カテゴリー「08-Union」の記事

2008年10月 7日 (火)

ネットUPプログラム

「全京都印刷・出版関連労働者ネットワーク」(京都印刷・出版ネット)への提案(10/27)……検討中。

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京都印刷・出版ネットUPプログラム,「ネットUPプログラム」について
[素案]
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■「ネットUPプログラム」とは

 京都印刷・出版ネットは,そもそも全印総連と出版労連の組織統一という契機を持っています。中央レベルでは,組織統一が頓挫したのですが,京都では,根っこが残っているわけです。そういう意味で,この京都印刷・出版ネットに対しては,構成メンバーの間では,とくにたいせつに育てていきたいという強い思いが共有されています。

 全印総連と出版労連に二重加盟している企業別組合もいくつかありますが(岩波書店労組,新興出版啓林館労組など),そういう所における成果や魅力は見えていませんし,将来の展望も聞こえてきません。運動が,各職場ごとの賃上げ,一時金闘争の交流程度にとどまっているのではないでしょうか。職場改善運動の交流の意義を否定するものではありませんが,そこを中心にしていては,産別どうしの共闘,組織統一につながる新しい運動の構築には発展しないと思われます。

 組織統一した将来の大産別組織「印刷出版労連」ならば,こういう運動ができるという「運動のミニチュア版」を京都でつくり,実地検証をすすめ,京都印刷・出版ネットを新しい大産別運動のモデルとして成長させていきたいものです。

 そのために,各職場ごとの賃上げ,一時金の闘争にとどまらない「社会的な運動」の検討,提起,推進をはかっていってはどうでしょうか。労働組合が社会的な責任を果たし,それをアピールすべきときが来ている社会状況とも,マッチすると思います。

 「社会的な運動」とは,言いかえれば,
職場内,組織内にとどまらず,広く社会全体の利益を図っていく「公益的な運動」という意味です。
職場内,組織内の利益を図っていく「共益的な運動」にとどまることなく,
職場外,組織外の労働者の間に広がる無法,無権利状態の問題を自らのものにしていく運動をつくっていきたいものです。

 社会的,公益的な運動を,京都印刷・出版ネットのこれからの大きな課題にすえて,その存在感と力量のアップを図っていきたいものです。

 いくら大言壮語をかかげても,京都印刷・出版ネットの実態は,京都というローカルな地域の運動体ですから,全力を出せたとしても,せいぜいミニチュア版の運動くらいしかできないかもしれません。しかし,将来の方向をめざした取り組みは,少しずつでも進めたいものです。

 以上のような展望の下,これからの京都印刷・出版ネットの存在感と力量のアップのために,広くプランを募集し,運動を広げましょう。多くの組合員の気持ちにマッチし,積極的な参加がえられるようなプランが求められています。それらを,「京都印刷・出版ネットUPプログラム」(略して「ネットUPプログラム」)として推進しましょう。

 以下は,ネットUPプログラムの具体化とその例です。
議論の素材になれば幸いです。
現状で可能なことから,具体化していきましょう。

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■ネットUPプログラムの具体化

(1) ネットUPプログラムにふさわしい課題を検討する。

(2) それぞれの「課題グループ」をつくり,各グループごとに「キャップ」を決める。
 ・キャップは,京都印刷・出版ネットの役員や幹事が望ましいが,限定はしない。
 ・組織内によびかけて,自主的な「グループ・メンバー」をつのる(数名程度か)。

(3) グループが成立したものから,活動計画を検討し,ある程度,具体化して提案する。
 ・グループが成立しないものは,当面は無理につくらず,保留にしておく。
 ・グループ内の検討などは,メールやSNS *1などを利用して日程や時間を合理化する。
  (いちいち集まらなくてもよいように工夫する。)

(4) 具体的な取り組みは,原則として京都印刷・出版ネットとして決定して,実行する。
 ・他の市民団体などへ参加して行う取り組みは,この限りではない。
 ・ネット主催の具体的な取り組みとしては,
  [例]・組織内だけのテーマ別勉強会(報告と討議)
      …ネット「最低賃金」ワークショップ…
        ①印刷産業,②出版産業,③京都総評の取り組み
        ・講師を招いた学習会(講演と討議)
      …脇田先生から「反貧困」の運動を学ぶ
      …勉強会と並行して進めるか。
     ・京都総評の提起などへの参加(案内や集約)

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■「課題グループ」の例

(1) 「最低賃金グループ」…最低賃金の運動
 ・京都の状況…京都総評の活動の現状と到達点,そして私たちの課題は。
 ・京都の産別最賃…印刷産業の場合は,どうなっているか。
  出版産業における可能性は?
 ・全国一律最賃への取り組みは如何。

(2) 「反貧困グループ」…反貧困の運動
 ・京都の状況…京都総評の活動の現状と到達点,そして私たちの課題は。
 ・龍谷大,脇田滋さん…反貧困の運動。学習にピッタリの著作もあります。
  Profile of Shigeru Wakita 脇田滋の自己紹介
    …http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/iamwkt.htm
 ・甲南大(元?),熊沢誠さん…ワークシェアリングの提案。示唆的。

(3) 「労働相談グループ」…印刷出版関係で,労働相談を受けられる体制の検討
 ・個人加盟支部,出版ユニオン京都とも,一人でも加入できる組合となっている。
 ・労働組合とは縁のなかった労働者からの相談は,これから増加する。
 ・京都における印刷出版産業のトラブル解決,仲間をふやす取り組みを共同化する。
 ・労働弁護団『労働相談マニュアル』などの学習 ?
 ・モギ労働相談…これは現在,出版で検討中だが。

(4) 「森林グループ」…森林ボランティア
 ・印刷と出版を結ぶ共通項の一つが紙で,情報伝達の中心となってきた。
 ・紙を生み出す森林と樹木が,私たち印刷出版の産業と生活を支えてきた。
 ・現代の日本では,私たちの身近な森林である里山,竹林は,荒廃がすすんでいる。
 ・こうした問題意識の下に,組織内で,ボランティアとして森林活動に参加する有志をつのる。
  各職場に訴えて,興味のある人をつのって,「森林グループ」を結成する。
 ・具体的な活動は,地域の適当なボランティアグループに参加することから始める。
 ・「森林グループ」は決定した方向と活動を京都印刷・出版ネットに報告し,組織内への啓発を行う。

(5) 「連帯ノート編集グループ」…『連帯のノート』を編集
 ・文部省,京都市教育委員会の『心のノート』教育に反対し,“自己責任”の押しつけを拒否する運動。
 ・『心のノート』を研究,批判し,反科学的な教育を批判する。
 ・“連帯の精神”を普及するための素材などを集め,『連帯のノート』を編集する。
  著者をさがすか。
 ・『心のノート』に関連して活動している市民運動グループの運動への参加。

(6) 「メンタルヘルス」グループ…
 ・ライフワークバランスなど

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■参考…SNS *1 ,ユニオンSNS「なかまネット」とは

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2008年9月12日 (金)

「生活防衛」でよいのか

■これからはじまる08秋年闘でも,来年の09春闘でも,出版労連の運動の方向として,「生活防衛」を大きく掲げるのは,あまり良くないと思います。

■確かに消費者物価は上昇し,とくに食料品とかガソリンとか生活に身近なものの価格は上昇しており,問題はあります。それだけに,加盟組合の運動を,賃上げや一時金などの方向にうながすのは,支持を得やすいし,時宜を得ているようにもみえます。そこに集中しやすい客観的な情勢かもしれません。

■しかし,物価上昇を理由にした一時金アップ,賃上げという闘争では,社会的な問題は解決しないと思います。賃金に集中しやすい客観的な条件が大きいだけに,それだけ,企業内の共益的な課題に運動を閉じこめてしまう危険性が高くなっています。そして,未組織,非正規労働者の視点からかけ離れた運動に走っていってしまう危険性が高いと思います。

■高度経済成長の時代とは異なり,現在は経営側にも余力が少ないわけですから,要求と団交では前進はなかなか得られないでしょう。だからといって,戦術の行使もままなりません。そこでまた,目が企業内の交渉,ウチの経営に集中してしまいがちです。そうして,ねばり強く,要求にこだわって交渉することが課題となってしまいかねません。そういう方向が,運動を社会的に広げる方向だとは思われません。

■労連が,加盟している企業別組合に対してどういう運動方向を示したらよいのか,その議論の材料として,「生活防衛」の再検討を提起したいと思います。

■労働者をめぐる社会情勢を全体として捉えると,今,第一に求められているのは,「生活防衛」ではなくて,仕事と生活を見直そう,仕事と労働運動を見直そう,という方向ではないでしょうか。「人間らしい生活と労働」です。これは,企業別組合の連合体である出版労連が,職場外のワーキングプアなど,社会的な問題に切り込んでいく道筋としても重要だと思います。企業別組合が「生活防衛」を達成しても,職場外のワーキングプアには,何ら影響が及ばないと思います。現在の社会状況がそれを証明しています。しかし,「人間らしい生活と労働」から進んでいけば,社会的な視点が生まれてくるはずです。正規労働者の過酷な労働と,非正規労働者の不安定な労働は,連動した事態であって,表裏をなす状況であって,ともに「非人間的な生活と労働」ということで,共通するからです。

■出版労連が加盟組合に強く求めるべき職場の第一の課題は,過労死,在職死亡,メンタルヘルス不全など,生命と人生にかかわる問題ではないでしょうか。各職場でこうした問題を第一に取り組んでいけば,他の職場にも目が向くようになると思います。労働組合運動に参加する時間の問題も,仕事が忙しいからやむを得ない,大会成立基準を見直そう,討論集会の形を変更しよう,ということではなくて(当面の対処としては仕方がないとしても),ライフワークバランスの検討の中から議論されるべきではないでしょうか。

■このまま進んでいけば,正規雇用の多くの労働者が仕事に忙殺されてしまい,自分の生き方を見つめることができるはずの組合運動に参加する時間と体力をも奪われていくと思われます。仕事と職場の圧力から,個人で問題を抱え込み,メンタル不全を引きおこし,ひいては過労死,自死にいたる例が増えていくのではないでしょうか。秋年闘で一定の一時金を獲得し,春闘である程度の賃上げを獲得しても,その後で,仕事に追われてその賃金分を,あるいは,それ以上の分を会社に取り返されてしまう事態に陥っているのではないでしょうか。「生活防衛」の方針の中に,こうした事態に対する歯止めはあるでしょうか。

■組合員の総労働時間の実態は,どうなっているのか。過労死をふくむすべての在職死亡の数は,どのくらいなのか。メンタルヘルス不全の数は,どのくらいなのか。企業内の非正規の種別と数は,どのくらいなのか。正規と非正規の賃金格差は,どのくらいなのか。仕事を共有するという観点でのワークシェアリングは,どうしたら実現できるのか。そういう問題に踏み込んでいくのが,労連の進む方向として,第一に必要ではないでしょうか。労連が現在,実施しているメンタルヘルスの相談窓口は,それはそれで良いのですが,これはあくまで対症療法であって,運動の方向を示す方針にはなりえません。

■今日9月12日は,東京で秋年闘討論集会が開かれているのに,それに参加せずに,遠吠えみたいです。しかし,これまで参加してきた討論集会では,だいたい,賃金を中心にして秋年闘や春闘をどう展開,交渉していけばいいのか,に終始しています。もっと基本的な問題で,広く討論できる場所はないのか,ほんとうに疑問です。労連大会での討論も,わずか7分間の言いぱなっしですから,議論が進んでいかないと思います。出版労連の運動について広く議論する場がない状況のまま,安易に経験的なスローガンが一人歩きしないように見守りたいと思います。

■今年の4月18日には労連として「個人加盟労組を知るための単組代表者会議」が開かれました。これは,個人加盟ユニオンを含めて出版労連の運動について,討論集会で議論する場がないという提起に対して,まず,個人加盟労組を知ってもらうことが必要だという,労連中執の判断で開かれたものでした。それはそれで良かったのですが,問題は,個人加盟ユニオンだけのことではなく,企業別組合も含めて,労連のこれからの運動方向を検討していく場がほしいという意味があって主張したものでした。このままで行くと,その地点までの道のりはなお遠く,なかなか行き着けないように思えます。

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2008年7月31日 (木)

ユニークなネッツの大会議案書

 今年7月の出版労連大会に配布のビラ,資料の中でいちばん目をひいたのは,ネッツの大会議案書でした。労働組合の定型的なものから,大胆な構成に変身しています。組合員への呼びかけなど,かつてないユニークさで,新しいセンスがうかがわれました。

 ただ,当のネッツ大会の中では,その形式に対しては,情勢分析がないとか,現代の社会の中での労働運動としての位置づけが足りないなどの指摘があったと聞いております。あまり詳しいことは分かっておりませんが。

 それで,僕なりにネッツの議案書を検討して,ユニオンの議案書と比較してみました。

(1)ネッツの議案書の良い点-その1

→文字数がぐんと少ない。

・議案書を,イラスト感覚で作成すれば,全体のデザインの中で文字は制限されるテキスト枠という感じでしょうし,文字は少なくなります。

・編集感覚で作成すれば,文字は本体となりますので,説明するために分量が増えます。イラスト感覚で行かないと,文字削減は困難だと思われます。議案書を作るのは,イラストレータか,編集者か,ということになると,イラストレータが大枠を作成しないと,文字は減らないと思われます。

(2)ネッツの議案書の良い点-その2

→「活動報告(総括),その次にすぐに,今年の方針案(課題)」という連携が明白なので,課題が明白になっている。

・ユニオンの議案書は,活動報告が別冊になっていて,かつ昨年はパスされ,経過が十分に明らかにされていないように思われます。総括なしで課題が出てくるはずがないので,総括の整理をパスするのは良くないと思います。

・そこで,ユニオンの議案書としては,活動報告について,下記のように要検討か。

1)最低限,活動報告をぜひ,まとめて配布したいものです。労連大会でも,方針案と一般報告が別々になっていますが,読んでいておもしろいのは,一般報告の方ですし(全組合員には配布されません,各単組と,代議員のみ),方針案が出てくる根拠が明白でなくて,一般報告を読んで初めて理解できることがあります。……書記局は,原稿の督促がたいへんかもしれませんが。

2)改善案。今年のユニオンの議案書では,方針案(課題)を記述する所に,その方針を立案するに至った総括の部分を,参照か所とか,参照ページとか,簡単に枠囲みなどで総括を記述するとか,関連づけを工夫してはどうでしょうか。……作業的に手間がかかって面倒かもしれませんが。

3)抜本的な改革。「活動報告(総括)→今年の方針案(課題)」を連続して配置して,一冊の大会議案書に統合する。この場合,「活動報告(総括)」の部分と,「今年の方針案(課題)」の部分を,タイトルなどではっきり切り分けて,配置します。例えば,委員長が担当する冒頭の,「この1年をふりかえって」と「はじめに(新しい1年のために)」を,ページを連続して配置するわけです。……ただ,全項目になると,目次立てから考えておかないと,統合しにくいところがあるかもしれませんが。
……また,今からでは,時間的にちょっと無理かもしれませんが。
……これは,さらに議論が必要かもしれません。
……いずれにしても原稿がきちんとそろわないと,作業は大変だと推察されます。

(3)ネッツの議案書の良い点-その3

→課題を提示しながら,「あなたに,できることがあります」として,組合員個人の課題を明示している。組合の活動と,組合員の活動や参加の課題とを別に提示したいという狙いが,個人加盟の労働組合らしい形と言える。

・ユニオンの議案書では,組合の課題が提示されているが,組合員個人として,どうなのか,訴えていくようになっていない。

・そこで,ユニオンの議案書でも,方針案(課題)の中で「あなたに,できることがあります」(敬意を表してパクっては(^ ^;;)というコーナー(枠囲み)を設置して,個人加盟ユニオンを支えるのは,組合員一人一人であるという理念を明白にしてはどうでしょうか。

(4)ネッツの議案書の良くない点

→総括と課題が網羅的に羅列されているので,組み立てや流れが分かりにくい。

・グレードを付けたナンバリングがないので,構造がつかみにくい。現在のユニオンの議案書は,まず時計数字の1,次に[1],(1)といったナンバリングにともなって,構造がきれいにできている,課題が整理されているので,分かりやすくなっています。これは崩さないで行きたい。

(4)その他

・ネッツの議案書の中の「加入後のフォロー」というテーマには,考えさせられます。

・トラブル発生→ユニオン加入と初心→自分の問題の解決→そしてユニオンの組合員として定着,ユニオンの中で自分の居場所や課題を見つける,
 というように理想的な方向に展開していくためには,運動面,組織面で何が必要か,議論の場がほしいと思います。それは,個人加盟ユニオンの運動と組織に関する議論でもあると思います。

・当面,「なかまネット」の中にコミュニティを設定していくか。

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2008年7月13日 (日)

2008年夏,出版労連大会での発言

 2008年7月11~12日,都内で開催された出版労連の定期大会に出版情報関連ユニオンから,代議員として出席してきました。その発言内容です。

 ただし,概略として,以下のように発言したかったという内容です。時間の関係や,話の展開のつたなさで,話しきれなかったところを補った上で,整理したものです。

 なお,今後,労連新聞で報告される記事は,話しきれなかったところは書かないように,という指示に従って,360字以内に整理して送ったものですから,そちらは簡略版というべきものになっています。以下のこちらの版が,正式版ですね。

■ 二つの報告と
ユニオン・ネッツ・サポート基金のお願い■


 新学社のリストラ提案では徳島の新学社労組,ユニオン京都支部の組合員が闘ってきましたが,分離された京都の子会社が,この8月に元の新学社に復帰することになりました。新学社労組の代議員の方も,この大会におみえになっています。

 また,現在一つ,個別労働トラブルをかかえています。解雇問題で,先の金曜に,大筋で解決の見通しが付いたところです。しかし,こうした労働トラブル問題は,実にたいへんです。それに費やしている労力は,相当のレベルです。大阪からの支援を受けながら,ユニオン京都支部の支部長と事務局長がこの間2か月は,かかり切りになっています。その件以外には目が向けられない状況になっています。困難をかかえた労働者を支援していくことは重要ですが,広く支えあいながら,負担を分散していかないと,かなり疲れます。ですから,現在,提起されているユニオン・ネッツ・サポート基金も何らかの助けになるのではないかと,大きな期待を持っています。よろしく協力をお願いしたいと思います。

■ 出版労連は,格差と貧困の問題に取り組むべきだが,
個別経営に均等待遇の要求書を掲げて交渉するスタイルは,よくない。■


 出版労連が組織を拡大していくためには,確かに労働トラブルの解決という,いわば,「マイナス状況の救済」「怪我をした人の救護」も必要でしょうし,そのために基金の役割もあると思います。しかし,それだけでは,「終わりなきモグラたたき」になってしまいます。

 労働組合としては,もっと「プラス方向のアピール」が必要だと思います。そういうアピールによって仲間を増やしていきたいものです。魅力のある運動のないところには,人は集まらないと思います。怪我は治っても,引き続き,参加したくなるような運動が求められていると思います。

 今日とくに,重要なのは,格差と貧困の問題です。出版産業でも決して無縁ではありません。取次や書店の,ワーキングプアの問題にとりくむべきです。この課題に対して,私たちが均等待遇の要求を掲げて運動を進めるのは当然です。

 しかし,個別企業に「要求書」といった文書を出して相手と交渉するそういうスタイル,発想は,脱した方が良いと思います。個別企業に対して要求書を出して交渉するという方向は,問題があると思います。

(1) 労働組合の運動を企業内に収束させてしまうこと,
(2) 経営者とともに問題を社会的に広めていくことにならず,運動の一翼を担うべき経営者を単なる金主(お金を出す人)に変えてしまい,運動の幅をせばめてしまうこと,
(3) 個別経営による「会社保障」が拡大し,「社会保障」の視点が縮小してしまうこと,
(4) 貧困と格差の解消にための均等待遇が,賃金労働条件の問題にとどまってしまうこと,

といった観点で考え直すべきだと思います。

 格差と貧困の課題は,企業内的な均等待遇を求めるという,賃金労働条件の課題にとどまるものではないと思います。私たちが,出版産業で働く貧困層に訴えていく点は,均等待遇を要求しましょうという,レベルではないと思います。

■ 格差と貧困の課題自体は,公益的な社会運動として社会全体の利益をめざしてとしてとりくむ。
春闘など個別企業内の共益的な運動の転換をはかり,出版労連全体の運動にしていきたい。■

 格差と貧困の問題のような,すぐに解決するわけにはいかない課題を,どう取り組むか。こういう課題は,公益的な社会運動として取り組むほかありません。公益的な社会運動とは,底辺を含む社会全体の利益をめざす運動です。

 私たち出版労連は,すでにこういう公益的な社会運動をいくつも進めています。憲法9条守れの平和運動,出版産業の問題点を討論する出版研究集会などです。別に経営に要求を出して交渉していいるわけではありません。社会運動として進めているものです。

 均等待遇も,こうしたスタイルで追求していけばいいと思います。経営者も運動の一翼を担うようになるかもしれません。組合員は,職場,所属する企業にかかわらず,自主的に取り組んでいくことになります。

 労働組合の社会的な地位が低下しているからこそ,春闘や秋年闘のような,個別企業内にとどまる共益的な運動を転換して,公益的な社会運動にとりくんでいくことが重要だと思います。出版産業内の格差と貧困の問題は,出版労連が第一に取り組むべき社会運動だと思います。そして,労働組合として「プラス方向のアピール」の一つになると思います。私たちのユニオンは,その先頭に立ちたいと思いますが,出版労連ぐるみでそういう社会運動が展開できるようになることを期待しています。

■ ネッツの組合員のニーズと
  ネッツの大会議案書のユニークさ


 議案書の中に,ネッツの組合員の基本的な要求が「横のつながりがほしい」「仕事の情報がほしい」「相談できる仲間がほしい」などの点にあると書いてありますが,これは,ユニオンでもまったく同様です。こういう所に,私たち労働組合の運動の基礎があると思います。また,配布されているネッツの議案書は,とてもユニークで,これからの方向として示唆に富んでいると思いました。

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2008年6月18日 (水)

■出版労連と社会運動的な方向について

(1) アメリカの新しい労働運動

 新自由主義の政策が強力に推進されてきたアメリカでは,1990年代の半ばから,それに対抗する「新しい労働組合運動」が,社会運動の一つとして成長し展開しています。(国際労働研究センター編著『社会運動ユニオニズム-アメリカの新しい労働運動』緑風出版,2005年)

(2) 伝統的なユニオニズム

 「新しいユニオニズム,ニューボイス」に対応する運動は,伝統的なユニオニズムとよばれています。

 伝統的なユニオニズムとは……既存の組合員の労働条件,すなわち雇用保障,賃金,労働時間などの維持や改善に運動の目標を絞り込む,環境改善運動です。運動の方法は,制度化された団体交渉,ストライキ,協約締結などが中心です。一般組合員は,運動への参加に無関心で,組合費を払うかわりに,交渉結果として労働条件の向上というサービスをうけとるような,取引ビジネス的な関係になりがちで,こうした伝統的なユニオニズムは,ビジネス・ユニオニズムともよばれています。

 私たちの春闘,秋年闘は,これに当てはまるように見えます。

(3) 日本でも

 日本でも,新自由主義の政策が進められるにつれて,働く貧困層(ワーキングプア)の拡大,社会的な連帯感覚の喪失,組合組織率の低下(団結力の弱体化),労働法制の改悪が現実になっています。こうした流れに対応した労働運動構築の必要性が高まっていると思われます。

 とくに日本の労働運動では,各企業ごとに,正社員組合による交渉で決定された労働条件に,まったく規範性がないという重大な欠陥があります。同じ企業内でも雇用形態が異なれば労働条件が異なり,企業を異にすれば当然の如く,仕事が同じであっても労働条件が異なっています。

 これまでのような春闘,秋年闘を重ねても,新自由主義への対抗,労働条件の社会的規範性欠如という問題点は,解決されないでしょう。

(4) これからの組織と運動

 こういう状況の中で,私たちの出版労連も,伝統的なユニオニズムを脱し,労働組合運動を見直すことによって,運動の再構築と強化,仲間の増加をはかることが求められていると思います。

 その方向として,
 組織面では,企業別組合から,「個人加盟ユニオン」への流れであり,
 運動面では,「社会運動的」な方向について,検討の価値があると思います。

(5) 「社会運動的」な方向

 アメリカのニューボイス「社会運動ユニオニズム」の検討は,学者に任せるとしても,私たち,出版労連にとって,こういう「社会運動的」な方向は,どうなのか。これは,私たち自身の組織的な議論と検討が必要だと思います。

 出版労連の現在の運動の中にも,「社会運動的」とみなすことができそうなものは,すでに,いくつかあるように見えます。しかし,現在,それらは,そうした方向では,位置づけられていません。

(6) 「社会運動的」な労働運動のキーワード

 私見として,のキーワードと,その下に示したポイントを概観すると,基本的には社会運動ですから,どれも職場の力関係に依存しない運動と視点ばかりになります。「出版労連に加盟する組合員」が,自分の所属する企業や単組がどこであれ,自分の判断と興味と力量に応じて,社会運動的な労働運動に参加できるという方向です。

 ①社会的公正

1)低賃金で無権利な労働者の「社会的公正」の追求
 【労働相談への対応と解決】

2)最優先の課題として,恒常的,全体的な取り組みとして「仲間の拡大」 
 【仲間をふやす】

3)とくに編プロ,取次,書店などの低待遇,非正規労働者への働きかけ 
 【フラワービラなど】

4)労働者教育プログラムの作成と実施
 【ユニオンのファスト・ステップの延長】

 ②社会的連帯

1)平和運動
 【九条の会などの市民団体,各地のピースウォークなどへの参加】

2)教科書運動
 【教科書レポート。「ネット21」など市民団体,教組などとの連帯】

3)印刷労働者との連帯
 【労働条件をめぐる闘争ではなくて,公契約運動など社会運動で】

4)多様な社会運動,住民運動との連携
 【森林活動,すずらん祭,日中韓・歴史体験キャンプ】

 ③産業・職能政策

1)出版産業とその周辺の社会的な課題の提起
 【出版研究集会,出版レポート】

2)とくに環境問題への問題意識
 【紙,輸送などの出版産業の環境コストの検討】

3)労働者教育を伴った技術教育
 【出版技術講座プラスアルファ】

4)労働者教育を伴った就職情報の提供
 【就職フォーラムプラスアルファ】

5)職能向上のための情報交換と交流
 【ネッツのフェスタ。ユニオンのしごとネットの延長】

 ④新しい運動感覚

1)自由な表現活動
 【踊り,鳴り物,楽器,労働歌でない歌,独自のポスター,自由で創意的な表現】
 【短文スローガンの反復一斉絶叫型の“単細胞シュプレヒコール”でいい?】

2)自主性と自発性
 【反動員=動員しない,反集約=集約しない。数で測らない。質で測る。】

3)多様性の尊重
 【反統制。幹部だけの運動にならないために,自由な大衆的な広がりの容認】

4)言葉の問題
 【非日常語 → 動員,集約,公然化,総括】
 【身内だけに通じる専門用語 → 団交,ミック】

5)幅広い情報の共有と交流
 【空間的,時間的な制約をこえて。Web。ユニオンSNSの“なかまネット”の延長】

6)発想の斬新さ
 【ネッツの“夏祭りwith定期大会”←定期大会付きの夏祭りだよ,来てね】

*最近,関西ネッツの交流会で“夏祭りwith定期大会”を取り上げたところ,ある若い組合員から「ネッツは,もともとwith労働組合ですよね。“ネッツwith労働組合”なんだから」(ネッツとは,労働組合運動が付録に付いている,職能上の連帯組織,職能with労働組合である)と言われまして,上記の③-5)との関係で,感心しました。

■国際労働研究センターについて…memo
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2007年9月末日をもって,国際労働研究センターを解散。国際労働研究センターがこれまで行ってきた活動を一橋大学フェアレイバー研究教育センター並びに,新設する組織に移行。

一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センターウェブサイト
http://www.fair-labor.soc.hit-u.ac.jp/

Labor Nowウェブサイト
http://www.jca.apc.org/labornow/
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浅見 靖仁(あさみ やすひと,1960年 - )
一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻教授。
・総評会館研究助成プログラム, 「日本における社会運動ユニオニズムの可能性」(研究代表者)
 財団法人総評会館, 2007.1.1-2008.12.31
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2008年3月10日 (月)

私たちは,どうして個人加盟に移行したのか。

(1)少数だから移行という無理解

・3/8に「08春闘関西交流会議」があった。その中で,文英堂労組や中央図書労組が,どうして個人加盟ユニオンに移行したのか,少し説明した方がよい場面があったが,主要なテーマとの関係もあって,十分には説明しなかった。

・この点については,労連の中でも,「少数になったから」と断定する説明から,「少数になったこともあって」などと,やや問題意識を含ませるものまで,いろいろなレベルがある。

・旧文英堂労組でも旧中央図書労組でも,確かに少数になっていた状況,背景はあるが,それだから移行したというだけの説明は,正しくない。

・企業内で少数になると,確かに,単組を維持するのは難しくなってくるし,寂しくもなる。それでユニオンに移行したからといって,すぐに自動的に新しい展望が見えてくるわけではない。どういう状況であっても,労働組合の組織と運動を考えていかないと,個人加盟に移行したからといっても,それでどうなったの?でお終いだろう。

・現在,労連には企業内で少数になった単組をユニオンに移行させる方針もあるが,新しい運動をつくっていくことを基本にしないと,形だけ移行はしても,旧単組として解散・消滅していくのと変わりない結果が待ちうけているだろう。ユニオンの中でも,こうした議論によって,新しい移行組を新しい組合員にしていくことが求められていると思う。

・ただ,もう一つ,誤解を招かないように付け加えれば,「企業別組合は,新しい運動をつくっていく決意がない限り,ユニオンに移行するな」,という意味ではない。ユニオンに移行しても,新しい展望を開こうという方向性がなければ,企業別組合のまま解散・消滅していくのと,未来に変わりがない。三役のなり手がないからといってユニオンに移行しても,ユニオンの誰かが,三役を替わってくれるわけではない。

・労働相談やトラブルなどを経て,はじめからユニオンに加入したいわゆるプロパーの組合員とちがって,単組から移行した組合員は,それなりの経験や技能,資金も持っているわけで,個人加盟ユニオンの運動を広げる上で責任があり,その責任を果たすように求められて,当然だろう。企業別単組から移行して,活動の場が広がった,別の面で忙しくなった,自然にそうなった,それがあるべき姿と思う。

(2)「春闘」で悪循環!

・企業内の労働条件に終始する「春闘」では,要求が実現するような労使関係,経済状況が崩壊したとき,展望がなくなる。
・労働条件の向上だけに「こだわる」要求,団交では,目に見える成果がなくなると,運動が衰退する。

・交渉のために,経営側の財務諸表に目を向けるようになると,その土俵の中でしか考えられなくなる。
・経営の土俵の中でしか要求ができなくなり,財務諸表の中でしか交渉ができなくなる。

・経営側から財務諸表がとれない組合は,ますます交渉が困難になるように思わされ,焦りを深める。財務諸表なんか無くても団交に何の不自由もない。経営に財務諸表を出させることは,組合が目的にしなければならない課題ではない。

・組合員の関心が低下し,結集が低下してくると,引き留めのために,ますます「ものとり」へ埋没する。

・企業状況に応じて相手の土俵に入り込みすぎると,外が見えないたこつぼへ。産別の日程から離れ,産別の運動や提起に参加しなくなる。地協委員会に出てこなくなる。

・要求への「こだわり」に組合員を結集させたり,若手の関心をひくために「ものとり」へ集中すると,ますます運動の輝きがなくなる。

・こうした「春闘」の構造を見直す方向へ進まないと,困難と分散の悪循環に陥る。いつまで経っても展望が見えなくなる「春闘」は,もう止めたい。要求はとれなくても,取り組みがいのある,新しい展望が見えるような,そういう運動をつくっていきたい。職場別,企業別の交渉は,当面は(歴史的な制約上から)続けざるをえないにしても,それを相対化できるような運動にしていきたい。

(3)少数で当たり前!

・文英堂では,職場で多数派をめざす運動を30数年間続けてきたが,どうだったのか。
→少数派のまま。東京支社では,昨2007年秋で組合員がゼロになった。

・なぜ,多数派になれなかったのか。
→経営の敵視労務政策。
 (現在でも,……)
→労働組合運動の社会的な衰退。
 (労働戦線の再編,地労委や中労委の委員の偏向任命)
→労働組合の奮闘による労働条件の相対的な向上。
 (一定,働きやすい職場の実現)
→査定による賃金決定の強行導入。
 (団交による集団的賃金決定システムの崩壊)

・ユニオン・ショップ大企業労組と官公労を除けば,日本では,労働組合がないか,少数派で普通。

・少数で当たり前!と,居直って,少数派にふさわしい組織と運動は何か,考えたほうがよい。少数派の目的は,多数派になること,これは止めよう。
 ↓
・企業別組合や合同労組分会ではなく,個人加盟労組へ。
・企業別や分会別の堅い団結よりも,社会的な広い連帯へ。

・企業別組合から脱すれば,職場内における組合加入のハードルは低くなるかな,という期待も若干あったが,それは間違った期待であった。労働組合を必要としているレベルからみると,文英堂の職場は,まだまだ恵まれているというわけだ。

(4)拠点は企業の外に!

・労働組合運動の拠点は企業の外におく。企業の外側で運動の核を形成し,維持する。 (ここは,京都支部の結成のときにとくに強調したと思う。)

・企業の経営状況にしばられた思考から,労働者全体を視野に入れた自由な発想へ。

・職場の力関係に依存した運動から,社会的な運動へ。

(5)「統一と団結」に疑問符!

・合同労組的分会でも企業別組合でも,過大に強調される「統一と団結」は,ときに「分裂」「除名」などの問題をひきおこし,運動の阻害要因になる。

・「統一と団結」よりも,より広い緩やかな「連帯」のために,組合員個人の自主的,自発的な判断が当然視され,「連帯と共闘」の拡大が中心となる組織と運動へ。

・個人加盟労組の組合員の自主性の発揮のために,所属支部や課題の選択を自由に。

(将来的には,支部の見直しが求められる。この点は別項→SNS「なかまネット」の日記=2/13「支部を考え直してみると」。)

(6)人材を経営にも!

・小規模の経営では,労使関係などの条件によっては,少数の組合員の中からも,経営をになう人材を派遣しなければならない。この問題は少数の企業別組合では,困難きわまる選択になりかねない。企業の枠を越えて組織するユニオンでは,支え合う,力を出せるところで力を出し合う,これも連帯。
 

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2008年2月29日 (金)

「教科書in大阪」補足

(1)最初の疑問

同じ出版情報関連ユニオンに加盟する組合員でも,
文英堂には案内が来て,
中央図書や東方書店には,案内が来ない。
それは,なぜか。
それで,よいのか。

彼らは,勤務先の会社が,教科書を発行していないから,教科書問題と関係がない!
はたして,そうだろうか。
彼らは,職場で,仕事として教科書に関わっていないから,教科書問題に関心がない!

はたして,そうだろうか。

教科書会社でも,教科書そのものに直接にはタッチしない労働者もいるでしょうし,
書店や取次に勤めていても,教科書問題に関心をもっている労働者もいるはずです。

勤務先の会社とか,職場とかいう集団の単位でくくって扱うので,よいのか。
一人一人という単位で考えたほうがよいのでは。
→「教科書問題に関心のあるすべての組合員」を対象に。
さらに言えば,
オープン・ショップの職場では,「すべての組合員」は「すべての労働者」を意味しないので,
→「教科書問題に関心のあるすべての労働者」を対象に。

(2)次の問題

以上のようにすると,対象は広がる。
しかし,広く呼びかけても,どうせ関係する人しか来ないよ。
そうかもしれない。現在の状況ならば。
しかし,関係者だけの運動にならないように,工夫しなければならないはず。
教科書問題は,社会的な運動にいっそう広げていく必要があるのだから。

身内の言葉で,身内のことばかり議論していたら,よそ者は参加できない。

教科書共闘が統一交渉に関わる問題に熱中しているのは,それはそれでよいが,
そうした議論の中味は,よそ者にはあまり理解できない。
教科書共闘が組織内の労働条件を問題にしているのは,それはそれでよいが,
そうした議論の中味は,よそ者にはあまり関心がもてない。
(まったく関係がないということはない,という程度の関心レベル)

[ 以前,啓林館労組で定昇をめぐる問題がおこったとき,文英堂からも社前集会への参加要請にこたえてスト二名で参加したことがありましたが,このとき教科書問題は無関係で,個別労使の労働条件をめぐる交渉を支援したものでした。すでに内堀も埋められて(=査定までいれられて)かなり痩せ細った文英堂の労働者が支援に行って,外堀(=定昇という高度の労働条件)の部分でたたかっていた啓林館労組の組合員に対し,どれだけ力になったのか,後で二人で嘆息しきりでしたが,このように,労働条件をめぐる問題には参加しないとか,支援しないというような意味ではありません。]
[ しかし,できれば,次のように↓ ]

教科書共闘が発信,展開すべき運動は,
春闘などの統一交渉や,個別労使の労働条件をめぐる諸問題よりも,
教科書問題をめぐる国民的な関心に応える(よそ者の関心を喚起する)ような,
社会的な取り組みを重点にすることだと思います。
この点を強く期待したいと思っています。
 

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2008年2月28日 (木)

「教科書労働者総決起集会in大阪」

 「教科書労働者総決起集会in大阪」(2008.2.29.)の案内メールをもらいました。

 文中では,参加呼びかけ対象者は,「教科書労働者」,「教科書に働くすべての労働者」,「教科書出版労組の仲間」といった表現になっています。そして,教科書共闘各単組,---労組,増進堂,京都書房,文英堂に連絡が回っています。増進堂,京都書房,文英堂とくると,“少しでも教科書を発行している会社で,労働組合があるところ,または組合員がいるところ”というのが,この呼びかけ対象の基準のようです。

 しかし,文英堂で働いている組合員としては,こうした基準で呼びかけられるには,少しなじみにくいものを感じます。

(1)「教科書労働者」に当てはまるか?

 文英堂では,おもに教科書に関わっている組合員はいません。編集で関わっている組合員はゼロ,営業部組合員でも年に2か月程度しか教科書にはタッチしません。メインの仕事は,高校での教材採用営業ですから,「教科書労働者」というイメージも自覚も持っておりません。

(2)「教科書に働くすべての労働者」に当てはまるか?

 文英堂は教科書をメインにしている出版社ではありませんから,「教科書に働く」という感じではありません。やはり「学習参考書に働く」という方が,ぴったりです。

(3)「教科書出版労組の仲間」に当てはまるか?

 「教科書出版労組」が「教科書を出版している会社の労組」という意味なら,旧文英堂労組,増進堂労組,京都書房労組は当てはまります。それで,旧文英堂労組にも案内が来るようになったと思われます。しかし,文英堂の場合,企業別組合は既になくて,現在の組合員は,出版情報関連ユニオン京都支部に所属しています。この個人加盟ユニオンは,「教科書出版労組」ではありませんから,当然,当てはまりません。

 このように考えてみると,文英堂で働いている組合員は,呼びかけられても,対象者として失格のようです。

 その上に,もっと広い意味でも,「職場で出版物としての教科書に関わっている労働者」という自覚,アイデンティティは,有していません。つまり「教科書労働者」という自覚がないという意味です。自分の仕事との直接の関わりの中で,教科書問題を捉えるような契機は,組合員のいる職場には存在していません。

 しかし,仕事面で「教科書労働者」という自覚がないからといって,出版労連が提起する教科書問題や教科書闘争に関心がないという意味ではありません。教科書闘争には,それなりの大きな関心はあって,それは,市民的な立場であったり,出版労連の組合員の一般的な立場に由来するという意味です。

 したがって,今回のような集会の場合,「教科書問題に関心のあるすべての出版労働者」に呼びかけるという形がもっとも望ましいと思われます。

 善意で解釈すれば,「教科書に少しでも関係のあるところ」に呼びかけるという意図とも読めるにせよ,別の見方では,「教科書会社とか,教科書の編集や営業に関係する労働者」に限定して呼びかけているようにみえてしまっているからです。その結果,呼びかけられた方も,自分が,「設定された枠内に当てはまるか,どうか」考えてしまうような事態に陥ってしまいます。

 一般的な出版労連の組合員の立場から,誰でも(個人加盟ユニオンの組合員でも),参加できるような形の教科書闘争なり教科書運動は,とくに求められていると思います。出版労連の教科書闘争は,教科書共闘の共闘委にだけ集約されているものではないはずです。そういう観点から,最近の「教科書交流会議」ももたれているのでしょうし,今回のような決起集会も設定されているのでしょうが,その意図が,教科書会社およびその会社ごとの労働組合(教科書会社とその企業別組合)という枠内に閉じこめられている結果,ユニオン組合員がだれでも素直に参加するという状態にはなっていないと思われます。

 教科書とは関係していない個人加盟ユニオン組合員でも,教科書問題に関心をもって関わっていくことが可能になるような集会の設定であってほしいと思います。春闘の課題も,教科書共闘としては重要かも知れませんが,共闘に加盟していない立場から聞いていると,経過も不明ですし,統一交渉をめぐる報告など,ほとんど意味が理解できません。

 教科書闘争は,東京中心の労連,教科書共闘の共闘委が中心にならざるを得ない状況であることはよく理解できます。その結果,京都地協のような地方では,「教科書ネット21」のような市民運動に関わって運動の盛り上げ役を果たしているというのが実情で,「出版労働者が中心となって」ということには,力量の上から無理で,それは,ある意味でし方がないのかも知れません。が,せっかく関西で,教科書問題に関して労連が関係して集会を設定するときは,すべての関心のある労連組合員が,参加資格を考えないで参加できるようにしたほうがいいと思いました。

 そういう場合,教科書共闘の統一交渉,春闘交渉などの話は最小限に止めていかないと,聞かされる方は訳が分からずたまりません。関心の対象でもないからです。関心の対象は教科書であって,教科書共闘の賃金ではないからです。もし,教科書労働者の賃金と絡めて集会にしたいというなら,定価問題とか,もっと社会性のある提起や議論を中心にすべきだと思います。

 教科書闘争を教科書共闘内におさめておくのなら,何も言うことはありませんが,教科書闘争を教科書共闘の外にも広めていくというような方針だとすると,教科書共闘の春闘の扱いは,もっと考える(小さくしていく)必要があると思っています。春闘は春闘で,教科書共闘内部だけで,じっくり議論し,決起したら,そのほうがずっといいじゃないでしょうか。

 

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2008年2月22日 (金)

出版労連 結成50周年記念パーティ,配布チラシ

2か所ほど,気付いたところがありました。

(1)「お寄せいただいたメッセージ」

 先に私たちが送り出した前中執の肩書きが「文英堂労組」となっていました。文英堂労組は,2004年になくなっています。いつまで,文英堂労組なのかな?と思いました。
 他の人の肩書きは,
「出版情報関連ユニオン○○支部(元○○労組)」
とか
「出版ユニオン京都・文英堂」
とか,なっています。
 「出版ユニオン京都」は略称としていいのですが,これが「出版情報関連ユニオン京都支部」と分かる人は,少ないかもしれません。組合名の名称は,統一して表記したほうがよいと思います。出版情報関連ユニオン自体も,支部の略称を,「取次ユニオン」としたり「ユニオン京都」としたり,いろいろだから,し方がない面もあるかな。混乱はしている。

(2)「出版争議組合連絡会」NEWS第54号(2008.2.14)
  出版争議50年の歴史

 最近10年の争議の紹介の後に,ほかに,「これ以前に遡ると」として,たくさんの争議をあげてありますが,その中に,
「文英堂(職能給導入反対と職場民主化)」
を入れてほしかったと思いました。地労委,中労委,地裁,高裁,最高裁まで行って勝利判決を取っています。

 「支援保留」でもなく,ちゃんと対策会議も設置したのに,どうしてぬけちゃったのかな。渡辺さんと間彦さんに合わせる顔がない(^ ^;

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2008年2月19日 (火)

企業別労働組合を補完するように見える三つの要素

 限られた範囲のことではないと思うが,出版労連の中を見回してみると,職場の企業別労働組合に所属し,職場では労働条件などの要求運動に終始して,それに疑問をもたないという感じの組合活動家は多い。また,職場内の労働運動の視点はほぼ企業内の労働条件に限定されているものの,その人の活動はそれだけにとどまるものではなくて,社会的な運動にも積極的に参加しているという人が,結構いる。

 社会的な運動とは,企業内の労働条件などの要求運動とは別個の,①市民運動(平和運動,環境運動など),②政党での活動,③労働組合運動の中の民主政治の課題などのこと。地域で教科書ネット21を中心的に担っているとか,政党の選挙運動にまじめに熱心に取り組んでいるとか,労働組合の中で平和運動を推進しているとか,そういう活動家である。

 企業内の要求運動ではカバーしきれないような社会的な運動は,市民運動,政党での活動,組合内の平和運動などとして参加し,企業別の要求運動とは切り離して,別に追及することによって,個人的には完結することができる。両方ともに積極的という,そういう活動家の例は珍しくない。

 革新的な政党で活動していれば,地方自治体の選挙はむろん,国政選挙でも,選挙で勝つことができれば,社会的な課題の全部とはいわなくても多くは自然と解決するはずと,理解される。選挙では最終的に勝てなくても,負けてもそれなりの力を示すことによって,社会問題のいくつかは達成できる,だから,選挙運動は社会問題解決の大きな力であると,考えられる。「革命」さえ実現できれば,すべての問題は解決するという立場の,いわゆる「メガ理論」的な発想は,規模は小さくなっているものの,健在であると思う。

 もちろん,選挙で多数を獲得することは,民主政治の実現,政治革新のためにひじょうに重要なことで,決してないがしろにしてよい課題ではないが,多数派の獲得は,すぐに可能になることではない。それまでの間にも,社会的な問題は次々に発生しているわけで,社会運動を低く見ることはできない。むしろ,社会運動を通じて,選挙での多数派形成を目指すのが,本筋とも考えられる。

 労働運動を企業内では要求運動に限定し,それとは別の社会的な運動に積極的に参加するような活動家の場合,個人としてはひじょうに安定して,矛盾が少なく,収まりよく収束してしまう傾向が強い。その結果,いろいろな問題がおきていると思われる。

(1) 労働運動の社会的な役割が限定される……

 労働組合は企業内での要求運動に限定して十分満足。自分個人としては,その代わり(それとは別)に,市民運動(平和運動,環境運動など),または,政党での活動,または,労働組合運動の中の民主政治の課題などにとりくんでいると考えるので,不足を感じる契機がない。

 その結果,出版労連のように,出版産業の中心にいて文化資源の豊かな組合員が中心的な労働組合では,平和や憲法などの「民主政治の課題」だけが突出してしまい,それに比べて他の社会問題への広がりを欠き,バランスが失われるわけで,そうした原因が,ここにあるのではないか。そして,民主政治の課題以外の社会運動の視点が育たないのではないか。

(2) 個人加盟ユニオンという発想が出てこない……

 ユニオンは「少数になった労働組合が行き着く先」程度の認識になってしまう。現代の社会状況,労働者のおかれた環境から見て,企業別組合ではない労働運動の構築が求められているという所に行きつかない。

(3) 労働運動より市民運動や政治活動という価値判断ができる……

 企業内の力関係に依存しない労働組合の社会的な運動? そりゃ市民運動の分野だろ,となる。また,政治的な前進によってこそ,社会問題を解決できると考える傾向も根強い。その結果,労働組合はますます企業別運動に埋没していく。「労働組合の社会的な責任」が問われていることが,理解されなくなってしまう。

 以上のような状況からは,ユニオニストは育たないだろう。①市民運動(平和運動,環境運動など),②政党での活動,③労働組合運動の中の民主政治の課題は,企業別労働組合を補完する三つの要素となっているように見える。

 

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