようにするには,どうしたらよいのか,検討が必要となり,その一つの手だてとして,ワークシェアリングへの関心が高まっていきます。

 ある企業で,派遣社員が解雇されたとすると,企業別労働組合は,どう対処することになるでしょうか。
①派遣切りに賛成するか,
②解雇を黙認するか,
③解雇反対で支援するか,
④解雇反対で自らの組合に迎えるか,
などいろいろな選択肢があります。経営者に対して,派遣社員の解雇反対を主張するのは,労働組合として最低限の仁義でしょう。

 派遣切りに賛成する,推進する,黙認するというのは,労働組合として論外ですから,そういう対応を批判することは容易です。しかし,現実にはこれすら,よくよく議論しないと意思統一が難しいかもしれません。悲しいことですが。

 それはそれとして,労働組合が解雇反対をかかげて経営側と闘うことは必要ですが,それだけで十分でしょうか。もう一つ,踏み込んだ選択肢があると思います。
⑤正社員の組合員の賃金を下げてでも,その派遣社員の雇用を維持する
という検討や提案は,できないのでしょうか。

 解雇された派遣社員が闘う決意をかためたとき,ユニオンなどの個人加盟労組に加盟することになるでしょう。企業別組合の場合は,加入資格の問題などから,派遣社員がすぐに加盟することにはなりにくいと思われます。

 解雇された労働者が別組合に属するような場合でも,その企業別労働組合が,解雇問題の解決のために上の⑤案を考えることにはならないでしょうか。あるいは,ユニオンなり支援共闘会議などが企業別組合に対して⑤案を提起することはありえないでしょうか。正社員の組合員の賃金をどれくらい下げたらよいか,それは,その企業別組合内の議論と,経営側との交渉によると思いますが。

 連帯ということで,裁判闘争や経営に要求する運動をともに闘うことはむろんのことですが,同じ職場の労働者なら「自分の身を削ってでもともに生きるのだ」という決意の表明は,できないでしょうか。そういう意思表明とともに経営側と交渉したらどうでしょうか。

 こういう形のワークシェアリングは,現実としては困難な課題かもしれませんが,解雇争議がひじょうに煮詰まってきて最終的な決断も迫られるような段階では,せめて一度,「ともに生きる」手だてとして検討できないでしょうか。

 ユニオン組合員の現実の争議も念頭におきながら,ちょっと夢みたいなことを考えました

 *****1.7.自己コメント*****

 雇用を維持するため,所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の減額(所定内労働時間短縮相当の賃金削減)をともなうワークシェアリングは,緊急避難的なものとして,一般的に想定されています。しかし,ワークシェアリングについて,賃金の減少をともなう形態だけを議論していくのは,適当ではないかもしれません。いずれは踏み込むことになるのですが。

 ワークシェアリングには,緊急避難的なもののほかにも,いろいろな考え方,形態がありますので,広く勉強していく必要があると思われます。総合的に考えていきましょう。以下は,ちょっと古いのですが,その一つの材料です。

ワークシェアリングに関する調査研究報告書(2001年,厚生労働省)
http://www-bm.mhlw.go.jp/houdou/0104/h0426-4.html

 *****1.11.自己コメント*****

 財界が急にワークシェアリングのことを言い出したのは,不利な形勢を何とかしたいという,戦略的な思いなんでしょうね。「ワークシェアリングには,緊急避難的なもののほかにも,いろいろな考え方,形態がありますので,広く勉強していく必要がある」,ということを,この項の結論にしたいと思います。

 力のない側の節制や倫理は,力のある側の強欲の前には無力そうですね。さしあたって,力関係をくつがえしていくようなたたかいが必要である。ここは間違いないと思います。

■■■■■2009.1.7.■■■■■

生活危機突破

出版労連・中央執行委員会 御中

 生活危機突破という方針について,意見を述べたいと思います。

 出版労連の中でも,統一要求などで,企業別交渉の中で,「取れるものはどこまでも取っていく」ような闘争を見ることがありました。しかし,現在では,賃金にしろ,労働条件にしろ,取れるものは取れるだけ取っていくこと(つまり,あくなき共益性の追求)ではなくて,社会的に信頼,支持される運動(つまり,広い公益性の追求)が大事だと思います。

 もっとも,現在のような経済情勢では,とても取れるだけ取るという状況ではなくなっていますから,問題は小さくなっているかもしれません。

 しかし,労連の09春闘の「生活危機突破」というスローガンは,企業内交渉で取れるだけ取るという方向性で協調されるのではないかと,それがひじょうに心配です。

 「生活危機突破」と言い方では,正社員中心の企業別組合にとっては,自分の職場の経営者に要求することだけの春闘になってしまいそうだからです。これまでの延長線上です。格差,貧困,失業をみごとに「可視化」したあの「年越し派遣村」を見てしまった私たちにとっては,これまでの運動の延長しか見いだしえない春闘ではまずい時代になっているはずです。

 「生活危機突破」というスローガンには,企業別交渉に終始する,これまでの運動の方向性を転換,是正する契機が見られません。

 「生活危機突破」では,組織率が高く闘争力の強い組合が,経営者に生活改善を訴え,要求にこだわってねばり強く交渉し,一定の賃上げとか一時金を獲得していって(それはそれで共益性の発揮という意味で組織的にはひじょうに落ち着きやすいので),そこまでで春闘がお終いになるような強い予感がします。

 社会的な視野がない企業内交渉で生活危機を突破できるのは,その企業内の労働者だけです。多くの中小零細単組や個人加盟ユニオン,ネッツの組合員は,何ら成果がないまま置いてきぼりになるような結果が予想されます。ましてや,組織外の労働者の貧困に関与することはできません。学習会を開いたり,講演を聞くのも,それはそれで大事だとは思います。しかし,運動が始まらないのでは,多くの労働者の生活危機は突破できません。

 富める者が富めば,貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)するという経済論が,高額所得者の所得税減税,法人税減税などに適用されてきました。そして,そうした結果がどうであったかといえば,富は上にせき止められて,下々にはちっとも浸透してこなかったという事実であり,これまで私たちが目にしてきたところです。

 経済全体のパイが拡大すれば,低所得層に対する配分も改善するとか,企業の業績が向上すれば,労働者の賃金もアップして生活が向上するとか,すべてトリクルダウンのみせかけです。

 組織率が高く闘争力の強い企業別大単組が労働条件の向上を獲得していけば,中小零細単組でも頑張り次第では,それが波及してくる効果があるというのも,今や一種のみせかけのトリクルダウンです。昔は確かにそうだったのですが,今は全然違うと思います。京都で文英堂労組と中央図書労組が単組からユニオンに移行したさいも,こうした話し合いをしました。企業別でない,新しい運動が必要だと。

 では,当面の09春闘は,どうしたらよいのでしょうか。

 賃金にしろ,仕事にしろ,組織力量にしろ,「持てる者」はとくに,その資源をどのように使うか,使い方には社会的な要請,つまり公益的な要請があると思います。出版労連では,「持てる者」の側にたっている労働者,労働組合も少なくないと思います。出版労連自体も,大きな社会的な地位を持っています。賃金水準の高い労働者,自由に残業ができる労働者,組織率が高く闘争力の強い労働組合が,その持てる資源を,率先して労働者と労働組合の公益的な利益を実現する方向に使い,労連全体としても,格差と貧困の問題に対して公益性を発揮していくようになる方針と運動が今,求められていると思います。

 メインにすべきスローガンは,「突破しよう生活の危機」ではなくて,
「ふみだそう貧困と格差の是正」,
「めざそう等しく豊かな社会」,
「つくろう助けあい支えあう連帯」などではないでしょうか。

 このようなスローガンによって,非正規,不安定雇用労働者の貧困と困難な生活にも目が向くような春闘にしていく必要があると思います。春闘要求を出すような状況にない大多数のユニオン組合員,要求を出す経営者がいるわけではないネッツ組合員,そして,現実に倒産や失業に直面している労働者と手をつなぎあえるような,そんな09春闘をめざしたいものです。

 出版産業の中に存在する失業,貧困にどう対処していくのか。
 出版産業の中の倒産,失業といった事態をどう「可視可」して社会に訴えていったらよいのか。
 そうした個別の問題を各労働者の自己責任に終わらせない運動をどう展望したらよいのか。
 お互いに支えあって生きていく社会をつくるにはどうしたらのか。

 こうした課題は,出版労連とともにユニオン自体の本来的な課題でもあるのですが,残念ながらユニオンとしてはまだ,こうした方針を議論して立案していくには力量が足りません。そして,今後の労働運動の方向を見るならば,労連全体として議論し,そして中執として集約していくのにふさわしいテーマだと思います。

 09春闘は,企業内の賃金交渉(狭い範囲の共益性の追求)をのりこえて,格差と貧困の問題に対して公益性のあるメッセージと運動を提起していくときです。そうした中でこそ,労働組合,出版産別の存在意義が発揮されると思います。

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